川﨑大助「フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ」1103冊目

「映画フィッシュマンズ」、「THE LONG SEASON REVIEW」と見てSpotifyでずっとフィッシュマンズをかけていたらすっかりはまってしまった。佐藤伸治フィッシュマンズの人々がどう生きていたのか知りたくて本を読みました。

まず気づいたのはこの著者のことば選びの丁寧さ。ロッキン・オンって私も若い頃読んでたけど(というか子どもの頃か、小6から読んでたからな)、天才的だったり幼児のようだったりするアーティストたちとちゃんと付き合ってインタビューするのって、”技術”じゃなくてリスペクトとか相手を理解しようとする努力だな、このライターの人たちすごいなと思ってました。川﨑氏はアーティストが嫌がりそうなクリシェを避けるし、自分の感覚器がキャッチしたことを自分から出て来たことばで表現することに関して、とても誠実だなと思います。たぶんこの人、介護の仕事とかやったら利用者の人たちに好かれそう…やらないだろうけど。

しかしこの本は分厚い。翻訳書か。微に入り細に入り、時系列的に彼らの音楽のことが語られるので、初めてフィッシュマンズをデビューシングルで知った人のように追体験できるのはありがたいけど、ファンになることを目的としているわけではないので、ときどき読み飛ばしてしまう。…ながらも、随時でてくるアルバム名や曲名でまたSpotifyYouTubeで聞いてみる。どれもいい。

この本を読んでる間から読み終えてもずっと、「ナイトクルージング」とか彼らの曲が脳内ループしてるんだけど、昨夜、夢の中に、佐藤氏のお母さんが彼の小さい頃のことを話していた明るい部屋から、晴れた窓の外へふわっと飛び出してしまいそうな光景が出てきた。違う、人間は空を飛べないから、窓は閉めておかなきゃ、と思うのに、たましいが軽くなって外へ出たがる夢。…あぶない、うっとりして天国に連れていかれてしまいそうだ。と夢の中で思ってた。

自分より音楽のことを大事にする人が好きだと、星野源が「おんがくこうろん」で言ってて、ほんとそうだよねと思ったけど、あまり厳しくなると自分や周りの人たちを痛めつけてしまうよね。それでも年をとってくると、いろんなものに痛いほど反応してたのがだんだん鈍くなっていくから、苦しくて死にそうなときは繭みたいなものにくるまって、さなぎみたいになって、違う自分ができるのを何週間も何年も待ってていいと思う。誰か一人が「~なきゃならない」ものなんてないのだ。