Steve Belkin「Mileage Maniac」831冊目

たまたま見つけて、久しぶりに英語の本を読んでみました。難しい内容の本ではないけど、砕けた語り口で、知らない単語がけっこうたくさん出てきたので、読み違えている部分があったら申し訳ありません!

さて。数年前は私もアホのように飛行機に乗っては降り、乗っては降りを繰り返して”マイル修行”をした身なので、そういえばマイル本国のアメリカのつわものたちはどうしてるんだろう?と興味が湧いてきまして・・・。

この本が書かれたのは2021年、この著者のSteve Belkin氏は20年も前からマイルを貯めまくっているそうで、1990年代のマイル黄金期から現在に至るまで、かの国でのエクストリーム・マイル修行を振り返る内容となっています。ときに妻から怒られつつ、ときに航空会社とバトル(ついには訴訟まで!)しつつ・・・。

何といってもこのBelkinさん、やることがとにかく極端です。めちゃくちゃです。この本で最初に紹介しているスキーム:ユナイテッド航空の国内線の「直行便を使わず遠回りしてくれた人にマイル3倍」キャンペーンと、マイル3倍キャンペーンをかけあわせる。かつ、大量取得のために20人以上の人をリクルートして「タダで帰省してこられる代わりにマイルはよこせ」と全部手配。当時は今と違って、航空券と乗客の身分証明書のチェックはなかったので、全員Steve Belkin名で搭乗・・・でも女性も混じってたので、フリートウッド・マックスティーヴィー・ニックス(女性歌手)を思い出して名前だけStevieにしたら全員乗れたんだそうです。すぐにマイル上級会員になり、その後はエリートボーナス2倍。わずか1週間で、普通の人が一生かかっても貯められない100万マイルをゲット!!

ここでもう驚愕してドン引き。良識とか世間体とかを考えなければここまでできるのか。

でもこれはほんの入口にすぎません。次にユナイテッド航空は、「どんな短い路線でも1000マイルあげます、さらにマイル二倍」というキャンペーンをやってしまいます。これで80万マイル。LAラスベガス間を80往復で4300万マイル。

ここでBelkinさんは海外進出します。タイでマッサージ師を見つけて、そのツテで20人の人を有給で雇って国内便で一人10往復させて750万マイル。この顛末が面白いんですよ。違法な薬物でも運んでるんじゃないかとの疑いは、マイル計画を話したら放免されたけど、「タイのスタッフたちが、縁起が悪いから嫌だといって乗ろうとしないのでなんとかしてくれ」と航空会社から泣きが入ります。彼が雇ったのが盲目のマッサージ師ばかりで、盲目の人を見ると悪いことが起こるという迷信があるのに、1つのフライトに20人も乗ってるのは耐えられないとのこと。航空会社と「1フライトに2人までなら許容範囲」という合意を取り付けてなんとか達成したんだそうです。この時代は、マイルを簡単に他の人に譲渡できたみたいですね。。。それに、上級ステータスは「プレミアムポイント」とかではなくマイルだけでカウントしてます。これは米系エアラインは今もそうなのかな。

Belkinさんは支払った金額、獲得したマイル、それがビジネスクラスで何往復分のマイルか、普通に買うとそれがいくらか、といった数字を表にしています。で、稼いだマイルを使って家族と嬉しそうにビジネスクラスに乗り、遠足の子どもみたいに設備に喜ぶ。

ほかにも、雑誌を定期購読すると溜まるマイルのために毎月20部購読したり(余った雑誌はいろんな人に配ったり店に置いてもらったりして活用)、明らかに間違って安く設定された(0ひとつ付けるの忘れた、みたいな)航空券を買いまくったり、eBayで買い物しまくって、サイト外で全部払い戻したり(eBay手数料とマイルだけ残る)、

クレジットカードを家族5人、それぞれ12枚ずつ作ったり・・・

ホテル修行もしますが、あくまでも目的はビジネスクラスのフライト。閑散としたホテルのマネージャーとかけあって、チェックイン・チェックアウトだけは現地でやってもらったり。

訴訟に発展したケースは、とあるEコマースサイトのキャンペーンで、せっかく買ったものをEコマース側で勝手に返品処理されてしまった件。キャンペーンがそもそも運営会社と委託先との間でちゃんと承認されてなかったのでは?などBelkinさんは想像していますが、最終的にはNDAつきの和解に終わったようです。

黎明期のマイレージ界には、人為的ミスや、結果を予想しきれないキャンペーンが多かったけれど、航空会社も今はもっと賢明になっているし、そもそもマイルをたくさん貯めたがる人より、そんなこと気にしないで高いチケットを買ってくれる人こそが大事な顧客だと気づいてしまった、とも書かれています。その通りですね・・・。

私も今はいっしょうけんめい歩いたり(ANAJALも歩数でマイルが貯まるアプリを出してる)、あらゆるポイントをマイルに変換したりして、ちびちびと積み上げていますが、今この瞬間にも、どこかに、劇的にマイルが貯まるスキームが存在するんだろうなぁ。Belkinさんは徹底的にT&C(細かい字で書いてあるキャンペーンやマイレージクラブの条件説明)を読み込んで、穴を見つけたら一気にドカンと取りに行く、というやり方。彼が長年参加しているFlyerTalkというオンラインコミュニティには、今日も私の知らない外国の航空会社の、おいしすぎるキャンペーンが投稿されていることでしょう・・・。なかなかハードルが高いけど、ちょくちょく覗いて見てみようかなと思います。