村田喜代子「エリザベスの友達」909冊目

敬愛する村田喜代子の小説、ぼーっとしてるといつのまにか読んでない新作がたまってる。久々に読んだこの作品の話者は、自分自身の更年期など過ぎ去って、施設で暮らす90代の母の介護をしている。もともとこの人の小説は、どこか筑豊マジック・リアリズムというか、すごく目立たない平凡な女性がある日遠くへ飛んで行ってしまうような話がけっこうあったんだけど、そのイマジネーションというか妄想というかモウロクは、認知症患者の頭の中と共通したものがあるのだ。若い頃の夢は明確で未来に向かっていくけど、こちらは日々ぼんやりと過去へ向かっていくという違いはあるけど。

90代の母が名を聞かれてエリザベスと答えて、家族が仰天する。いいじゃないか、面白いじゃないか!更年期やがんのことを書いていた頃は、読むと少し寂しい気持ちになっていたけど、もう突き抜けて自由さを感じる。やっぱり村田喜代子だ。

引き続き、未読の作品を少しずつ読んでいこう。