伊坂幸太郎「PK」1063冊目

この人の「フィッシュストーリー」がとても好きで(映画しか見てません、すみません)、この小説はそれを思わせるタイムリープものだと聞いてわくわくしながら読みました。

最近他の作家の小説をたくさん読んでるけど、久々の伊坂幸太郎、やっぱり面白い。なんとなく、青春的な、若くてきれいな期待感が湧いてきて、読んでて気分がいいのです。

「PK」「超人」「密使」の3パートに分かれていて(別々に書かれたので短篇3つとされているようだけど、私にはこれはこう見えた)、それぞれに、未来からカタストロフィを回避するためにやってきた”密使”や彼らによるなにかの操作の結果が描かれているんだけど、未来も1時点ではなくて、xx年先の未来とxxx年先の未来の密使どうしの行いが拮抗していたりする。「TENET」みたいだ。(PKの方が早く書かれてるけど)

読後、ネタバレブログを読みあさってみたけど、つながらない、わからないことはたくさんある。「PK」でPK決めたプレイヤーとその幼なじみ、大臣が比較的早い死を迎えるのは、xx年先の未来の密使の操作によるもので、その後xxx年先の密使が来ることで彼らは寿命を全うしたりしたんだろうか。その辺のつながりがわからないままだった。いいけど。

ここで「いいけど」と言い切ってしまう私は、深読みが好きなようで、転がされる快感を楽しめればいいという浅い読者なんだろうな・・・。最近は、すべての伏線が美しく回収されることに、あまり関心がいかなくなった。完璧な小説より、快感を与えてくるものを喜ぶようになった。少年少女は先が長いから、そうはいかない、私は中高生の頃はあらゆる行間を埋めるような本の読み方をしてそれを楽しんでたと思うけど、今はもうすべての謎は解かれないまま私は寿命を迎えるんだろう、そのうち、と思ってる。

だからもしかしたら、全部埋めることが難しそうなこの小説は、中高年(「中高生」ではなく)が楽しんで読めるのかもしれない・・・いや、自分ひとりの読書体験を普遍的なものみたいに書くこと自体、無理があるか。