厚かった!上下巻で単行本700ページ超。重かった!
ゴールデンウィークのような長い休みの読みものにベスト。長いけど、どんどん次を読みたくなるから。
実は。映画はたくさん見てるけど、この人の小説を読むのは初めてだ。読んでみようと思ったきっかけは、コロナ禍でたまたま買った「Big Issue」にインタビューが載っていて、気持ちが沈みがちなこの時期に、どんな人も元気になるハッピーエンドの長編を書いた、と言っていたから。原書で読もうかとも思ったけど、値段が高くて…。読み切る自信もないし、断念。それから待つこと4年くらいか。和訳も高いよ、4675円×2=9350円。図書館に感謝です。
主人公は、アメリカの郊外に住む長身でスポーツ好きな高校生チャーリー。母を事故で失くし、酒浸りから抜け出しつつある父親を支える、家族愛の強い少年だけど、自分自身もグレた時期があり、そのときに認識した自分のなかの残虐性を常に忘れずにいる。
この少年の一人称で書かれていて、著者がハッピーエンドを最初から宣言しているので書いてもいいと思うけど、彼の回想という形になっています。彼と父親のほかに、彼が出会う近所の謎の屋敷に住む偏屈な老人とその犬が、前半のメインキャラクター。彼が父親とこの老人にそそぐ無限とも思える慈愛の行動が、きれいごとに見えないのは、前述のワルかった頃の自覚が一人称で常に語られるから。父親、老人、老人の犬の描写が高校生らしくて、心が動いていって相手に愛情を感じるまでが自然で、さすがキング、読ませるなぁと思います。
でも、ホラーじゃない、ファンタジーだよ、といわれても、異世界の様子は気味が悪いしバトルの描写はかなりホラー。小説初体験の私には、少しずつでないと読み進めない怖さもありました。灰色にされた人々の崩れた容貌、デスマッチの描写、その中を歩く少年チャーリーは、正義の人でありながら、命をじゅうりんする者たちに対する態度は冷徹で、まるでプロの戦士。現実の戦場の人々も、相手に対する激しい憎しみを攻撃のエネルギーにしてるんだろうか。
こういう、普通の人が、愛するものたちへの暴虐を受けて、激しい怒りをもって敵を攻撃する…という構図は、アメリカや他の国々の軍人たちにも通じるし、戦い系のゲームに熱中するときの心理にも通じるのかな。私はこの小説を読むだけでビビって腰が引けてしまうけど、生き物には、生き延びるために、戦わなければならないときがあるんでしょうか。
という感じで、私にはこれはホラーな部分もある作品でした。人間の光だけでなく影という存在にも意識を促す感じはデヴィッド・リンチの作品のようだし、村上春樹だとか(2つの月って「1Q84」より前にアーサー・C・クラークとかも書いてるらしいけど)も思い出すけど、そもそも主人公は文中何度も何度も、自分が過去に読んだ作品のさまざまな場面を思い出してるように、」これは過去も未来も現在も全部ひっくるめた世界でキングが新たに創造した「フェアリー・テール」なんだな。
さっそくNetflixで複数回のドラマが制作されてるそうです。私の想像力はごくごく限られてるので、どんな壮大な映像ができてくるのか、楽しみです。

