劉慈欣「円」775冊目

「三体」で一気に世界のベストセラー作家となった劉慈欣の短編集。ケン・リュウが編纂したアンソロジーで何作か読んだことがあるけど、これほどまとまった形は初めてです。 「月の光」と「円」はアンソロジーの中のひとつだったのに、よく覚えてる。今回も、…

森博嗣「歌の終わりは海」774冊目

ミステリーじゃないシリーズがあったのか…。何も知らずに読んでしまったら”解決編”がなかった。先日読んだ「冷たい密室と博士たち」は、冒頭に現場の見取り図が載ってるいわゆる”本格ミステリ”だったので、頭を働かせる覚悟で読んでしまって肩透かしになって…

ローレン・ウィルキンソン「アメリカン・スパイ」773冊目

オバマ元大統領の「夏の読書リスト」にあった一冊らしい。オバマさんもだしビル・ゲイツの同じようなリストもチェックはするけど、読みたい本が不思議となくて、これがその手のなかで初めてくらいじゃないかな。(いやクリントンの書いたミステリーはこの手…

カルロ・ロヴェッリ「時間は存在しない」772冊目

哲学の本のようなタイトルだけど、科学の本。太陽が地球を回っているのではなく、地球が太陽を回っている…というパラダイムシフトをはるかに超える(今の私たちにとっては、だけど)、時間は地表のほうが山頂よりゆっくり流れているという”事実”からこの本は…

岸俊彦「断片的なものの社会学」771冊目

学問ってふつう、ランダムに見えるものを膨大に集めて規則性や普遍性を見出すことだ。数式ならそれでいいしそれが役立つんだろうけど、ビジネススクールのようなものに通ってたとき、講師の書いた”成功の一般法則”の本に出てくる会社の不正が報道されたり買…

高野秀行「腰痛探検家」770冊目

冒険や納豆の本を何冊か読んでいる高野秀行氏の、今回は腰痛に関する本。冒険談にはいつもおおいに驚嘆し共感し楽しませていただいているんだけど、腰痛も共感…私も頸椎と腰椎にヘルニアがあって(脊柱側弯のせいもあるかもしれないけど)、ぎっくり腰になっ…

藤原マキ「私の絵日記」769冊目

つげ義春の妻が書いた絵日記(故人)。村田喜代子の本に出てきたのが気になって、読んでみた。 なんとも生き生きとした絵、屈託のない文章。楽しいときとつらいときがあるので、「面白かった」という気持ちではないけど、なんとも言えず、この素直な生活感が…

アンソロジー「街を歩けば謎に当たる」768冊目

6篇の中編ミステリーからなるアンソロジー。 海野碧「向こう岸の家」 実家に戻ってきた女性に、小さいころの記憶がよみがえってくる…。ひきこまれる設定だけど、「小さいころに亡くなった彼女の兄」という設定が伏線だと思い込んで引きずってしまった。 両角…

アンソロジー「街は謎でいっぱい」767冊目

気軽に楽しく読めそうなミステリーのアンソロジーかなと思って借りてみました。ショートショートではなくて、ちゃんと読み応えのある中編5本で、本を5冊読んだくらいの読後感がありますね。 大石直紀「京都一乗寺 追憶の道」 ロマンチックなファンタジー的…

おいしい文藝シリーズ「こぽこぽ、珈琲」766冊目

河出書房新社が2017年に出した”おいしい文藝”シリーズの中の一冊。 ほかにも「ぷくぷく、お肉」「まるまる、フルーツ」等々10種類も出てるそうです。なんて楽しい企画。 古今東西31人の著名な作家の短いエッセイ集ですが、書下ろしは1つもなさそう。よく探…

村上春樹「図書館奇譚」765冊目

さっき読んだ「猫を棄てる」もだけど、短い作品に素晴らしいイラストをたっぷり加えて薄い本にしてくれるのって嬉しい。映画化ともアニメ化とも漫画化とも違って、中心にあるのは文字なんだけど、ときどき見る刺激的で美しいイラストがピリッとイマジネーシ…

村上春樹「猫を棄てる」764冊目

村上春樹のまだ読んでない本がけっこうあると気づいたので、順次読み進めてみる。 猫と暮らしてる私にはショッキングなタイトルだけど、どきどきしながら読んだら棄てた猫は自分たちより先に帰宅して待ってた、というオチがあって安心しました。というか猫を…

李琴峰「生を祝う」763冊目

「彼岸花が咲く島」を読んだあと、さかのぼって他の単行本も全部読んだ後、満を持して受賞後第一作を読了。 改めて、この人は現代日本随一の言語能力を持つ人だなと思う。昔の本を読めば、文豪と呼ばれる人も、希代の評論家も、まずその言語に驚くことがある…

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」762冊目

一度読んでみようと思ってた本。書かれたのは1937年、昭和22年。第二次大戦前夜の日本で、児童文学者である著者が少年少女たちに強く働きかけたかったことが熱く、かつ静かに語られた、美しい本です。昔の映画みたいな真剣な倫理観が、戦前ではなく戦後の作…

綿矢りさ「ひらいて」761冊目

この間見た映画「勝手にふるえてろ」がとても面白かったので、映画「ひらいて」も見ようと思ってるけど、図書館で見かけたので今度は原作を先に読んでみました。 重い…衝撃波が…破壊力が…。相変わらずすごいわ、この作家。シチュエーションは、黒いけど現実…

大西連「絶望しないための貧困学」760冊目

去年の11月に読んだ「すぐそばにある『貧困学』」の新書版でしたね。手に取ってから気づいたけど、大西さんの高校生の頃から「もやい」初期に至るエピソードが中心なので、内容が古くなっていないし、コラムで引用している統計データは更新されています。単…

村田喜代子「偏愛ムラタ美術館【展開編】」759冊目

未読の村田喜代子の本が溜まってきたので読んでる。 このシリーズは最初のを読んだ気がしてるけど、ブログは書いてなかった。2番目を飛ばして3番目のこれを読んだみたいだ。 で、これが捧腹絶倒の面白さだった。私は芸術作品を自分勝手に楽しむのが好きだし…

リード・ヘイスティングス/エリン・メイヤー「世界一『自由』な会社、NETFLIX」758冊目

この本を読もうと思ったのは1年近く前かな。その間にだいぶ”意識高さ”が減ってきてるので、自分の将来に役立てようというより、ある卓越した企業のあり方として読んでる。 創業者が構築してきた強烈な企業文化は、最終章でアメリカ以外の国に拡張するのにか…

藤巻健史「コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方」757冊目

「資産運用大全」はとても難しい本だけど金融の仕組みを解説していて、こっちはぐっと平易に誰でもわかる感じで具体的な金融商品の投資のアドバイスをしている本。がんばってあっちを先に読んで、こっちをその後のQ&A編として読んでも良いかもしれないし、1…

稲葉剛「貧困パンデミック~寝ている『公助』を叩き起こす」756冊目

コロナ渦にある日本の、特に東京のホームレスの状況がすごく正確に把握できる良書でした。漠然と、じゃなく、きちんと知ることからしか何も生まれない。ただ… 自分の中で、①いっしょうけんめいお金の勉強をして、少しでも減らさず増やすように、日本円が暴落…

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」755冊目

すごく面白かったエッセイ集の続編。 面白い、というだけじゃなくて、居心地の悪さや切なさ、申し訳なさがオブラートにくるまれることなく、そのまま示される。本当のことが見たい・聞きたい、という欲求も、楽しみたいという欲求と並んで、誰にでもあるのだ…

藤巻健史「藤巻健史の資産運用大全」754冊目

わずか348ページの新書なのに「資産運用大全」って大きく出たなぁと思いつつ、読んでみました。ボリュームは少ないのに、書いてあることが難しくて難しくて…。少しは自分でも運用してて、おずおずと信用取引もFXも経験くらいはしたことがあっても、この本は…

中野信子・ヤマザキマリ「生贄探し」753冊目

ああ、いやな本だ(※書かれている事象がね)。 私はつねづね、今の日本に魔女狩りというものがあったら間違いなく焼かれている、なくてよかったと思ってるんだけど、おそらく、中野信子もヤマザキマリも焼かれるほうだと思う。目立たなく愛される、守られる…

オムニバス短編集「猫はわかっている」752冊目

タイトル借りしました。うちの三毛は背中を向けてソファの上でごろんと寝てる。 村山由佳「世界を取り戻す」で、猫は生涯に一度だけ人間の言葉を話すと書いています。「じゃあ、そろそろいくワ」といって旅立った灰色のおじいさん猫。うちの子はときどき「ご…

湯浅誠「つながり続けるこども食堂」751冊目

この人の本を読んでみようと思って探したときに、あまりにも多くてすごく迷ったけどまずこの本から。とてもわかりやすく興味深く、こども食堂の趣旨や現状を紹介してくれる良い本でした。 私も勘違いしてた。こういうの興味あるな、どんなところなのかな、と…

高野秀行「イスラム飲酒紀行」750冊目

もうタイトルからして禁忌な感じ。イスラム教徒の多い国は、ウズベキスタン、ドバイ、マレーシアに行ったけど、観光客が行くレストランではそれなりにお酒飲めたような記憶があります。でも現地の人は飲んでなかったなー。なるべく地元に近いワインを買って…

尾崎世界観「母影」749冊目

著者がやっているクリープハイプというバンドのことは、聞いたことあるかも?くらいしか知らない。インタビュー番組で見た彼が面白くて、先に本を読んでみることにしました。彼がむかし働いていた製本所で作られたきれいな本。 感想は、とても面白かった。起…

森博嗣「冷たい密室と博士たち」748冊目

森博嗣って比較的新しい作家さんだと思ってた(「すべてがFになる」を読んだのを覚えてる)けど、この2作目が書かれたのは1996年。だからまだ誰もケータイ持ってなくてUNIXでメールを使いこなせるのがサバイバルだったりします。データの運搬は今は亡きフロ…

瀬戸内寂聴(晴美)「花芯・夏の終わり」747冊目

ある小説が「私小説」なのか「フィクション」なのか? どの作家でも同じだと思うけど、混同してすべて著者の経験だろうと思い込む人って多いと思う。読者はどこでその区別をつけるんだろう。 寂聴さんの”最後の私小説”と何かで読んだ「いのち」を読んだので…

加藤シゲアキ「オルタネート」746冊目

最初に結論を言っておきますと、人間描写の行き届いた、愛のあるよい作品で、とても面白かったです。 冒頭にある「主要登場人物」リストを見たとき、「蓉」と書いて「いるる」、「凪津」と書いて「なづ」、「深羽」と書いて「みう」といった名前が並んでいて…