これが「平場の月」を書いたのと同じ人の作品だなんて、なかなか結び付きません。あの小説は、中高年のしずかな恋愛を描いたしみじみと読まれそうな作品でした。こっちは「ババヤガの夜」とか「ハンチバック」とかの仲間って感触があるんだけど、思い返してみると「おしん」のような不遇な生い立ちの女性の成長物語でもあります(なんてざっくりとした分類だ、失礼な)。
ただ、著者とそれほど年齢が違わない女性である私としては、どちらも関心範囲を書いてるなという感じがあって、そういうわけで両方読んでるわけです。
前半は差別を受けたり虐げられて当然、と扱われる女とその周りの女たちの物語なんだけど、後半は彼女たちが団結する場面もみられます。
重い病気のあとに皮膚に症状が残ってしまった主人公を”てごめ”にする男。彼の言い分の中で、見た目だけでなく「賢さ」も差別要因として挙げられてるのがとても興味深いし、今これが書かれる必要があった、という気もしています。平均より劣っているから、のほかに、例えば目立つ美人だったり成績が一番だったりお金持ちだったりということでイジメを受ける人はかなり多数いると思うので。コンプライアンスがうるさく言われるこの時代に、いろいろな平均以下の要因で人を攻撃すると自分が悪い人みたいで気分が悪い。弱い者でなく強い者なら気持ちよく、良心の呵責なく攻撃できる…という状態にある人が、ネットには大勢いるように思います。そして、攻撃される側は、保護を求めにくく理解を得られにくいこともあるんじゃないかと心配です。
「強い」作品だな、と思います。エネルギーを感じます。諦めない主人公とその周囲の女性たちに共感をおぼえます。若干、内容も使われている語彙もユニークで、とっつきにくいと感じる人はいるかもしれません。私はAudibleで聴いたのですが、むしろ漢字表記を意識しない方がすっと頭に入ってくる部分もあったかも。
ナレーターの寺田早輪子さんが非常にうまい!女性が大勢出てくるのに、全部声色だけで誰だかわかるんですよ。主人公は冷静沈着で知的な女性だけど、素朴なお手伝いの人たちもまるでその人が話してるよう。そういう彼ら彼女たちの純真なやさしさや愛情にうるっとくる場面もあったり。ほんとに語り手って大事だし、この作品はこの方が語ってくれていることであえてAudibleで読む価値を上げてると思いますよ。おすすめです。






