タイトルが興味を引きます。最近「死んだxxのxx」みたいなちょっとSFっぽい小説を読んだので、これもそういう霊とか転生とかかと思って読み始めました。
死んでなかった。最初の数章では主人公の言葉に死ぬ前、死んだあと、といった言葉が出て来ますが、これは比喩的に使われていて、彼はふるさとを後にして妻子とともに言葉の通じない国で不法移民として職探しをしています。
普通に帰宅するはずが、バスを間違えて道に迷い、家にたどりつけないまま家族3人で夜の街をさまよう描写、読んでいて切なくつらい気持ちになります。家(ふるさとの意味も含む)に帰れない、家はもうない、居場所も行き先もない。そんな気持ちで暮らしてる人って世界人口の何割かいるかもしれない。私は海外移住に長年憧れてきたけど、実行に移せないままなのは、自分もそういう状態になるんじゃないかという不安がずっとあるからかもしれません。
もし自分が移民になったら?私は酒癖も悪くないし、行った先の言語習得努力をたぶん怠らないし、なんとか生活できるくらいの仕事を見つけて、地元の人たちに本心では見下されながらもまあまあその国に順応したふうに生きていくのかもしれない。でも忙しく働いた日の夜に、バスで帰宅できず一晩中さまよって、最後に留置所に入れられる夢をみてしまうかもしれない。そういう悪夢っぽい世界です。
こんな小説を書くのはどういう人か?と思ったら、ポルトガル語を母語としているアフリカのアンゴラ出身の作家で、なんと2012年からずっと日本に住んでいるらしい。ヨーロッパ文芸フェスティバルという魅力的なイベントで何度も登壇している。こんなイベントがあるなんて知らなかった。また開催されたら絶対行こう。
その前に、この作家が書いた「東京は地球より遠く」という短篇も読まなければ。日本での会社生活の強烈なストレスを描いたアメリー・ノートン「畏れ慄いて」もすごい小説だったけど、こっちも共通点があるかもしれません。
