<ネタバレしないように書いたつもりだけど、若干ヒントが含まれるかもしれません>
面白かった!すごく読み応えがありました。
著者が「あの本読みました?」の医師作家特集に出てるのを見たことがありますが、可憐なお嬢さんみたいな雰囲気の人で、私も同じ女性でありながら性バイアスがかかってしまって、きっと繊細で感情の描写の多い小説なんだろうという先入観が生まれていました。読み始めてすぐ、違う!と思うと同時に、自分の中のステレオタイプを認識せざるをえなくなって、自分ごとながら興味深いわと思ってしまいました。
著者を知らなかったら、書いたのは男性だと思ったんじゃないかな。とても力強い、骨太な文章です。登場人物も主要な人々は男性が多いし、中心人物であり探偵の旧友の武田航はやさしい男だけど、それでも性描写も含めて女性っぽさはちっとも感じませんでした。(ただ、結末に至る出生事情は、少女マンガで過去に何度か見たことがある気がするので、これを使うのは男性じゃないな、と思ったりもします)
医療現場ってところは、自分の感情がどうだとか言ってる暇はなくて、現状の正確な把握と分析、確実に緻密に医療行為を積み重ねていくこと、などすべてが事実ベースで進んでいくんだろうと思います。描かれている情景は、医療現場だけでなく全体的にそういう硬質な文章で、読んでいてどんどん自分も運ばれていくようで、それが快感ですらあります。書いてるのが医師なので、医学的にどうなんだ?という疑問を持たずに安心して読めるのもいいです。
人間像もそれぞれ生きてますよね。武田航はなぜか私は三浦貴大をあてはめて読んでましたが(そう外れてもないでしょ?)、美形の名探偵医師、城崎は…誰でしょうね。内面は情感の薄い人だけど見た目は優しげということで、イケメン俳優なら誰でもできそうな気もします。生島京子医師は、国籍を問わなければジュディ・デンチなんだけどな…
行き詰ったので話をストーリーに戻すと、転がされるがままに結論で驚き、満足感たっぷりに読了したあと、ところどころ読み返してみると、同じ親にして子の見た目の違い?とか、すれ違うリスクはなかったの?とか、結末で下した判断は昭和のミステリっぽいな、反対意見も出るだろうなぁ、とか、後になって気になるところがないでもないですが、気にせず最後まで楽しめたので、私としては問題ありません。
それよりこの結末は、生殖医療についての著者の強い思いが映し出されていると感じました。巻き込まれてしまった人たちを裁きたいのではなくて、生まれてくる子どもたちに起こりうることを考えてこなかった今までの医療に対して、強く問題提起をしたい、という思い。本当にそうだな、すごく重要な問題だな、と感じながら読み終えました。
それにしてもタフな文を書く人だなー!
