やさしい小説だなぁ。ほんとに、やさしい。読み終わってほっとしてそのまま眠ってしまいそう。眠れたらいいなと思う。他の人から見れば小さなことで、取りかえしがつかないんじゃないかと思うほど傷ついてしまう人がたくさん出てくる。そこまでは、何度も聞いたことのある話だ。でも黒猫のような、賢くて老成した少年が、ねじれてしまった関係を修復してまわる。その理解のしかたとか、アプローチのしかたが、誰にも新たな傷をつけない。ちょっとシャクにさわることはあるけど、いつの間にか周りの人たちが笑うようになっている。
この重要キャラクター黒野良輔が、”めっちゃくちゃいい奴”でも”誰からも愛される”でもなく、リアルにその辺にいそうなクラスメイトなんですよ。傷ついた人って本当に傷つきやすくて、助けたくてもそう簡単には助けられてくれない。これくらいさりげなく、若干の距離感をもってやさしくされなければ、立ち直ることなんてできないのだわ。
この小説を書いた人は、ものすごく傷ついた経験があって、で、誰かの何かのやさしさなんだろうか、何かにふれて、今はこんな小説を書ける人になった人なのかな。
ずっとこの本を読んでうとうとしていたい気もするけど、傷つかない人になるには、何度も傷つくしかないのかもしれないとも思う。登場人物たちは、この本が終わったあとも、何度も何度も、もう歩けないような思いをするんだろう。その都度、誰かがそばにいてくれるとは限らない。泣くのをいったんやめて違うことをずっと続けてたら、そのうち年をとって、昔傷ついたことを思い出して「懐かしいなぁ」って思えるようになったりするのだ。この人たちがのんびり長生きしますように。(本の中の人たちだけど)逆上したままヘイトに走ったりしないまま、やさしいままでいますように。とか思ってしまいました。
