有栖川有栖「論理爆弾」1131冊目

<以下全編ネタバレなので、閲覧ご注意ください>

 

 

本格ミステリーの有栖川有栖が書いた、女子高生探偵が主人公のミステリー、最後の3冊目です。でも、完結編ではなかった。このシリーズの前提は、北海道が北方領土の国後・択捉を巻き込んで日本から独立し「日之本共和国」と自称し、本州以南の従来日本にスパイを送り込んでいる、という設定。(村上龍「半島を出よ」思い出してしまった)これが3冊目の最後まで関係してくるんだけど、あまりにも設定が大きすぎる気がする…。最後の最後まで、なんの訓練も受けていない探偵(になりたい少女)は、屈強な大人たちの助けを借りなければ生き延びることもできず、最愛の母の背中はまだ見えてきません。2冊目「真夜中の探偵」には、謎の男女に付き添われて、娘とショッピングモールでニアミスする母の姿が現れていたのに、この巻に母が直接登場することはありません。ソラ(娘のことね)が母にたどり着くには、これから何年も武道の訓練や知識の習得を経て、かつ、なんらかの経済的、あるいは軍事的?うしろだてを得なければ、とてもじゃないけど遠すぎます。

3冊目のなかで、友淵隆一が生前に愛していた女性をこれから探しに行くという宣言をしていたので、福岡で足跡をたどって何らかの情報を得て、その後いったん大阪に戻って誰かのサポートのもとで探偵としての訓練を秘密裏に受け、別人のように強くなって北の国に挑む、とか。高校で仲良しだった二人と今度は一緒にこの村に戻ってくるとか。

なんとなく、書かれることのなかった本のあらすじや結末をこうやって想像することもひとつの楽しみかも。(cf.ボルヘス「伝奇集」)それとも、いつかそのうち4冊目が書かれることがあるんだろうか…。