「時ひらく」1108冊目

そうそうたる人気作家たちによる、日本橋三越をめぐる6つの短篇集。なんとなく「青い壺」みたいなのを想像してたけど、デパートが各著者にとってどういう場所か?がベースにあるので、もっとキラキラとしたなつかしさや感動のある、予想を超える面白さの本でした。

自分にとってデパートって、小さい頃は本当に夢の場所で、(三越でも東京でもないけど)高い洋服を買ったことはないけど、やっぱり大食堂があってお子様ランチがあって、で、私の時代にはサンリオコーナーがあって、100円の「いちごしんぶん」だけは自分のおこづかいでも買えて。さらに三越にはやたら立派なライオン像やその伝説があったり、巨大な天女像があったりもする。無料で入れるテーマパークって書いてた人がいたけど、そんな風に思ってたなと思います。

辻村深月「思い出エレベーター」

子どもの頃の自分に出会える?デパートは家族の幸せな思い出。

伊坂幸太郎「Have a nice day!」

SFファンタジーになってる!伝説ってやっぱりすてき。

阿川佐和子「雨あがりに」

館内放送担当女性の今昔。

恩田陸「アニバーサリー」

いぬと天女とパイプオルガンのちょっとした小話。

柚木麻子「七階から愛をこめて」

遺書とカードとパイプオルガンに魔法がかかる。

東野圭吾「重命る」

この小説の中の三越がいちばん、三越でなくてもよさそうだけど、とても寝られた面白い犯罪ミステリーでした。

なんか、昔デパートの地下のお菓子売り場(「デパ地下」という言葉がない頃)で素敵な詰め合わせを買って家で開けて大喜び、みたいな、なかなか贅沢な一冊でした。旅とか通勤とか、ちょっとした時間に読むのもよさそうです。