ピーター・ボグダノビッチ「映画監督に著作権はない フリッツ・ラング」859冊目

この挑戦的な邦題。原題がこの本のどこにも書かれてないのであちこちググった結果、「Fritz Lang in America」という、当たり前すぎるタイトルで拍子抜けしました。でもこっちのほうが聞き手の、普通のアメリカを情緒豊かに描くピーター・ボグダノビッチらしい。

私いま映像著作権の仕事をしてるので、フリッツ・ラングじゃなくてもこのタイトルが気になってしまうんだけど、ラング監督が1本1本自作を語るこの本のどこに、著作権の話が出てくるんだろう。・・・あった。「人間の欲望」の章で、自分が「暗黒街の弾痕」のために撮った場面がそのままマックス・セノック監督の「犯罪王デリンジャー」という作品の中で使いまわされ、「西部魂」の場面がウィリアム・ウェルマン監督の「西部の王者」で使われているとのこと。これはひどいなぁ。後世の作家が自分のアイデアをパクることについては、「口紅殺人事件」の章で「人が盗もうと私は気にしない、私もこれまでたくさん盗んだしね。それに私はそれを盗みとは呼ばない。」とむしろパクられることを誇りに思っているとのこと。

ラング監督大好きなのでまあまあ見てるけど、私が集中的に映画を見るようになった10数年前は、DVDにならなかった作品は図書館のレーザーディスクで探す、というような残念な時代だったので、ここ数年VODにどんどん降りてきてるのがありがたい。まだ見てなかったものはVODで見ながら、この本を順々に読んでいきたいと思います。あー、なんか映画的至福の時間だなぁ・・・。・・・と思ったけど、未見の作品で簡単にVODで見られるものは多くないしDVDレンタルしているものも少なくて、結局見られないものがかなり残ってしまった。著作権切れのものもけっこうあるはずなので、そのうちYouTubeとかで探してみようかな。

それにしても、ハリウッドでの監督の苦労は大変なものだったようです。スパークス(「アネット」で急に映画界に出てきた)が少し前に、ベルイマン監督がハリウッドに拉致されて逃げ出すというミュージカルを作ったとき、映画を見始めたばかりの私にはなにも共感できなかったけど、今なら少しは理解できるかなと思います。