NHK総合放送文化研究所 編「テレビで働く人間集団」201

NHKには技術研究所と文化研究所があって、文化研の方で「放送学研究」という冊子を定期的に刊行しています。この本はその中の連載をまとめて1983年に出版したもの。もう27年も前だ!しかしバブルのさなか、衛星放送前夜、今の経営陣がバリバリの現役だった頃、という時代のことを知るのも面白そうだと思って買ってみました。

本で取り上げる人々はNHKだけではなく民放や外部の人、たとえば当時すでに引退していた重鎮や、制作会社「テレビマンユニオン」の創設メンバー、カメラマンや記者やアナウンサー、技術者等々さまざまな人のインタビューから成っています。「読むドキュメンタリー」って感じ。

私はほんとに放送って業界のことを知らなくて、新聞や出版のほうがマスコミといってもまだ知識があったと思うけど、それらと決定的に違うのは、技術に負う部分が非常に大きいってことじゃないかな。極論してしまえば、丸一日停電して新聞が発行されなくてもなんとかなるけど(出版はもちろん)、ラジオテレビは存在意義すら揺らぐ感じ。電気だけじゃなくて電波も録画も録音もその他機材のもろもろも、どれが壊れても立ちいかない。新しい技術の恩恵もどんどん入ってくるけど、古い技術が陳腐化するのもあっという間。放送技術ってパソコンみたいに進化を続けてて、まだまだこれから変わっていくんだと思う。

27年前の「副調整室」(収録スタジオの隣に設けられている、モニターや調整のための部屋)の図も載ってますが、奇しくも今日見学してきた2010年の副調整室と比べても、表面的にはほとんど変わってません。カメラのスイッチングや収録室とのマイクでのやりとり、録音、照明、という材料も同じなら調整するのは今も人間。カメラの前で緊張して台本を間違えるのも人間です。・・・つまり、思うに、1スクリーンでも3スクリーンでも、できるだけ良質な動画コンテンツを手作りする人がいれば、見ようと思う人もいるだろう、と思う。作り方や見せ方は変わるけど、YouTubeがいくら人気でもシネコンはまだ増えてるし、あと30年くらいはテレビもなくならないんじゃないかなぁ。

以上。