エルヴェ・ル・テリエ「異常 アノマリー」1267冊目

どこかで推薦してたんだろうけど、いい具合に忘れていたので、まっさらな状態で読めました。これ、正解。第一章が終わるくらいに異常現象が明らかになって、ああそういことか、と。

その、この本の骨となっている異常現象を、私たちが読む機会の多いアメリカの作家なら、ひたすら盛り上げて科学的っぽい根拠とかも示して、…となりそうだけど、こちらはフランスです。皮肉や悲観を好み、安易な結論を避ける議論好き…というフランスのイメージを裏切りません。(※すみません、すべて私の独自研究による偏見です)

最近テレビでフランスのドラマ「アストリッドとラファエル」を見てたんだけど、すごく面白くて。これも視覚要素が伴うとさらに面白くなりそうなので、映画化してほしいなぁ。「タワーリングインフェルノ」みたいなパニック群像劇の名作になりそうです。

 

多和田葉子「白鶴亮翅」1266冊目

とても面白かった。視点がユニークな日本の中年女性が、ベルリンでいろんな国から来た人たちと、いろんな交流をする中で、語るに足る面白い経験をする。

でもなんかエッセイみたいな小説ですね。幻や幽霊や、いろんなものが出てくるけど、みんなふらっとやってきて、すっと去っていく。私はこの著者より少しだけシリアスな人間なのかな。

語り手がやってる太極拳は日本でも一番ポピュラーな楊式24式というやつなのかな、その太極拳にも「白鶴亮翅」という動きがあるらしい。最近とつぜん太極拳にはまって、ひどいときは週に4回も道場に通っていて、やっと白鶴亮翅も覚えかけたところで、このタイトルを見て、読まずにいられなかった…というのがこれを読んだ理由でした。

今日もたくさん失敗したし、意識すればするほど下手になる気がするけど、たぶんこういう時期があるもんなんだろうと考えて、明日もまた道場に行く予定です。(日記かこの感想文は。)

白鶴亮翅

白鶴亮翅

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西尾潤「愚か者の疾走」1265冊目

映画「愚か者の身分」を見たあと、この3人のその後が気になって仕方なく、原作のほうには続編がある!Audibleで今すぐ聴ける!ということがわかったので、即聴(そんな言葉あるんだろうか)。

他の人の感想を見ても、「さらにまだ続編がありそう」という人が多く、私もそう思いました。かなり危険なことはこの本でも3人に起こるんだけど、どんな形でも、生きている限り、明日は来るわけで、それを希望と感じてもいいんじゃないかと思います。

とにかく生き延びる。いつか死ぬけど、死に方は選べないけど、死ぬまでは生き生きと生きる。悪の中にいて自分を見失わず図太く生き抜く主人公のキャラクターって、私は映画とかでもいつもまぶしく見上げてるのですが、映画でもいますよね…たとえば「トレインスポッティング」のレントンとか、ダニー・ボイル監督の映画の主人公ってそういう人が多いような。

映画のあとの物語、たっぷり満喫できて満足でした。

 

藤川大樹「ルポ特殊詐欺無法地帯 ミャンマーに潜む犯罪集団に迫る」1264冊目

ミャンマーには行ったことがないし、ミャンマー料理も納豆チャーハンくらいしか知らないけど、ミャンマー人にはたくさん会ってきた。明るくて強い目でまっすぐこちらを見て、主張を伝えることができる、物おじしない若い人たち。容貌や肌の色はいろいろだった。

彼らの近くに、悪や争いや死、詐欺や不正やお金、いろいろなことがあることがなんとなくわかるけど、何も知らないので読んでみました。が、民族や地名がたくさん出てくるし、近隣諸国との関係性も地域や民族ごとに違うし、それがどんどん移り変わっていくので、難しかったです。

なんであの精悍な若い人たちが命がけで仲間たちと争うような事態に陥ってるのか、どうすればいいのか。日本に来ることは兵役から逃れる必要に迫られてのことかもしれないけど、いつまで本当にいられるだろう。大学や大学院に行こうとする人たちには、あと数年分、お金の余裕があるんだろうけど、真面目によく勉強してるのに学費が尽きそうな人もいた。ああ、切ない。

そうだ、特殊詐欺のことを知りたいんだった。正直、日本に逃れてきた彼らの出身地はほとんど知らない。軍に近い人の中にも、子どもたちを戦地に送りたくないから日本に来させてる人とかいるかもしれない。出自がさまざまな人たちは日本で出会って、お互いをどんな風に思ってるんだろう。同じクラスの他の国から来た人たちの、母国に対する犯罪にかかわったことのある人はいるんだろうか。いないんだろうか。そもそも何で日本なんだろう。どんどん円は安くなるし、安くて平和で治安のいい島で暮らそうと思って来てる人も多そうだ。安いって思われるのは、ちょっと残念…。

いい本だと思うけど、まだまだわからないことだらけです。

 

笹田久美子「鍼灸師・マッサージ師・柔道整復師になるには」1263冊目

いや、ならなくてもいいんですが。

私は腰や関節が悪くて長年ハリに通ってるのですが、自分でもちょっと勉強してみようかなと思って本をあさっています。この本を読んで、はり師・きゅう師・あんま師・柔道整復師の違いがわかったし、結局のところ3年間けっこうなお金を払って資格を取らないかぎり、たとえ自分自身にも鍼灸のハリを指すことは許されない、ってこともわかりました。引き続き調べてみます。

 

江國香織「ぬるい眠り」1262冊目

困った。読むのがつらかったし、読み終わってひとつもさわやかな気持ちになれない。女性の主人公が複数というか不特定多数の男性と交際していて、それが普通だと思っていることを小説の中でやんわりと主張する小説が、かなり苦手。こういう小説は今はとても少なくなっていて、バブルの頃の特徴だと思う。この頃の男性向けの小説ではもっと、姿のいい女性を片っ端から金品で釣る裕福で若くない男性がたくさん描かれていて、その反発でこういう小説が書かれた、という面もあるのかな。いまは性愛があまり話の中心にならなくなっているとも思う。

そもそも哺乳類が交配によって子孫を残すのは当たり前で、人類が交配を行っている姿は、排せつと同様、人間の美的感覚にはずれることなのに、そこをスルーして自分がきれいだとか楽しいとか思える部分だけを取り出して他を黒く塗りつぶすのが、この中の主人公も「自分しか愛せない」というようなことを言っているとおりの利己的な主張に見えてしまう。

相手が多いから、既婚者だから、こんな風に思うというより、人をアクセサリーみたいに扱うから。人が人の体に触れることは”気”を通わせることで、そこに相手を思いやる気持ちがなければ、たぶん気持ちよくないし、そんなことならしない方がいい。下手なマッサージ師にかかるくらいなら、風呂につかって早寝した方がましだ、というのと同じ。

とか批判するほど私は人を大切にしてきたか?若くてエネルギー過多だった頃は、相手を泣かせたり傷つけたり、何度も何度もしてきたと思うけど、そういうのを後悔してるからこんな風に感じるのかな。17歳でこれを読んだら「この主人公きっと素敵な人なんだろうな。たくさんボーイフレンドがいていいなぁ」くらいに思ったかもしれない。だいたい、感情が激しく動くときは、なにか自分の昔の傷に関係があったりする。克服しきれてないから反応してしまうのかも。

今、私以外の人たちは、こういう小説をどんな目で読むんだろう。本を持ち寄って読み合うような会にも参加してみたいんだけど、(映画と違って)たくさんありすぎて見つけられない…。

 

堀田秀吾「科学的に証明されたすごい習慣大百科」1261冊目

話題性のあるちょっとしたハウツー本かなと思ったけど、巻末にすごい量の参考文献リストがあって、思いのほか真面目。仕事、勉強、運動と睡眠、コミュニケーション、メンタル、生活と分類されていて、全部読み通すより、「最近xxがうまくいかない…というときに、そこだけ読んで1つだけ選んでやってみる、みたいな使い方ができそうです。

実験結果がたくさん載ってるので説得力強い。ただ、日本人的な文化について国内の調査結果を引いてる箇所もあれば、欧米の結果を引いてるのもあるので、たとえばコミュニケーションとかでローカル文化に強く根差してると思うことに関してアドバイスが欧米の結果から来ていたら、読む人なりにある程度割り引いたり足したりする判断をしてもいいかも。

とりあえず私は、寝る前にスマホをいじるのをどうやって止めるか、この本を見ながらちょっと真剣にいろいろやってみますよ…。