先日なにかのバラエティ番組を見てたら、この本で取り上げてる「BAD HOP」というラップグループの人たちが出ていて、川崎出身のやんちゃたちがラップで初めての東京ドーム公演を行った!そして解散!という話に驚いて、彼らのことをもっと知りたいと思ったので探したらこんな本があったので読んでみました。
ダメな親の子どもは、ある種の諦念を幼いうちから身に着けて、早く大人になる。にしても彼らのサイクルは早いな、中卒でラップ初めてデビューして徐々に売れてドーム、解散、でまだ28とか29だ。でも事実であっても「壮絶な生い立ち」が枕詞か屋号みたいに張り付いた形であれこれ取りざたされるのって、私だったら不快で耐えられなくなると思う。マスコミと距離を置かずに堂々と出て来る彼らはなんだかまっすぐで強く見えます。
この本を読むと、彼らのいる街角の景色が見えてくるような感じ。めちゃくちゃ殺伐としてるけど、下世話に温かい。で、彼らはすごく見た目や言動もラップもそうとうカッコいい。彼らが生まれ育った町まで魅力的なんじゃないかと勘違いしそうなくらい。そういう役割を自ら背負って立ってるから、中傷やイメージの消費にも耐えて強いのかな。
上京以来ずっと武蔵野多摩地域にいる私は、川崎という土地とはあまり縁がなくて、仕事の打ち合わせで工場に行ったことがあるくらいだけど、物見遊山の極み「夜の工場見学ツアー」に行ったことならある。真っ暗闇のなかで、赤い煙をあげつづける工場群は、生きて何かを生み出しているという感じで美しかった。
生きて、何かを生み出す。「壮絶な生い立ち」を背負った彼らはふしぎと、むしろ、まっさらで、何ものにもとらわれずに自由でいるように見えた。
私はこれからもラップを熱心に聞くことはないと思うけど、この本に出てくるいろんな人たちが生きて何かを生み出し続けることを応援したいな。と思います。