2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

坂口安吾「不連続殺人事件」968冊目

坂口安吾は「堕落論」の人、という印象が強かったけど、日本屈指のミステリーを書いていた!という話を聞いて、ワクワクしながら読みました。 戦後すぐの日本の文壇は、こんなに乱れていたのか・・・?と思うほど、異常に入り乱れた愛憎関係。それがとある山…

山口雅也「奇偶」967冊目

(ネタバレ?あります) あえてミステリーではなくSF枠で登録します。これはなかなか難解というか、難しい言葉をたくさん使っているけれど、要は量子力学(01ではなくその間のどこかに存在する)とかシュレディンガーの猫という問題をぶわっと膨らませて、ボ…

ジョン・アップダイク「アップダイクと私」966冊目

ニコルソン・ベイカーの「U&I(アップダイクと私)」を読んで、そこから本物のアップダイクに来た。(これにもおおもとの「ボルヘスと私」があるとは知らなかった。読まなければ!) これエッセイと書評を集めた本で、「アップダイクと私」は、作家として注…

レンタルなんもしない人「レンタルなんもしない人というサービスをはじめます」965冊目

これも読んだ。ずっとTwitterをフォローしているので既視感があるけど、ときどきレンタルさんの家族のことなど、知らなかった情報もあります。 受検は、なにかのゲームにムキになるみたいにがんばった記憶があるけど、就職や転職活動は私も心底イヤだった。…

タラス・シェフチェンコ「コブザール」964冊目

不思議なことに、表紙にも目次にも作品解説にも、シェフチェンコのファーストネームが出てこなくて、年譜のページにやっと登場する。それくらい、シェフチェンコといえばこの人なんだろうな。ウクライナの偉人として広く尊敬されているらしい、画家で詩人の…

青山美智子「赤と青とエスキース」963冊目

これもだいぶ前に「一万円選書」で選んでいただいた本。 こんな人生があったらな・・・と想像して書かれたファンタジーだと思うけど、童話みたいに「若い二人は結ばれました、めでたしめでたし」ではなくて、紆余曲折もあり、なぜか二人は結婚せず子どもも持…

綾辻行人・歌野晶午・法月綸太郎・有栖川有栖・我孫子武丸・山口雅也・麻耶雄嵩「7人の名探偵」962冊目

面白かった・・・どれも面白かったのに、頭から最後まで読み終えた今、「ぬえの密室」のことで頭がいっぱいになっている。他の小説のことは全部抜け落ちてしまった。この本当っぽい短編、すべて実在する登場人物たち、いったいこの短編(のアイデア)は存在…

レンタルなんもしない人「レンタルなんもしない人のもっとなんもしなかった話」961冊目

この続編が出ると聞いて、そういえばこの2冊目読んでなかったと思って読んでみました。やっぱり面白いな~ この頃からTwitterをフォローしてて、ドラマ化されたときもドラマと並行してツイートを読んでたので、臨場感あります。でも見てなかったネタも多い(…

吾妻ひでお「失踪日記」960冊目

「ルポ路上生活」の中で何度も言及されていたので、これも読んでみました。吾妻ひでおの描く女の子ってすごく可愛いなと子ども心に思ってたけど、ちょっとお下品系のエッチなマンガや、逆にすごくとんがったSFはまだ理解できなくて、普通の学園ものとかずっ…

芸術新潮2023年5月号「追悼総力特集 坂本龍一」959冊目

雑誌の感想を書くのも変なかんじですが・・・この特集は素晴らしかったです。編集者も寄稿者も祈りを込めて作っていたと思うので、この特集が「追悼特集」となってしまったときの落胆や悲しみまで見えてくるようです。 アート関連の雑誌って「美術手帖」とか…

「山口雅也の本格ミステリー・アンソロジー」958冊目

この本って・・・本物の暖炉がある、昔ながらの居心地のいいホテルの談話室みたいだ。ホテルの経営者と職員とで長年丁寧にメンテしてきて、そういうのが好きなお客さんしか来ない。そこに集う人たちには暗黙の了解があって、ずっと守られている暖かい親密さ…

國友公司「ルポ路上生活」957冊目

すごく面白かった。考えさせられたというより、自分の物差しが一瞬グラっとした。それと、この実験は誰かがやってみる必要があったので、やってくれて本当に感謝するし、この経験は広くいろんな人に見てほしいと思う。 特に、路上にいる人たちを怖いと思って…

呉勝浩「爆弾」956冊目

読ませるね~~、さすが「このミス」1位。 リアリティとか考える隙を与えず、とにかく先を急がせる。夕方から夜中にかけて一気に読み上げてしまいました。爆弾の詳細や設置方法を饒舌に語ったりしないところがいいんじゃないかな。最近のエンタメ小説は科学…

朝吹真理子「きことわ」955冊目

日曜美術館を見ていたらこの著者がマティス展で感想を述べていて、そういえばこの人の本を読んだことがないわと思ったので、読んでみました。これが2011年の芥川賞受賞作。 すっごく繊細な文章。書いている人と登場人物の感受性の強さに、自分まで神経が研ぎ…

ブレイディみかこ「ジンセイハ、オンガクデアル」954冊目

「ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー」で著者を知ったので、それより前、2010年代に書かれたエッセイ集はちょっと過激で面白いです。2022年の「両手にトカレフ」で、内に秘めた激しさを見た気がしてたけど、今に始まったわけではなくて、上へ突き…