そうそうたる人気作家たちによる、日本橋三越をめぐる6つの短篇集。なんとなく「青い壺」みたいなのを想像してたけど、デパートが各著者にとってどういう場所か?がベースにあるので、もっとキラキラとしたなつかしさや感動のある、予想を超える面白さの本でした。
自分にとってデパートって、小さい頃は本当に夢の場所で、(三越でも東京でもないけど)高い洋服を買ったことはないけど、やっぱり大食堂があってお子様ランチがあって、で、私の時代にはサンリオコーナーがあって、100円の「いちごしんぶん」だけは自分のおこづかいでも買えて。さらに三越にはやたら立派なライオン像やその伝説があったり、巨大な天女像があったりもする。無料で入れるテーマパークって書いてた人がいたけど、そんな風に思ってたなと思います。
辻村深月「思い出エレベーター」
子どもの頃の自分に出会える?デパートは家族の幸せな思い出。
伊坂幸太郎「Have a nice day!」
SFファンタジーになってる!伝説ってやっぱりすてき。
阿川佐和子「雨あがりに」
館内放送担当女性の今昔。
恩田陸「アニバーサリー」
いぬと天女とパイプオルガンのちょっとした小話。
柚木麻子「七階から愛をこめて」
遺書とカードとパイプオルガンに魔法がかかる。
東野圭吾「重命る」
この小説の中の三越がいちばん、三越でなくてもよさそうだけど、とても寝られた面白い犯罪ミステリーでした。
なんか、昔デパートの地下のお菓子売り場(「デパ地下」という言葉がない頃)で素敵な詰め合わせを買って家で開けて大喜び、みたいな、なかなか贅沢な一冊でした。旅とか通勤とか、ちょっとした時間に読むのもよさそうです。