都築響一 編「Neverland Diner - 二度と行けないあの店で -」1041冊目

魅惑のタイトルですよね。おとぎ話の中のレストランだとしたら、ハリポタ施設の不思議な色のデザートとかありそうだし、大人向けだとしたら、村上春樹の小説の中に出てくる、あっちの世界の居心地のいいバーとかありそうだし。 でもこれはいろんな人たちが「…

佐藤正午「冬に子供が生まれる」1040冊目

Web媒体に連載中、夢中になって次回を待ちながら読んだのですが、まとまった感想を書くのは難しく、単行本を待って再読しました。 「月の満ち欠け」でとうとう直木賞をとったわけですが、今まで愛読してきた佐藤正午となんとなく”手触り”?が違うようでちょ…

ジム・ロジャーズ「2030年お金の世界地図」1039冊目

世界を自分の足で歩いて(または自分のバイクで走って)実態をよく見たうえで投資する、旅する投資家ジム・ロジャーズ。私も計算より実態観察にもとづいて大事な判断をしたいほうなので、この人の書いたものは定点観測的に読み続けています。 この新刊では、…

ブレイディみかこ「オンガクハ セイジデアル」1038冊目

この人の本は、新刊を見つけるたびに読んでます。モリッシーについて書いた本を読んだときは、彼の政治や社会に対する姿勢を自分はなんにも知らなかったことを思い知りました。この本にも何度か彼は出てくるんだけど、こうやって横断的に書かれたものを読み…

又吉直樹・ヨシタケシンスケ「その本は」1037冊目

面白い。あの又吉直樹とあのヨシタケシンスケがコラボしてる。二人とも、じわっ、クスシ、しみじみ、とくる可笑しみのある作家で、それにあの、なんともいとおしいイラストがついて、とても立派に装丁されている。中身は「その本は」で始まる、本をめぐるユ…

「須賀敦子の手紙」1036冊目

これは、最近読み漁っている須賀敦子関連書籍のうち、彼女が親しい友人夫婦に宛てて書いた個人的な手紙を集めたもの。エアメールの表書き、裏面の筆跡も含めて、なにもかもさらしています。 名前くらいしか知らない人の自宅を、いきなり覗き見しているような…

大竹昭子「須賀敦子の旅路」1035冊目

やっとここまできた。 「1万円選書」に当たってこの本が送られてきたのが2022年の1月。2年も寝かせてしまったのは、軌跡を訪ね歩くと言われても、そもそも須賀敦子を知らない。知らない人の軌跡を訪ねる本を読むなんて、ヒントなしに暗号を解こうとするよう…

須賀敦子・文、酒井駒子・絵「こうちゃん」1034冊目

須賀敦子が書いた童話がある、それを絵本にしたものが日本で出版されている、というので調べて読んでみました。絵は私の大好きな酒井駒子です。 「こうちゃん」。「こうちゃん」って誰だろう。座敷わらしだけど室内より屋外によく出没する。神出鬼没で、人の…

Max二宮「ふわっと速読で英語脳が目覚める!」1033冊目

この著者は、10年前から自分の経験や研究から独自の「英語速読」のセミナーを立ち上げていて、私もこの「英語速読」講座をちょっとだけ体験してみたことがあります。私の場合、英語はもちろん日本語の本を読むのもゆっくりな方で、以前はたくさん本を読む人…

湯川豊 編「須賀敦子エッセンス2 本、そして美しいもの」1032冊目

「エッセンス1」を読んだあと、ずっと頭のなかでこの人のことを考えていた。いったいどんな人だったんだろう。周囲の人たちから愛される可愛らしい女性だったと思うけど、自分を高くも低くも見ない、他者のことを書いてもあまり感情を出さない。独力でヨー…

井上真偽「聖女の毒杯 ‐ その可能性はすでに考えた」1031冊目

ギラッギラにラメを漉き込んだ紙が表紙に使われていて、文字が読めん(笑)! 新しい若い作家さん、かと思って読んだら(私から見れば十分若くて新しいけど)2016年発行、ということはもう8年も前。著者は年齢性別不明とのことだけど、毒婦の表現がとてもリ…

ミステリーアンソロジー「不在証明崩壊」1030冊目

忙しい時期に、「あーもう!」と一瞬仕事を投げ出して、電車の中やカフェのベンチで短時間で読めるこういう短篇集って、大好き。特にこれは最初の刊行が1996年、”イヤミス”という言葉がまだなく、弱者いじめがミステリーに登場しない、自分と同世代だと感じ…

須賀敦子「須賀敦子エッセンスⅠ」1029冊目

「一万円選書」の最後の一冊、読み終えられずに持っている本が、この著者のイタリアの軌跡を別の女性がたどる本で、どうもおおもとの須賀敦子を読まないと落ち着かないので、先に目についた一冊を読んでみました。 すごく胸にくる、なんともいえない素晴らし…

竹本健治「涙香迷宮」1028冊目

これは面白かったわ~。 著者の知的体力というか胆力というか、「そこまでしなくても」というほどトリックにトリックを積み上げていて、すごいです。それほど昔の本ではない割に、なんとな~く女性の描き方がステレオタイプだったり、昭和の香りがただよって…

幸田文「木」1027冊目

これは、神社で木の芽をもらってきて大切に育てる「平山」が読みそうな本だな。(久々に会った妹と去り際にハグしたり、カセットテープでルー・リードを聴くのは、平山に憑依したヴェンダース監督だとおもう)私は植物はサボテンでも枯らすけど生き物はザリ…

ブレイディみかこ「RESPECT リスペクト」1026冊目

昔の女性アナキストについて学び、懐かしみ、憧れつつ、現代に生きる女性がアナキストとして立つ・・・という建付けは、他の小説と同様。こんどはサフラジェットと、ロンドンのシングルマザー用施設を追われた若い母たちが立ち上がるさまを対比しています。…

泡坂妻夫「しあわせの書」1025冊目

面白かった。昭和62年が初版のこの文庫本。時代を感じさせる設定(まだスマホはおろか携帯もない、ネットで調べものもできない、などなど)、なんとなく楽観的な語り口。この感じ、バブル前期あたりの小説によくあった。ちょうど私もこれから東京へ行って大…

雨穴「変な家」1024冊目

何年か前に深夜テレビで、ドラマ化したのをやってました。これが気味悪くて面白くて・・・。あのときは確か一話完結のオムニバス ストーリーだと思ってたけど、これは1冊で一話でした。登場する間取りは3軒分、中心にいる人物は共通してる。面白いけどパズ…

杉井光「世界でいちばん透きとおった物語」1023冊目

タイトルからは、いまどきの若い人が書いたエモいミステリーかなと思う。そういう趣もないではないけど、感覚的、感情的な文体ではないし、ストーリーは一貫してる。それより何より、読んでいる途中でソレに気づいたときの鳥肌が、この本の読書体験の最高の…

島田荘司「占星術殺人事件」1022冊目

面白かった!読み応えあった! トリックは確かに大胆不敵、しかも犯人が・・・。読み始めたときは「魍魎の匣」みたいなオカルトっぽいミステリーだと思ったし、そういう雰囲気をかもし出すために設定を昭和初期にしたのかなと思ったけど、トリックの設定上も…

佐々涼子「夜明けを待つ」1021冊目

この人の文章ってすごくきれい。母親が少し上から見下ろしてるようで、やさしくて正しい。なんとなく、佐々涼子ってきっと、すごくきれいな声の人なんじゃないかと思う? 死がちかづいてくるから死を思うのかな。私はいつも死にそうだった母のことを見てたか…

ジーン・シャープ「独裁体制から民主主義へ」1020冊目

「100分de名著」で取り上げたのを見て読んでみました。これって原作がパブリック・ドメインなんですね。著者ジーン・シャープは2018年まで生きたので、当然のように著作権が消滅したわけではなくて、本人が財産権を放棄したわけだ。テーマが非暴力革命で、お…

市川沙央「ハンチバック」1019冊目

あーー面白かったーー! 電車の中でカバーもつけずに読んでいたら、B級かC級くらいの感じのエロ小説が始まったので困ってしまった。いろいろ戸惑う部分もたくさんあったけど、まずはあまりの面白さにあっという間に読み終えてしまったことを書いておきたいで…

延江浩「J」1018冊目

この本の紹介をどこかで見たとき、すごく下世話で品のない本かなぁ、でも読んでみたい、と思った。読み終わった感想をいうと、思ったような下品さは全然ない本だった。この著者のことは全然知らないけど、もともとこういう純文学っぽい文章を書く人なんだろ…

朝倉秋成「六人の嘘つきな大学生」1017冊目

いや本当に、就職面接なんてやっても、人間のなにも見えやしないと思うよ。とくに内面は。外面のよさは、今後営業職をやらせる人ならある程度うまくやれるかどうかが面接でもわかると思うし、焼き魚をきれいに食べられるかどうかは、精密機械を扱うスタッフ…

追跡団火花「n番部屋を燃やし尽くせ」1016冊目

まず賞賛と激励の拍手。まだ若い韓国の女性二人が、のちに警察や人権団体のサポートを受けるとはいっても彼女たちだけで、ここまでの戦いを成し遂げたことに感動をおぼます。と同時に、「無事でよかった・・・」。日本と同様韓国も、正義を貫こうとするもの…

坂本龍一「ぼくは、あと何回、満月を見るだろう」1015冊目

坂本龍一のことを私はたぶん、自分とかより”進化した人類”、目指すべきもの、と思っていて、どうやっても近づきようのない高みにいる存在だった。バッハとかモーツァルトみたいな。こんなに早く、ろうそくを吹き消すみたいにいなくなってしまって、ぽかんと…

今井むつみ・秋田喜美「言語の本質」1014冊目

見た目もタイトルも、おそろしく地味。ためにはなるけど堅くてあまり面白くない本・・・に見えます。最初のほうは私もそう思って読んでいました。私は言語にふだんから興味のある方だから、オノマトペだけでぐいぐい読めるけど・・・って。 書きぶりも、面白…

うかうか「それゆけ犬HK」1013冊目

NHK、それも大河とか朝ドラじゃなくて、「ドキュメント72時間」とか「100分de名著」とか語りだす人、たまにいます。「ピタゴラスイッチ」と「みんなのうた」が好きな人とか・・・料理と体操が好きな人とか・・・ この著者もきっとそういう人なんだろう。だっ…

國友公司「ルポ歌舞伎町」1012冊目

あー面白かった。著者のTwitterで、この本がAmazonプライム会員なら「読み放題」(つまり追加料金なし)で読めることを知ってすぐにKindleにダウンロードし、あっという間に読み切ってしまいました。 この人の本は、やくざの世界をやたらと残虐に、あるいは…