遠坂八重「死んだら永遠に休めます」1240冊目

Audibleで聞きました。とても聞きやすくて楽しめました。登場人物が男女問わずけっこう多いんだけど、口調や演技でちゃんと聞き分けられます。これは、小説そのものが、登場人物ごとにわかりやすく描き分けられている、ということもあるんでしょうね。

内容についていうと、…キツかった~!自分の会社員生活を振り返ってみて、自分で仕事の全部を把握しきれなくなって信じられないようなミスを連発した時期もあったな、とか、会社と家の往復だけで部屋が散らかっても何もできなかったときのこととか、やっと忘れていた嫌なことの数々が思い出されてきて、胃痛が。。。。

いろいろあっても、今の会社を辞めたら最後、落ちていくだけだ、という恐れから、あと少しでも長く勤めなければと思っていた時期もありました。そんなときの自分にも、この小説の青瀬にも、「そんなに嫌ならすぐに辞めてしまえ!」と言ってやりたいです。

作為的なにおいのない文章なんだけど、親切すぎる同僚たちが怪しく見えてくる箇所も後半たくさんあったりして、読者自身が疑心暗鬼になっていきます。そういう読ませ方もうまいですよね。主人公の感覚とか表現は、すごくガーリーな印象もあるんだけど、過度に感傷的じゃないので、入り込みやすい。

途中ときどき挿入される、電車の向かい側に座って脱力しきっている女性の描写は、そこだけちょっとだけ筆致が違っているので、Audibleで聞いていても、そこが地の文とは違う挿入部分だということがわかります。(誰が誰を見ているか?は最後までわからなかった)

ミステリーなので文中で謎の解明が行われますが、読者に謎を解かせる小説ではなくて、謎解きは主人公の会社生活の内外で仕事とともに少しずつ進んでいきます。派遣社員の仁菜ちゃんはバカなのか賢者なのか判然としない人物で、読者としては、最終的にいい人かわるい人か、正直か嘘つきか、という従来の二分法に最後に落ち着くんだろうと思いながら読んでしまうのですが、人間って誰でもいろんな面があるのが普通なんだよな…と、読後は現実に戻って冷静になれました。

とても筆力もエネルギーもあるし、しっかりとした自分軸をもって主観と客観の両方で世の中を見られる作家さんだと思いました。他の作品も読んでみたいけど、この次は社畜生活じゃない、あんまり読んでても苦しくならない作品がいいな~