「R-18小説大賞」受賞作。といっても検閲でひっかかるようなセクシュアルな表現は皆無で、燃え上がる性ではなく細々と消えかかっている性のほうを多く描いた短篇集でした。
表題作「赤い星々は沈まない」は、介護施設で数々の老人に夜這いを続けるキヌ子さんと、夫婦関係で悩む介護士の物語。キヌ子さんにはなれない中年女としては、二人とも見ていて心がちくちくとします。
「ローズとカサブランカ」 過干渉の姑から逃れようとする主婦の物語。みんな、望んでも得られなかったいろいろなものを抱えて、何か他のもので埋めようと必死だ。痛々しくならないためには、すっぱり諦めてできるだけ清潔に暮らすしかない気がするけど、それって本当に自分に正直なんだろうか。「痛々しくてもいいじゃないか」と言い返す勇気がないだけかな。
「ソアルージュ」 女性向けの性的なマッサージ店の若いスタッフに入れ込む中年女性。これ特に痛い。年をとると、同年代の異性より、若くて健康な人のほうが魅力的だと感じるのはなかなか避けがたいけど、彼ら彼女らを自分の性の対象にすることは、どうしても”自分が汚れている”し”相手を汚してしまう”ように思えてしまう。そうやって、修道女みたいにやたらと清貧を志向するようになる。
「カラーレス」 人気者の少女とその友達。「スクールカースト」からどうやって卒業するのか。最近気づいたんだけど、親や先生や上の人の言うことは正しいとデフォルトで思って従うのが普通だ、という根っから素直な人って世の中にはたくさんいるらしい。(今まで何十年無知でいたんだ、私は)私のようなマイペースでしかいられない者は「スクールカースト」で悩むこともないけど、素直な人たちがそこから抜け出すのは大変なんだろう。私のようなやつは逆に、学校でも会社でも、自分のやりたいようにできないことが多すぎて、どこにいても割と苦しいわけだ。会社をいくつも辞めたことに後悔はないけど、同じ学校だった仲間たちがすっかり各社の重鎮になっているのを見ると、ずっと続けられることってすごいな、でも私には無理だったな、と改めて思ったりする。みんなそれぞれ、自分の持ち場でがんばるしかない。
「肉桂のあと味」 婚前に亡くした婚約者の実家の和菓子屋に通い続ける独身女性50歳。弟が学生時代の友人を連れて家にやってきた。昔、自分に憧れていた気配があったが。。。
なんとなく滅入るような短編集だけど、最後の「肉桂」にはホロリときそうになった。誰かをずっと愛し続けることと、新しい人を恐れないこと、どちらも大切だ。人にひどく迷惑をかけない限り、自分が一番いいと思う笑顔をしていられるのが一番いいんだよな。うん。