ジェイミー・フィオーレ・ヒギンズ「ゴールドマン・サックスに洗脳された私」1076冊目

アメリカの金融業界ってのはどういう場所なんだろう?私もアメリカのIT業界のはしくれだったことはあって、日本とは違うことがたくさんあることは知らないわけじゃないけど、『アメリカの金融業界の人』あるいは『ゴールドマン・サックスの人』が彼らと私たちを極端に違うものとして、つまり自分たちこそが選ばれた者であってそれ以外は全部一緒、みたいなことを言うのがなんなのか、ほっとけばいいのかもしれないけどやっぱり知りたい…とずっと思っていました。

これを読んでわかったことは、この会社ってなんか電通とか日本のいろんな会社について聞いてることと同じだなぁということ。男尊女卑、男たちがストリップバーに行くとかLGBTサポートは口先だけとか、コンプライアンス委員会はボスと筒抜けとか。日本のあまたの会社との違いは報酬額の桁数くらいだ。この会社、あるいはアメリカの金融業界の特異性はひとつも見つけられなかった。人間ってどこで何をやってても、あんまり変わらないものなんだな。と改めて実感してしまう。

まあ、私も、そこまでではない環境で会社員として長く働いてきて、会社の名前に頼る気もないけど、自分を雇ってくれるような会社はもう二度と現れないくらいに思ってなかなか辞められなかった時間はありました。辞めてみたら、仕事はたくさん存在するし、男尊女卑じゃない職場も中にはある。あと、お金をたくさん出さなくてもおいしいご飯を食べさせる店はたくさんあるし、辞めても死にゃしない人が多いと思う(飢え死にする人が一人でもいたら大変なことだけど)

これを書いたのが日本女性だったら、これほど家事に理解のある夫がいるケースは多くないだろうし、もっと孤独にさいなまれて、傷ついたりゆがんだりしてしまう人が多そうな気がする。でも、いつからでもいいから、大事なことを思い出して、この人みたいに大切なことのために生き直すことはできると思う。

という、会社名や業界や国に必ずしも関係ない、普遍的な問題を提起した本だったのでした。