うてつあきこ「つながり ゆるりと」938冊目

西新宿で毎週土曜日に食材配布や生活相談を行っている「もやい」の中に、彼らの支援を受けた経験を持つ方々を中心として温かいご飯やコーヒーを供する「サロン・ド・カフェこもれび」の成り立ちについて書かれた本。

今は「もやい」のオフィスは別のところにあるし、おそらくこの著者はもうその運営に携わっていないのではないかと思うけど、どういう思いや経緯で作られていったか、苦労や心労も含めて率直に書かれていました。

「場」を作るのって本当に難しい。誰もが、自分が出かけて行ける居場所を必要としているけど、求める場は人によって微妙に違うので、少しでも多くの人たちが”ここは自分の場所だ”と思える場所を作って、しかも維持するのは困難を極めます。来る人達は、運営側もお客さん側も、世代交代があるし、コロナや景気の変動など、そこを取り巻く環境も変わります。

今はこの本が書かれた2009年から14年も経った2023年で、生活困窮者の激増への対応が、さまざまな団体の喫緊の課題となっていると思います。ひとつの団体があらゆる問題を解決するのは難しいとも思う。

それでも、ご飯には今は困ってないけど、家族はないし友達よりヒマな私には、たまに他愛ないおしゃべりができる「居場所」は大切。仕事場でも、商業的な施設でもないどこか。そんな私にとっても、居場所を保ち続けてくれる団体はとても大切なのです。