これは紙で読みました。単行本ではなく、新潮の2024年5月号。
これ読んで、同じ芥川賞を受賞したばかりの「ハンチバック」を思い出す人は多いんじゃないかな。私は「すこしちがう人」への関心が強いほうだと思うので、両方とも食い入るように読みましたが、こちらのほうがSF感が強いです。
さまざまな形態の、”正常”ではない赤ちゃんたちを描いた作品として、まず思いついたのはブラックジャックのピノコでした。彼女は、この小説の中では”きょうだいや母に吸収されてしまって”嚢胞となったほうの胎児であったところを、ブラックジャックの驚異の技によって縫い合わされて、人間の女の子になった、やはりかなりSF的なキャラクターでした。医師という仕事をするなかで、生死や病気、人間の身体の不思議さや不条理さに気づいてしまったり、考えることをやめられなくなったりすることって、きっとたくさんあるんだろうなと想像します。
ベトちゃんドクちゃんという、すごく有名な結合双生児のことがよく報道されていた頃は、彼らの身体はどうなっているんだろうと考えることもあったけど、ここ何年も、結合双生児のことが意識に上ることはありませんでした。このほかにもまだ、文学として書かれるべきテーマってたくさんあるんだろうな。
面白かったし、登場人物たちの不完全さや自然さに共感も持てました。他の作品も読んでみようと思います。