坂口安吾「不連続殺人事件」968冊目

坂口安吾は「堕落論」の人、という印象が強かったけど、日本屈指のミステリーを書いていた!という話を聞いて、ワクワクしながら読みました。

戦後すぐの日本の文壇は、こんなに乱れていたのか・・・?と思うほど、異常に入り乱れた愛憎関係。それがとある山奥にある豪邸で繰り広げられます。表現が豊かで、特に感情の起伏の激しい女性たちの言葉遣いや行動がリアルに、なまめかしく、目の前に迫ってくるようです。最後までスリリングに面白く読めました。

でもこのトリックの穴、何度か見たことがある気がする・・・この後のテレビドラマとかで、この作品を踏襲した作品がいくつも作られたんじゃないかな・・・と思って調べたら、私この作品が映画になったのを見てました。ちょうど10年前。映画化されたのは1977年。かなり大げさな描き方だなと思ったのを覚えてます。(実際、原作でも登場人物は芝居がかったセレブ気取りの人々なんですが)人が多すぎて混乱した記憶も・・・。でも原作を読むかぎり、人間心理が完璧に自然な形で発露していて、(ああ、そういうことなら納得できる)と感じます。その辺が、私の好きなアガサ・クリスティのよう。現実の犯罪って、この作品みたいに、「毒を仕込めたのは一人だけではない」ことが多いだろうと思うので、「誰が人を殺すほどの思いを持っていたか」を追求することで解決に近づけそう。そういう意味で、確かに名作ですね。

今この作品U-NEXTで見られるようなので、映画の方も見直してみよう・・・。