岩波少年文庫って、小中学生のころ、何冊も楽しんで読みました。エミール少年とかカッレくんとかドリトル先生とか長ぐつ下のピッピとか…。病気で寝ていても、遊び疲れて帰って来ても、早くも人生に希望を持てなくなっていても、どんな状態の少年少女にも夢を与えられる素敵な冒険物語だったなぁ。「ナルニア国ものがたり」とか、すごく気になるのに読めなかったのもあった。昔は図書館が苦手だったから、おこづかいが足りなくなると諦めるしかなかった。今は文庫本を買うお金も、図書館に行く余裕もあるけど、感動にうちふるえる心は、だいぶ弱ってしまったな。
これは読みそびれていたうちの、1967年に書かれた、ちょっと大きくなった子ども向け小説の名作。
ニューヨークに住む、冒険心あふれる姉弟のきょうだいが、ほんとうに家出をして、メトロポリタン美術館にひそむ。そこで出会った”ミケランジェロの天使の像”の真贋をめぐって、自分たち自身が研究者となって調査に乗り出す…。
それをある老婦人が語る形式になっていて、最初はもしやきょうだいの姉のほうが後年回想してるのかなと思ったりしたけど、冒険からたいして間を置かずに語られているようです。これが書かれたあと、ジュブナイルをターゲットとした作品(特に映像作品)では予想しなかった仕掛けや、どんでん返しに次ぐどんでん返しなど、1967年には存在しなかったさまざまな工夫が行われてきて、それをたくさん見てしまうと、ボリュームや仕掛けがあっけなく思えてしまうのは、ちょっと残念で、10歳のときに読めたらどんなによかったか、と思ったりします。
でもマジックは生きています。なんだろう、この、胸の奥がわさわさして高揚してくる感じ。本当は、団地の裏山の秘密基地も、ニューヨークの少女のプチ家出も、自分のこととして読めれば胸ときめく大冒険なんだろうな。CGを多用した映画よりリアリティをもって読める分、マジックは身近なのかもしれません。