内田康夫「津和野殺人事件」1067冊目

図書館が放出した本が、入口の棚に「ご自由にお持ち帰りください」と置いてあって、これは移動中に読むと良いと思って手元に置いてありました。私立探偵の浅見光彦は、榎木孝明のイメージが強いな。爽やかでちょっとのんびりした雰囲気のイケメン。この本では津和野の旧家を巡る事件に巻き込まれます。

戦争前後の混乱の時代になら、どんなことも起こっただろうと思えるし、その頃の地元の名家には今では考えられないようなしきたりもあっただろう。時代設定をうまくできれば、現代では無理なことを書いても何の抵抗もなく頭に入って来ます。それに、行ったことはないけど、昔ながらの美しい街並みを想像して、雰囲気に浸れます。

ストーリーテリングが上手いんですよね。一番この村に似つかわしくない、帰ってくるはずのない人たちを最初に持って来て、彼女たちの思いつきがすべての発端ということにすれば、あとはスルスルとつながって出てくる。それも、普段から週刊誌も読まない人でも、銀行に行けば雑誌がたくさん置いてある。そこでたまたま見かけた津和野のグラビア、というのはいかにもありそうで。

 

すべてを警察に委ねない結末は、今の世の中では少し違和感がある気もするけど、ミステリー小説としての完成度はそれで損なわれてはいないと思いました。

津和野旅行、計画しようかな。