村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」730冊目

<映画とこの作品終盤の筋に触れています> 映画「ドライブ・マイ・カー」を見た→原作の短編集「女のいない男たち」を読んだ→なにかまだ抜けている気がして、新しめの長編を読み返してみたくなりました。結果、読んでよかった。「ドライブ・マイ・カー」の原…

池澤夏樹・編「わたしのなつかしい一冊」729冊目

次に読む本を自分で選ぶと、同じ作家やジャンルばかりになりがちなので、ときどき、人が勧めるものを試してみます。 推薦者は作家が多いけど、著書を読んだことのない人も多い。ひとつひとつ、思いがこもった推薦文です。読んでみたくなった本はたくさんある…

アントン・チェーホフ「かもめ・ワーニャ伯父さん」728冊目

映画「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹の短編がベースだけど、映画オリジナルのお芝居の練習場面もあって、演じられているのがこの「ワーニャ伯父さん」です。映像化されたもののソフトが見つからなかったので、戯曲を読んでみました。 最後に、”不器量だ…

村上春樹「女のいない男たち」727冊目

<この本および映画化作品の内容にふれています> 「ドライブ・マイ・カー」を見たので再読してみました。 映画の原作になっているのは「ドライブ・マイ・カー」のほか「シェエラザード」もだけど、「木野」の中の妻の浮気を発見する場面も使われてました。…

河野哲「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」726冊目

栗城史多さんの訃報、覚えてる。それまでの準備不十分な登山のしかたや、やたらと人にアピールする感じから、もしかしたら、山で死を選ぶ覚悟だったんじゃないかと思った。いったいどんな風に生きて死んだ人なのか、いつかドキュメンタリー番組やノンフィク…

小松左京「闇の中の子供」725冊目

岸政彦「給水塔」の中で、筆者が大好きな小説として語る「少女を憎む」が読みたくて借りてきました。 美しい思い出と陰惨な結末で構成される小説が好きというのは奇妙な気もするけど、なんとなく納得。「ラブリーボーン」っていう映画を思い出しました。まだ…

東田直樹「自閉症のうた」724冊目

この人の本を読むと、いつもパッと目が開かれたような気がする。 私が「理解した」と思っていたことは、「自分や誰かが設定した仮説に納得したつもりになること」でしかなく、東田氏がものごとを語るときは「理性と五感でわかるまで探って出た答」をつづって…

岸政彦「図書室」723冊目

この人の小説は好きすぎる。 「図書室」の「私」は私だ。大した思い出はないけど、好きじゃない人と結婚したりしないで、50歳になっても自活できてる。新しく何も起こらないから、昔のことをよく思い出す。思い出すことは、どれもまぶしいように思われて、な…

李琴峰「五つ数えれば三日月が」722冊目

「彼岸花が咲く島」が面白かったので、過去の作品も読んでみます。 この本に収録された2編は、台湾から日本に留学してきた女性が日本の女性に恋をする、親密で繊細な作品。著者が自分の生活のなかで経験したり想像したことを膨らませたのかな、と感じる、若…

サイモン・シン(青木薫・訳)「フェルマーの最終定理」721冊目

あー面白かったー! 本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、…

李琴峰「彼岸花が咲く島」720冊目

どこだろうこの島は、なんだこの言語は? そういう新鮮な驚きが、読み始めてすぐにありました。地図が冒頭に載っているけど、形からわかるようなわからないような。でも、登場人物の一人、ヨナの話す言語を見てひらめいた。「これは与那国だ!中国語圏に一番…

山田詠美「血も涙もある」719冊目

新刊を見かけたので、久しぶりに読んでみました。ドロドロの女の愛を絶妙な筆致で巧みに描いたものを期待して。 感想をいうと、全然ドロドロしてなかった。結婚している男女とその周辺の女と男の愛欲はあるんだけど、ぜんぜん迫ってこないくらい乾いてた。書…

佐藤正午/東根ユミ/オオキ「書くインタビュー4」718冊目

1~3は2017年に一気に読んだんだけど、その後は連載も読んでいたので、既視感がすごい。連載された何かをまとめて後で読むなんて経験は、大昔の月刊少女マンガ以来じゃないかなぁ。この本に関しては、全部が全部既読というわけでもないので、読んだことが…

ロバート・A・ハインライン「時の門」717冊目

先日読んだ筒井康隆「ジャックポット」が、この短編集の中の「大当たりの年(The Year of the Jackpot)」からタイトルを取ったと書いてて、気になったので乗っかってみました。 「大当たりの年」では、<以下ネタバレ>大当たりというより、いきなりバス停で…

ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」716冊目

この人の本は本当に面白い。「地べたをはいずりまわる」とこの人は表現するけど、日本古来の意味で「地に足がついている」から面白いのだ。 ロンドンに住むことに憧れた数十年前、万が一居残ったらこんな人生があったのかもしれないといつも想像するんだけど…

筒井康隆「ジャックポット」715冊目

断筆を解いたあとけっこう書いてたんですね。これは最新刊。これはSFカテゴリーじゃないな。エッセイありフィクションあり、フィクションのほうはボルヘスみたいに自作の小説を「1分にまとめました」っぽく書いている感じ。読む方も楽だし書く方も楽。まどろ…

岸政彦「ビニール傘」714冊目

私の好きな本がこんなところにあった。 人はそれなりにがんばっていても、何かのきっかけでずるっと社会から滑り落ちてしまう。他の人たちをはねのけて、しがみつく人もいるけど、身体や心が弱くなってしまうとがんばることもできなくなって、漂いつづける人…

伊藤和夫「英文法どっちがどっち」713冊目

英語チェックの仕事を少し手伝ってるので、必要に迫られて購入。 品詞っていっても、SとVとOくらいならわかるけど、形容詞と動名詞と助動詞と副詞と前置詞と…ってなってくると、asとかtoとか、特にフレーズになってる語句の一部(such asのasとかさ)に使わ…

ミニマリストTakeru「月10万円でより豊かに暮らすミニマリスト整理術」712冊目

会社を辞めてから「月x万円で暮らす」というテーマの本を何冊も読んだけど、これは中でもとてもポジティブでエネルギッシュ、未来に向かって大きな希望を持つ若者の著書です。(老後資金の乏しい人向けの本も多い) シリーズ2作目で1作目を読んでないけど、…

村上春樹「一人称単数」711冊目

<ネタバレあります> 英語(いや他のヨーロッパ言語でもいいか)の翻訳をする人しか思いつかなさそうなタイトルだな。 この短編集のなかでは「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」が好きだったな。「謝肉祭」でも音楽愛が書かれているけど、最初…

岡田英夫「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」710冊目

日本語教師の資格を取ろうかと思って、いろんな教材を読みまくったりしています。「テキスト」と称する本を読めば、試験には無駄な知識も含めて包括的に理解できるように必要な知識を体系的に書いてあるんだろうと思って、そういう本を買って通読してみたん…

信田さよ子「加害者は、変われるか?」709冊目

加害者の多くが、自分は被害者だと思ってるとある日気付いた。といっても、深刻な家庭内のDVの話じゃなくて、職場のいやがらせの話だけど。(普遍的なことかもしれないけどね) 表題の論点がとことん語られる本かと思ったら、もう少し全般的なわかりやすい読…

村田喜代子「縦横無尽の文章レッスン」708冊目

この本のパート1ともいえる「名文を書かない文章講座」はだいぶ前に買って持っている。村田喜代子は文章の達人のなかでも、子どものように感じて大人のように考える、感性と技術の両方がすごい人だと私は思っているので、この人の文章講座は読む価値が高い!…

柴田元幸・高橋源一郎「小説の読み方、書き方、訳し方」707冊目

何でも読んで何でも書く高橋源一郎と、何でも読んで訳す柴田元幸が、表題について自由に語り合った本。私の読んだことのない本や、聞いたこともない作家の話が多くて、いいとも悪いともなんとも言えないのですが、高橋氏が絶賛する柴田氏の訳書、ブコウスキ…

地球の歩き方「世界の魅力的な奇岩と巨石139選」706冊目

これは感想を書くような本なのか? 違うかもしれないけど、面白かったです。この1年半の映画と本だけの私からはもう思い出せないほど、その前の数年間は休みのたびに旅行に出かけてました。ひたすら出費を抑えて、何度でも行く、どこへでも行く。若い頃は都…

福井寿和「全店舗閉店して会社を清算することにしました」705冊目

青森でカフェなどの飲食店を経営していたけれど、コロナ禍に突入した際にいち早く現状を把握し、比較的早い段階で会社を畳むことを決意した経営者の著書です。 Twitterでこの本のタイトルにもなっている”清算”に関するNoteのことが、書かれた日にすぐ回って…

西條奈加「心淋し川」704冊目

こころさびしがわ、じゃなくて、うらさびしがわ、って読むの?(表紙を見ながら) 江戸のうらぶれた下町の片隅に、貧しくつつましく暮らす人たちの群像劇です。なんとなく、目新しさはなくて、前に他の人の書いた似た小説を呼んだような気もするけど、落ち着…

ジョン・ガイガー「奇跡の生還へ導く人~極限状況の『サードマン現象』」703冊目

確か高野秀行氏が勧めてたので予約した本。 生死を分ける場面で、姿のない「サードマン」が現れて自分に指示をしてくれたおかげで命拾いをした、などなどの話を集めたものです。合理性の国アメリカっぽくない気がする、あるいみオカルト的、日本でなければア…

奥田知志・茂木健一郎「『助けて』と言える国へ」702冊目

2013年発行。最近見た特集番組で奥田知志が取り上げられていて、もっと知りたいと思って借りて、よく見たら対談集だった。茂木健一郎は、以前はTwitterをフォローしてたこともあったけど、その頃彼はなにかに怒ってることが多くて、読むのに疲れて外してしま…

ケン・リュウ「宇宙の春」701冊目

彼自身の短編集、日本版4冊目。ハヤカワのちょい縦長のこの本を読んでるとちょっとワクワクする。 「宇宙の春」 今回も情緒豊かな、SFって感じのしない短編もあります。「マクスウェルの悪魔」は米軍から親の故郷である沖縄へ送られた、日系人女性のお話とか…