最近読んだ「六つの村を超えて髭をなびかせる者」と印象が重なりますが、時代は少し後のようです。こちらで取り上げるのは、初代開拓判官の島義勇、札幌農学校で学んでいた内村鑑三、アイヌの歌人バチラー八重子、作家の有島武郎、石狩川の治水に取り組んだ岡崎文吉、の5人。それぞれが、それぞれの資質と努力によって札幌を中心とする北海道が今日に至るまでの道を作ってきた、という本です。九州出身で大学からはずーーっと東京という私がなぜ?っていうくらい北海道の本でした。
まさに大著。ページ数も550Pもあるし、1822年生まれの島義勇から1945年に亡くなった岡崎文吉まで、書かれている時間軸もおよそ一世紀に及びます。政治や土木に尽くした人たちだけではなくて、普通の人として生きて、生涯に一冊だけ歌集を残した人や、親にもらった広大な農場を捨てるようにして小説の世界に逃げた人についても書かれているので、同じ普通の人である自分も、その人たちのそばにいたように思えて、じんわりと心が温かくなります。
小説家が書いたノンフィクションって大昔から名作がたくさんあると思いますが、私の記憶が正しければ、すごく昔の作品だけど、松下竜一「ルイズ 父に貰いし名は」に印象が近くて、美しい虚像を描くのでも、醜悪な面を暴くのでもなく、普通にそこにいたその人たちの像が浮かんでくるような作品だなと思いました。北海道にゆかりのある人や、北海道が好きな人は特に読んでみてほしい本です。
