半藤一利「B面昭和史(新版)」1207冊目

昭和といっても1926年(昭和元年)から1945年(昭和20年)までなのでこの本は戦争の庶民史です。最初はすごく面白いんだけど、すごく楽観的な著者が書いても、社会が狂っていく不穏さや、終わりに向かって突き進む恐ろしさで、最後まで読み通すのに勇気が必要だったし時間もかかりました。それでも、読まなければと思ったのは、読めば読むほどその状況に今と通じるものがあるから。

日本の私たちはどうしてこう、純粋でいようと自分をつきつめてばかりで、他人のやっていることも性善説でとらえてしまって、結果、簡単にだまされてしまうのか。どうして上からの暴虐に対して革命を起こせず、いい子になってしまうのか。心の中でうらみをためているのに、どうしてそれを真っすぐ敵にぶつけられずに、弱い者にぶつけてしまうのか。どうして全然えらくない人たちを代表に選んでしまうのか。

でもすぐに復興してしまうのもすごい。昭和史が1945で終わっていたとしたら、日本はその後100年も200年も復興できないとみんな想像したんじゃないだろうか。弱いくせに打たれ強くて、しぶとくよみがえって、私たちって不思議だ。「シン・レッド・ライン」の兵士たちみたいに、アメーバみたいに、いくら仲間を失っても数や性質をいつの間にか補い合って、まるで戦争以前と変わらないような社会をあっという間に作り上げてしまう。

でも、戦争は、やっぱり、だめだ。心と体についた傷や記憶は、外からは見えなくても永遠に消えなくて、禍根を残しているから。痛い、つらい、苦しい、かなしい、はその時だけじゃなくて、ずっと残るから。

こんなに克明に市井の人たちの記録を集めた本があることも、今まで知らなかった。どうしてだろう。こういう本こそ、課題図書とかにして若いうちから読んでおきたいのに。しっかり読み込むことで、自分に残るものがあるはずなので、目を背けないで読んでよかったと思います。

この本と同じことが起こらないように、できるだけたくさんの人が読むことを祈っています。