「虐殺器官」を読んでから3年。やっとこれも読み…じゃなくて聴きました。
これが面白いんですよ、主な登場人物は少女たちなのにナレーターは男性。最初は男性のキャラクターかなと思うけど、ちゃんと聞いていれば女の子たちだとわかります。それにしてもなぜ女性に読ませなかったんだろう?それは多分、全体の骨組みとなっているチャプター名がコンピュータープログラムのコードというかHTMLタグのような形で記述されているのですが、これを男声で読ませた方が全体の雰囲気がこの小説に合うからじゃないかな。
カッコ、なんとかイコール英単語、カッコ閉じ、…が延々と続くところもある。聞きづらいけど、どの部分に重要な情報が入ってるかわかってきてからは、カッコとかじゃなくてキーワードを拾うようにして聞ける。人間臭さの対極、という風味が楽しめる。
さすがに、主役の少女たちの名前は、キリエ トアンと、ミヒエ ミアハと、レイカドウ キアン。正確に聴きとれる。苗字と名前の切れ目もわかる。音がおもしろい名前だな、日本の名前だろうか?レイカドウだけはたぶん「堂」で終わるんだろうな、と思う。これが霧慧 トァン、御冷 ミァハ、零下堂 キアン、しかも前の二人の「ア」は小さい、ということは、聞き終わって文字で見るときのお楽しみだ。むしろ紙で読んだら、苗字の読みをすぐに忘れて、何度も何度も冒頭に戻って確認するかもしれない、忘れたまま読み進んだかもしれない。
ストーリーは少女たちの自殺、という、何度か映画とかで取り上げられたテーマから始まるけど、彼女たちの中の「悪」を展開していくのが面白い。機械的vs人間的、現代vs完全な管理社会、戦争vs平和など、鋭く普遍的なテーマをどんどん掘り下げていって、ある極端な帰結をみるんだけど、それがまた不快ではないし、ひとつの結論としてありうる、と思える。
ほんとに力と知性のある作家だったんだな。これも、日本のSFを読む人ならぜひ一度読んでおきたい力作だと思います。