2009-01-01から1年間の記事一覧

高樹のぶ子「透光の樹」193

なんとなく引き続き女性作家もの。官能ものとか言うと怒られるのかな。 共通点は裏表紙のあらすじに「肉」という一語が官能を表すものとして用いられている点。そこが嫌いだ!(嫌いなのは作家じゃなくて編集者かも) いや、もともとこの作家は好きなほうでし…

小池真理子「虚無のオペラ」192

例によってパパ'sライブラリから。 著名な日本画家の裸婦モデルをしている主人公も、もう46歳。彼女は盲目の妻をもつ8歳年下のピアニストと不倫してきたが、ついに別れを決意する。その理由は彼の妻の妊娠でも画家の自殺未遂でもなく、だんだん細っていく自…

佐藤正午「小説の読み書き」191

この本は小説家佐藤正午が、若かりし頃に読んだ歴史的な名作小説をあらためて読み直し、コンテンツではなくその文体表現に着目して表現の裏にある著者の意図を読み解こうとする・・・という本。読書のすすめなのか、小説を書くことのすすめなのか、どっちも…

佐藤正午「5」190

解説には「中年夫婦がかつての愛を取戻し・・・・・著者の最高傑作」と書いてあるので、まさかあのシニカルな著者が正統派感動的恋愛小説を書くことにしたのか?と思ったら、やっぱり違ってた。しかしエンディングは決してシニカルではありません。愛とスー…

佐藤正午「Y」189

連続3冊目。この本の初版は1998年、「ジャンプ」(2000年) の一つ前の長編小説です。ジャンプもミステリーだけどあっちはSFの領域には踏み込んでない一方、こっちはちょっと踏み込んでるので、読み進むうえでちがう心構えが必要かも。 感想:スリルとサスペン…

佐藤正午「ジャンプ」188

2000年の作品。デビュー作「永遠の1/2」以来のベストセラーで、2004年には映画化もされたらしい。気づかなかったんだろうか、私。 ストーリーは、(サワリだけでもそそる)出張前日に彼女のアパートに泊まることにした男のために、彼女が朝ごはんのリンゴを…

佐藤正午「Side B」187

若いころ、好きな作家を聞かれると村田喜代子と佐藤正午と答えてました。幡ヶ谷に住んでた頃かな。 その後x十年たちましたが、二人ともずっとゆっくりとしたペースで小説を書き続けていて、ときどきベストセラーになったり、「文章の書き方」の本を出したり…

中村伊知哉「『通信と放送の融合』のこれから」186

Q:この人は何なんだろう? A:京大出の元官僚で、その後MITや慶応の教授になった人。ただし「少年ナイフ」というパンクバンドのディレクターをやっていたことがある。 世間的にはこの「ただし」以下の意味がわかる人の割合は少ないのかも。”ポップカルチャー”…

立花隆・佐藤優「ぼくらの頭脳の鍛え方」185

“俺らお前たちなんかより頭いいんだよ、無理だと思うけど真似できるもんならやってみな”と、私はこのタイトルを理解しました。でも買ってみた。面白かった!ブックリストかと思ったら“俺なんかこんな面白い本読んじゃってんだぜ”“俺なんかもっともっと凄い本…

八代英輝「コンテンツビジネスによく効く著作権のツボ」184

最近ちょっとこういう世界から遠ざかってるなーと思って、できるだけ新しい著作権の本を図書館で探してこの本を見つけました。2006年発行だけど、著作権法は変化が早いから、事例はすでに懐かしく感じます。 表紙を見るとかなり初心者向けっぽいけど、中身は…

山本七平「日本人の人生観」183

大学院の先生が、これ読みなさいとくださった本。S先生、ありがとうございます。 この本の第一刷は1978年。2005年の時点で第34刷を数えるベストセラーです。著者は1921年生まれの著述家で、1978年は著者にとって第二次大戦終戦が人生のちょうど真ん中、つま…

ダナ・フレンチ「悪意の森」上・下182

アイルランドの作家の2007年のデビュー作。US、UK、IREで数々の賞を受賞したと帯に書いてあるので、ためしに買ってみました。 「森」は精神の深淵の象徴でもあり、最初から心理描写が中心なので、読んでいて息苦しくなってしまうんだけど、デビュー作とは思…

山口雅也「生ける屍の死」181

この本ずっと読みたかったの。読者ランキングとかで1位2位という名作らしい。 主人公は「革ジャンと革パン、安全ピンだらけのTシャツを着たパンク探偵(苦笑)」ってシド&ナンシーかよ。細田和也「作家の値打ち」で激賞された作品ですが、このベタベタな設定…

宇野重規「トクヴィル 平等と不平等の理論家」180

いやーこれは良い本だ。常に「原典に当たれ」という教授があえて推す評論だけあります。著者の調査力、分析・洞察力もさることながら、平たい言葉で説明する能力がすばらしい。現代アメリカの背景についてちょっとでも考えることのある人は、一度読んでみる…

探偵Xからの招待状! 179

あーあ読んじゃった。 現在NHKで放映中の「探偵Xからの招待状 Season2」が現在ちょうど推理結果受付中。Season1は見逃してたのですが、今日書店に長居したときに文庫本化されたものを見つけて買って、さっそく読みました。 8人の作家の短編小説を携帯小説と…

北方謙三「煤煙」178

ななめ読みしただけです。すみません。 「ハードボイルドって何が面白いんだろう」あるいは「何がかっこいいんだろう」と疑問に思う。ハードボイルドの中の男たちは"ニヒル"だがなぜか女に困らず、別れた妻や娘は彼を追いかけてくる。そのほかになんとなく愛…

逢坂剛「牙をむく都会(上)(下)」177

逢坂剛の時代物も家にあって、読みかけたんだけど途中でギブアップ。 よほど丁寧にやさしく書かないと、今と言葉が違うから読み進むのがツライんだなぁ。今まで読んで感想を書いてきた時代物の著者の人たちをますます尊敬します。 で、上下2巻だけどこっちを…

「佐藤可士和xトップランナー31人」176

UOMOという雑誌に連載された、佐藤可士和自身による、彼が希望した相手とのインタビューをまとめたもの。オーラの強そうな31人が堂々と並んでいます。だって・・ ビジネス系ではユニクロの柳井社長や勝間和代、音楽では矢沢栄吉、アート系では假屋崎省吾、蜷…

逢坂剛「銀弾の森・禿鷹3」175

これシリーズものなんだ。ハゲタカと呼ばれる史上最強(最凶、とかいうとハードボイルドっぽい?)の悪徳警官が、欲望のままに暴力団や女を転がす物語。 転がして何が楽しいのかさっぱりわからないので、この小説の面白さも全然わかりませんでした。破壊して…

逢坂剛「情状鑑定人」174

練られたプロットの短編集。初期の作品集らしいんだけど、短編集であるということも、初期の作品だということも、読んで初めてわかる。出版社のこの作家の担当の方、そういうことわかるように外に書いといてください。重ね重ね。 感想ですが、どの作品もどん…

山本一力「深川駕籠」173

旅のつれづれに読むために何冊か持参。でも、最終日にしてまだ仕事に追われてやっと1冊読んだだけ。。。(この手の本の出所である父は最近図書館行きを覚えたらしく、蔵書はまったく増えてませんでした) でこの「深川駕籠」ですが、文字通り駕籠かきの若者…

村田喜代子「人が見たら蛙に化れ」172

ミスドで読んでたらコーヒーをこぼしてしまった!せっかく古本じゃなく新品で買ったのに、、、 さて内容について。 私のいちばん好きな作家の比較的新しい作品です。ひじょーに達者かつクレバーで、しかもコンシューマ的に自分の作品に対して厳しいrequireme…

宮永博史「理系の企画力!」171

ここではおなじみ、宮永氏の新著です。今回は祥伝社新書、喫茶店コーヒー1杯で読める分量。でもでも中身は新ネタのテンコ盛り、かつ十分掘り下げてまとめられているので、今までにも増してお得感たっぷりの1冊。 まだまだ新しい本が書けそうなこの著者のす…

樋口泰行「変人力」170

「愚直論」を読んだ後に買ったんだけど、読んでなかった気がするので予習(何の?)のために読んでみた。 感想:・・・もう読んだ気がする。でも「愚直論」を見直してみても、重複はない。思うに、おそらく「愚直論」の感想に書いた講演会で聞いたはなしと重な…

逢坂剛「砕かれた鍵」169

・・・なるほど。こう続くわけか。(←感想) で、その後は?・・・と、ぱらぱら「よみがえる百舌」を読み直してしまった。こっちの方がよっぽど意味深な終わり方をしてるので、「帰ってきた百舌(仮)」もアリなのではないか。 ・・・あっ、あった。百舌は出…

逢坂剛「幻の翼」168

しまった、また読む順番を間違えてた。 「百舌」シリーズはこれが2冊目だったらしい。すでに読んだ「よみがえる百舌」は4冊目!めちゃくちゃ飛ばしてしまった。どうりでヒロインの苗字も違うし夫は死んでるし・・・でもおかしいとは気づかなかったけど・・・…

トーマス・クーン「科学革命の構造」167

とうとう読み終えました。この本買ったのは2年前ですが、内容が難しい・原文も翻訳も表現が難解・引かれている例が専門的すぎ、という三重苦で、半分くらい読んだ後そのままになっていました。 このたびありがたくも、某教授の指導のもと、ほかの人たちが要…

逢坂剛「しのびよる月」166

165の前に書かれた短編集。短編のタイトルが、「しのびよる月」だけじゃなくて「裂けた罠」「黒い矢」etc、まったく正しく内容を表してるんだけど、なんとなく、それだけ見ると実際の内容よりシリアスな印象で、ぴんと来ません。でも気になったのはそれだけ…

逢坂剛「配達される女」165

つかの間の逃避・・・。久々のパパ’sライブラリーから。 「軽ハード・ボイルド」というジャンルだそうです。くたびれたコートを着た男性刑事二人+謎の女性刑事一人が、ときに無茶をしながら、町の事件を次々と解決していきます。昔からの確執あり、ほのかな…

D.A. ノーマン「誰のためのデザイン?」164

ずーっと前に買ってあった本を連休中にやっと読んだ。 「デザインとは」を考える人が必ず読むべき本のように言われている本。 読んだ印象は、アート関連とは思えない、ビジネス書(いかに売れる製品を開発するか、の範疇)ですね。これがアートとビジネスの…