伊予原新「藍を継ぐ海」1101冊目

しみじみと、自分や世界を肯定したくなる短篇集でした。いいなやっぱりこの人の作品は。

最近とても嬉しいんだけど、不幸を消費するような(「お涙ちょうだい的」ともいう)小説がバカ売れするのではなくて、傷ついた心にそーーっとくっついてあっためてくれるような、本当にやさしい小説が高く評価されたり、よく売れたりしている話を聞くことが多い。傷ついた人が読んでも二次被害にあわないような小説。傷ついてる人ってたいがい、自分自身なにかやらかしたという罪の意識があって、ちょっとした刺激に弱くなってる。この人の小説に出てくる人たちは、みんな明らかにちょっと不完全で、私たちと同じように、小さな失敗をやらかして、下手すると誰かを大きく損ないかねなくて、びくびくしている。彼らを弾劾したり追い詰めたりする人は、いるけど遠くにいて、不完全な彼らはそれほど大きく損なわれない。やらかしたことを知っている人たちの中で、傷がだんだん治って、前より少し強くなれる。

とりあえず、明日からのゴールデンウィークには、海に行きたいなぁ。素敵なビーチのカフェとかより、ゴロゴロいろいろ埋まってる狭い砂浜とか、古い船が係留されてる小さな漁港とか…。