しんみりと優しいなぁ。この人の本はいつもそうだ。今いちばん悩んだり苦しんだりしている人を見つけて、優しく寄り添うよう世界。現実の世界では見つけにくい優しさを心に持った人が意外とたくさんいるのだ。優しくない人たちのほうが声が大きいから。優しい人は黙っていることが多いから。でも看護とか介護とか、やさしくなければ、相手を思いやる配慮がなければ成り立たない世界が(いろんな人たちの犠牲の上に、かもしれないけど)存在することも思い出して、この世界はまだ生きていく価値があるものかもしれない、と思わせてくれる。
コロナ禍だけが問題ではなくて、それにまつわる他地域間の移動や感染についての誹謗中傷、離婚や転校、仲たがいなど、胸をちくちくと刺す出来事がたくさん起こります。それでも自分を立て直して、周囲の人を思いやって生きていくための勇気をもたらしてくれる小説です。
「お涙ちょうだい」でも「上から説教」でもなく、こんなふうに繊細に読者に寄り添う小説って最近たくさんあるな(昔からあるのかもしれないけど)。やさしさが評価されるのは大切なことです。というか何よりも大切。500ページ近い大作だったけど読んでよかったです。
