本)全般・その他

佐々涼子「夜明けを待つ」1021冊目

この人の文章ってすごくきれい。母親が少し上から見下ろしてるようで、やさしくて正しい。なんとなく、佐々涼子ってきっと、すごくきれいな声の人なんじゃないかと思う? 死がちかづいてくるから死を思うのかな。私はいつも死にそうだった母のことを見てたか…

國友公司「ルポ歌舞伎町」1012冊目

あー面白かった。著者のTwitterで、この本がAmazonプライム会員なら「読み放題」(つまり追加料金なし)で読めることを知ってすぐにKindleにダウンロードし、あっという間に読み切ってしまいました。 この人の本は、やくざの世界をやたらと残虐に、あるいは…

木下洋一「入管ブラックボックス」990冊目

渋谷区の図書館の入荷を待ってすぐに予約を入れたけど、なかなか順番が回ってきません。一方たまたま立ち寄った新宿区の図書館で、「新着図書」コーナーに誰の予約も入っていないこの本があったので、すぐに借りてきました。あとで調べてみたら、渋谷区の所…

高野秀行「幻獣ムベンベを追え」989冊目

とうとう高野さんの原点にたどり着きました。早稲田大学在学中に行ったコンゴの怪獣探索の旅。 これもいちいち何もかも面白い・・・けど、目的にやはり共感できず、「納豆」ほど熱中して読めなかったな。(※納豆に熱中するほうがマトモだと言うつもりはない…

高野秀行「怪獣記」984冊目

一日一高野秀行。 けっこう何冊も読んでるけど本来の本業?といえそうなUMAものは初めて。これ、他の本と比べるとあんまり私には刺さらなかったな・・・。なんでかというと、UMAにあまり興味がないから。私から見ると、UFOもUMAも存在するかしないかわからな…

高野秀行「ワセダ三畳青春記」983冊目

一日一冊、この人の本を読んでる。 これも面白かったなぁ~。のちに彼の妻となる人が彼の文章を「あなたの書く文章はすごく『粋』よ」と素敵なほめ方をしているように、この人の書くものは、どんなに汚いものを書いても不潔じゃないし、愛があるというほど大…

頭木弘樹「NHKラジオ深夜便 絶望名言」970冊目

この本は素晴らしい! 世の中って、なにかネガティブっぽいことを言うことがタブーのような”空気”が強くて、そうなると常にポジティブであれという重圧に耐えて笑い続けなければならなくて、もう生きていること自体が辛くなっていく、というおそろしい悪循環…

國友公司「ルポ路上生活」957冊目

すごく面白かった。考えさせられたというより、自分の物差しが一瞬グラっとした。それと、この実験は誰かがやってみる必要があったので、やってくれて本当に感謝するし、この経験は広くいろんな人に見てほしいと思う。 特に、路上にいる人たちを怖いと思って…

ブレイディみかこ「ジンセイハ、オンガクデアル」954冊目

「ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー」で著者を知ったので、それより前、2010年代に書かれたエッセイ集はちょっと過激で面白いです。2022年の「両手にトカレフ」で、内に秘めた激しさを見た気がしてたけど、今に始まったわけではなくて、上へ突き…

ブレイディみかこ「女たちのテロル」834冊目

今「テロ」と呼ばれている行動は、昔の日本では「テロル」と呼ばれてた。たしか。このタイトルの「テロル」は彼女たちの活動がテロルと呼ばれていた頃の呼び名なんだけど、「テロ」とするとちょっと過激に見えるので、テロルとすることで少し手に取りやすい…

鈴木大介「ネット右翼になった父」928冊目

なかなかの問題作じゃないかと思う。晩年急にネット右翼だけが使う特殊なスラングを使い始めた父を嫌悪した著者が、父の死後に「なぜそうなったのか」を調査するうちに、問いが「本当はそれほどのネット右翼ではなかったのではないか」「なぜそう思い込んで…

佐々涼子「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」922冊目

震災で東北の製紙工場が被災し、雑誌の紙のストックが印刷会社の倉庫にあと1,2ヶ月分しかない!と、取引先の出版社が紙を探して奔走してたことを覚えてます。結局、いつものクリーム色と違う真っ白な紙でその雑誌を印刷したのでしたが、その紙を使ったの…

村田喜代子「偏愛ムラタ美術館【発掘篇】」917冊目

敬愛する村田先生の美術もの、3冊目。書かれたのは2番目かな。【展開編】を読んだ1年前は、アートに食傷して「No art, no life」しか見なくなってた時期でした。その後、建築から再開し、最近は美術館にもたまには行くようになったけど、毎月上野に出かけて…

佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」915冊目

一昨年「一万円選書」に当選した際に選んでいただいた本のひとつなのですが、図書館で予約した本は急に届いてすぐに返却期限がくるので、つい優先して読んでしまい、せっかくの一万円選書はずっと本棚で待たせてしまっていました。しかもこの本は、同じ著者…

小松みゆき他「動きだした時計 ‐ベトナム残留日本兵とその家族」889冊目

年老いたお母さまを自分が住むベトナムに連れて行って暮らすことを中心に書いた「ベトナムの風に吹かれて」を前に読んで、すごいチャレンジだと思った。私が大げさに考えすぎてただけかな?それより、前は見逃してたのかもしれないけど、この本を読んで、小…

近藤麻理恵&スコット・ソネンシェイン「Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる」875冊目

3冊目は職場です。会社員の頃の私の机は常に散らかってました。「ぐちゃぐちゃ」ではなく、B4くらいの作業スペースの周囲を、重ねただけの書類の高い塔が取り囲んでいて、机の下は膝が入るスペースだけを空けた紙袋の海。少ない荷物、何もないデスクに憧れて…

近藤麻理恵「人生がときめく片づけの魔法2」874冊目

「1」を読んだとき、「100%同意するけど、洋服のたたみ方とか引き出しの整理のしかたとか、文字だけじゃわからないなぁ」と思ったら、その辺を図解した本がちゃんと続編として出てました。1を理解した人には、片付けコンサルタントか、いなければこの本が…

東田直樹「世界は思考で変えられる」834冊目

最初は自閉症の人の内側の気持ちが知りたくて読んだけど、この人の文章が好きになって何冊か読んでます。反射的に人とうまくやれる人は深く考える必要がないかもしれないけど、不器用な私は、なぜうまくいかないのか考える。そんなときに、考え続ける東田さ…

ブレイディみかこ「This Is Japan 英国保育士が見た日本」828冊目

「ぼくはイエローで・・」で去年この著者の本を読むまで、うっすら名前を聞いたことがあるだけで全然知りませんでした。同い年で同じころにロンドンパンクにはまったところまでは同じだけど、私の親はぎりぎり私を大学に行かせてくれて、その後の道は違って…

神田松之丞(聞き手 杉江松恋)「絶滅危惧職、講談師を生きる」825冊目

面白かった。一人の男の生きざまとして読み応えがありました。テレビとかで見てると、ギラギラしていて貪欲に何かを追い求めてるようで、圧がすごいちょっと怖い人みたいに思ってました。人の話はちゃんと聞いてみるものだ。本当に師匠に心酔し、落語と講談…

角幡唯介「空白の五マイル」816冊目

同じタイトルでこれがミステリーだったら、苦労を重ねて命を危険にさらしながら「空白の五マイル」の全エリアを最初に踏破した冒険者が、最後に桃源郷のような光景を目の当たりにするような絶頂感を味わって終わるのでしょう。最近気軽にミステリーも何冊か…

永井玲衣「水中の哲学者たち」815冊目

哲学って「いかに生きるべきか」を難しい顔で死ぬまで考え続ける学問?(違ってる気もする) この本の中で、小学生が「人はなんで死ぬか」といったテーマを好んで選ぶと書かれてるけど、私も小さいころずいぶん考えて、「人生はつぶすためのヒマである」って…

古川安「津田梅子 科学への道、大学の夢」804冊目

脚注や参考文献だけで全体に1/5くらいはありそうな、学術書として発表されたけれど、伝記として読むのも正しい本です。 重要なポイントは、今までの津田梅子の伝記は、梅子の側の人間が彼女を中心として調査したものだったのに対し、この本は科学史を専門…

藤本シゲユキ「幸福のための人間のレベル論」802冊目

思えば私にも、どうすれば男性に好かれるか?どうすれば素晴らしいパートナーを見つけて幸せになれるか?と考えて悩んで、相性占いに凝ったりそういう指南書を読んだりした時期があった。不幸から抜け出せない親のことで悩んで、とことん付き合ってどんどん…

萩尾望都「一度きりの大泉の話」793冊目

2021年のお正月に放送された「100分de萩尾望都」を見て以来、彼女の作品を片っ端から読んで(あるいは読み直して)、その流れで気になっていたこの本を、今日やっと読みました。 萩尾望都の作品世界は、とても深い。情緒がきわめて繊細だと思う。一方で本人…

カルロ・ロヴェッリ「時間は存在しない」772冊目

哲学の本のようなタイトルだけど、科学の本。太陽が地球を回っているのではなく、地球が太陽を回っている…というパラダイムシフトをはるかに超える(今の私たちにとっては、だけど)、時間は地表のほうが山頂よりゆっくり流れているという”事実”からこの本は…

高野秀行「腰痛探検家」770冊目

冒険や納豆の本を何冊か読んでいる高野秀行氏の、今回は腰痛に関する本。冒険談にはいつもおおいに驚嘆し共感し楽しませていただいているんだけど、腰痛も共感…私も頸椎と腰椎にヘルニアがあって(脊柱側弯のせいもあるかもしれないけど)、ぎっくり腰になっ…

藤原マキ「私の絵日記」769冊目

つげ義春の妻が書いた絵日記(故人)。村田喜代子の本に出てきたのが気になって、読んでみた。 なんとも生き生きとした絵、屈託のない文章。楽しいときとつらいときがあるので、「面白かった」という気持ちではないけど、なんとも言えず、この素直な生活感が…

吉野源三郎「君たちはどう生きるか」762冊目

一度読んでみようと思ってた本。書かれたのは1937年、昭和22年。第二次大戦前夜の日本で、児童文学者である著者が少年少女たちに強く働きかけたかったことが熱く、かつ静かに語られた、美しい本です。昔の映画みたいな真剣な倫理観が、戦前ではなく戦後の作…

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」755冊目

すごく面白かったエッセイ集の続編。 面白い、というだけじゃなくて、居心地の悪さや切なさ、申し訳なさがオブラートにくるまれることなく、そのまま示される。本当のことが見たい・聞きたい、という欲求も、楽しみたいという欲求と並んで、誰にでもあるのだ…