國友公司「ルポ路上生活」957冊目

すごく面白かった。考えさせられたというより、自分の物差しが一瞬グラっとした。それと、この実験は誰かがやってみる必要があったので、やってくれて本当に感謝するし、この経験は広くいろんな人に見てほしいと思う。

特に、路上にいる人たちを怖いと思っている人たちに、あるいは彼らを哀れに思っている人たちに。今後の生活に不安を抱えている人たちに。都内各所でお弁当を配っている人たちに。

大学院の指導教官から口をすっぱくして言われたのは「原典に当たれ」ということだった。また聞きを信じるな、惑わされるな。できることなら、書いたものを読むより、現地へ赴いて直接聞け。

私は去年からときどき、この本にも出てくる都庁下の食料配布を手伝うボランティアをやっていて、彼らが都内のあちこちのお弁当を日替わりでもらって食べていることは知っていたけど、ネット上にたくさんある「食料配布リスト」を見ても、本物の彼らには一ミリも近づけない。相談窓口に来る人たちは、食う・寝る以外の困りごと(病気など)を抱えているけど、来ないで食料をもらって帰る人たちの中には、今の生活を変えたくない人も多いと聞いている。誰かが何らかの事情で自分を探しているとか、人間が嫌いだとか、割と理由がはっきりしているのかなと思ってたけど、なんとなく路上で暮らし始めて、それがまあまあ快適という人もいるのかも、ということがわかってよかった。

なんというか、家があってもなくても、困っている人は困っているし、困ってない人は困ってないのだ。知らなかったことを知れてよかった。

ボランティアやスタッフの中には、彼らをすごく憐れんでいる人もいるかもしれない。この本を読んでショックを受ける人もいるかもしれない。

この本を読んで「マスコミに騙された」と言い出す人もいるかもしれない。そろそろみんな、「マスコミも何も知らない」ことに気づいてない振りをするのは辞めなきゃ、と思う。本当のことを知りたいと思え、知りたければ直接言って話せ。自分の判断や生き方を人のせいにするのはもうやめろ。って思う。

でも、同情を引いたり過剰に反応したりしながら、持ちつ持たれつしてるのが社会なのかもな。そういうのに関係なく一人で生きるようになると、この著者みたいに単独の思い切った行動が多くなるのかもしれない。(私もかな)

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