これも「あの本、読みました?」から。アメリカ文学翻訳者の柴田元幸が推したのが、この本。ひとつのささいな出来事を99もの文体?で書き分けた、フランスの”奇書”の和訳です。これほどの珍妙な原作の和訳と思えないほど自然で面白みの多い文章で、なるほど、手練れの翻訳者が愛読するのも納得です。
翻訳者ってほんとすごい。学生のころ文学翻訳のクラスを受講したけど、ろくな成績がとれなくて、原文の理解が乏しいことを痛感したものでした。言語能力以上に、筆者の意図をくみとる読み方ができなければならない…いや、言語や語彙の理解が卓越していなければ、筆者のことば選びの意図をくみとることなんかできないのかもしれない。
つまり、英語の勉強を始めてからもう50年近くたつけど、英文学は原文より和訳で読んだ方が私には理解できる。がっかり。
でも多分、用事を済ませるための道具としての言語は、私にも身につけられる。それと、深く理解したり味わったりすることは、別に考えてもいいのかもな…。(つまりN1に合格しなくてもいいんだよ、と生徒たちに言いたい)