面白かった。400ページ近いのに、あっという間に読めました。
この人の作品のなかの「悪」は、十分ほんとうに悪いんだけど、あまり底恐ろしくなくて、最後までエンタメ気分で楽しめる。だからここまで人気があるんだろうな、きっと。…いやでも村上春樹みたいな純粋な悪を描き続けて世界的に人気の作家がいるか。多分、違うのは読んでる人がそれほど重く感じずに読める感覚なのかな。
映画「ブレット・トレイン」の印象はとても強かった。あれを日本で映画化してたら、見覚えのある、普通の日本人の代表のようなキャスティングで、面白くて身近な作品になっただろうけど、ハリウッドが大枚はたいてブラピやアーロン・テイラー・ジョンソンやマイケル・シャノンで作ったもんだから、インパクト最強のスラップスティックができあがりました。あれとの共通点がいろいろあるなと感じながら、この作品を読みました。まぬけな悪党、ミカンとレモンに対してロシアンブルとアメショー。無垢なようでいて悪辣な女性。改めて、伊坂作品をあれくらい拡大解釈して爆発させる映画も作れちゃうんだよな、そのアイデアってなかなかすごいな、と思います。