2016-01-01から1年間の記事一覧

石光真清「曠野の花〜石光真清の手記1〜4」413〜416冊目

明治の軍人で、日露戦争前の満州で諜報活動に従事して目覚ましい活躍を残した実在の人物、石光真清の膨大な手記のうち2冊目を読みました。1冊目は生い立ちから諜報活動開始前まで、この2冊目は開戦までの一番スリリングで面白い部分だと思われます。 感想…

川上弘美「センセイの鞄」412冊目

いいお話だった。うんと年上の人を愛するようになるというのが、どういうことか、初めて少しわかった気がする。「センセイ」というのが、じわじわと味の出てくる人物で、月子さんの感情はどこか受け身。高校卒業後10年以上たって再会し、しょっちゅう飲み…

有川浩「阪急電車」411冊目

面白かった。大勢の登場人物のそれぞれが生き生きと愛嬌いっぱいで魅力的。時系列を、阪急今津線というこじんまりとしたローカル電車の各駅に停車しつつ進めていく「群像劇」なんだけど、その工夫や人物造形の魅力だけに止まらない、人生観の深さが感じられ…

山内昌之・佐藤優「第3次大戦の罠〜新たな国際秩序と地政学を読み解く」410冊目

やっと読み切った。最近ロシアや旧ソ連諸国に旅行することがあって、にわかにロシアを取り巻く地政学に興味が出てきてしまった。私が行ったウズベキスタンは、イスラム教徒の多い中央アジアの国だけど、旧ソ連の名残りが強く残っていて、文化の中継地点、混…

村田沙耶香「授乳」409冊目

2冊読んだあとは、タイトルを見ただけでヤバい感がぞわぞわと来る。内容は、やっぱり。この人ってゲイやバイの指向はないけど、性を嫌悪する「アセクシュアル」を指向してるのかしら、もしかして。男性も女性も、性を感じさせるものが同じように嫌い。ちな…

村田沙耶香「殺人出産」408冊目

へー。激しいなぁ、この本は、「コンビニ人間」よりずっと。何しろ、10人産めば1人殺していい、だもんね。ただし、筆致はあくまでも静か。カズオイシグロの「わたしを離さないで」みたいな、残酷さがふつうになっている世界。村田沙耶香って人は常に「何が…

村田沙耶香「コンビニ人間」407冊目

面白かった。ゲラゲラ笑えた。でもこういう、“普通じゃない”人たちの本音をゲラゲラ笑うのって、非人道的なんだろうか。最近、何がpolitically correctなのか、よくわからなくなってきました。 主人公の古倉(36歳女性)もなかなか強烈だけど、ロクデナシで…

辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」406冊目

読み進むにつれて、だいたい筋はわかってるつもりになってたのに、「最後の最後にやってくる感動」というのは本当だった。この涙は、この先自分と自分の母親の間に、新しい道筋をつけるのかもしれない。一時的なものかもしれないけど。 答のないものだから、…

ピーター・シンガー「あなたが世界のためにできるたったひとつのこと」405冊目

タイトルからは何の本かぜんぜんわかりませんね。よく働き効率よくお金を稼ぎ、そのかなりの部分を慈善活動に寄付して、それが実際に大勢の人や動物の命を救っていること、自分たちの将来に確実に効果をもたらしていること、を喜びにすること、また、そうし…

菅野完「日本会議の研究」404冊目

なんか鬼気迫る本でした。私はこういう、隙のない仕事をする人って好きです。世の中のビジネス本や啓蒙書には、少し調べた結果を自由自在にふくらませて、結局のところ自説を展開している、という本が多いといつも思います。面白ければ、趣味で読む分にはい…

村上春樹「TVピープル」403冊目

昔読んだ覚えがある。読み返してみて、息詰まるような感じがした。1980年代の村上春樹は、いまの作品から振り返ってみると、閉じ込められて出られない、だんだん狭苦しくなっていく、出口がない、という印象が強くて、精神的に追い詰められた子どもの絵を見…

佐々木健一「辞書になった男 ケンボー先生と山田先生」402冊目

すごく面白かった。三省堂の「三省堂国語辞典」と「新明解国語辞典」の編纂をそれぞれ主導した、ケンボー先生と山田先生の、辞書に関わるあらゆるエピソードをかき集めて、辞書を版ごとに精読し、浮かんできたヒントを丁寧につなぎ合わせて、ひとつの大きな…

西加奈子「サラバ!」401冊目

苦節1年くらいかな。なにも苦しまずに待ってただけですが、図書館で予約して、待ち人数200人とか80人とかを乗り越えて、先週やっと借りられました。 西加奈子ってそんなに好きだと思ってなかったけど、この小説は熱かった。テレビに出てるときは、わりと甘…

山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」400冊目

私とおなじく中年(ズキッ)の女友達から借りた。彼女も地方都市出身で、この小説には大いに共感したらしい。私も、わからなくもないんだけど、私は後先考えずに田舎を出て、遠くに来ちゃったなーとは思うけど、そのまま出かけ続けているほうだから、「待つ…

萱野稔人・小林よしのり・朴順梨・輿那覇潤・宇野常寛「ナショナリズムの現在」399冊目

これは面白かった。最初の、5人の対談が特に面白い。5人バラバラに見ると、アクが強いな〜〜と思って引くことも多いのに、3すくみ、ならぬ5すくみというか、あっちに偏りこっちに尖っている意見が、大きな円のなかにすっぽり包み込まれたように、生き生…

C.ダグラス・ラミス、姜尚中、萱野稔人「国家とアイデンティティを問う」398冊目

わりと面白かった。この3人が、国家って何よ、国民って何よ、といったことを議論する、わずか60ページの岩波ブックレットですが、それぞれの立場がそのままそれぞれの意見を形成していて、やっぱりいろんな立場の人と話をしないと面白くないなぁ、と実感…

萱野稔人「ナショナリズムは悪なのか」397冊目

津田塾大学に総合政策学部というものができるらしい。社会科学系の学科は国際関係学科しかなかった。そもそも学部が一つだけだった女子大に、いまなぜ新しい学部が。その謎をとくのが、同大学きっての著名教授、萱野稔人ではないかと思って、読んでみました…

ジャニス・P・ニムラ「少女たちの明治維新 ふたつの文化を生きた30年」396冊目

面白かった!津田梅子や山川捨松のことを書いた本は何冊か読んだけど、どれも偉人伝ばかりで、この本は彼女たちの肉声をたっぷり拾い上げていて、ここにきて初めて彼女たちに出会ったような気持ちです。生まれ育ちから渡航、お人形のようにどこに行っても注…

米原万里「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」395冊目

まさかのノンフィクション。まず、ノンフィクションにこのタイトルをつける感覚がすごい。かつて、当代一のエッセイストと呼ばれた故・米原万里の本をちゃんと読むのは初めてです。 まず何が面白いかというと、人物描写が率直でおかしい。”あけすけ”過ぎて、…

児島和男「ナスレッディン・ホジャのお話」394冊目

「ナスレッディン・ホジャ」というのは、日本でいえば一休さんというより吉四六さん。とぼけていて、馬鹿なのか賢いのかわからないトルコのおじいさんなのですが、先日旅行したウズベキスタンでも絶大な人気。みやげもの屋で、このおじいさんのいろいろな場…

中山恭子「ウズベキスタンの桜」393冊目

さまざまな重要任務を歴任してきた官僚・政治家ですが、1999年にタシケントの日本大使館に大使として赴任した直後に、隣国キルギスで現地で働いていた日本人が誘拐される事件が起こったのは彼女のキャリアの中でも特に大きな難局だったのではないかと思われ…

片田珠美「自分を責めずにはいられない人」392冊目

続いてもう一冊読了。「自分を責めずにはいられない人」にも、当てはまるなぁ。がっかり。私の場合は、親から間接的に期待されたり追い込まれたりしたんじゃなくて、明らかに家族のなかで一番困った子という扱いをずっと受けてたんだけど、そういう人たちが…

片田珠美「上手に「自分を守る」方法」391冊目

わりと、ものものしいタイトル。私は、わりと「いいよいいよ」と仕事を引受けては、最後にやりきれなくなったり、「お前が全部悪い!」と逆切れされたりするという悪いクセがあって、わりあい被害者意識も持ちがちだと自覚してる。悪いクセを断ち切るコツが…

堀川恵子「永山則夫 封印された鑑定記録」390冊目

ノンフィクションです。集団就職で上京して、19歳のときに、たまたま手にした米軍の拳銃で、縁もゆかりもない4人を殺害して、裁判の末死刑になった永山則夫という人について、本人の手記を含めて本はたくさん発行されました。これは、最近になって知られ…

東田直樹「自閉症の僕が飛びはねる理由」389冊目

ジャンルとしては、エッセイかな? 「ビッグイシュー」に連載している彼の”往復書簡”で、考えの深い人だなぁと常々思っていたので、単行本を借りて読んでみました。この本は、短い一問一答を集めた形になっていて、自閉症というもの(どこからが”病気”か、と…

佐々木圭吾・高橋克徳「イキイキ働くための経営学」388冊目

新卒3年目くらいまでの若いサラリーマン向けというかんじの、初心者?向けビジネス書。「経営学とは」「組織論とは」といったことを、ざっくりざくざく解説しています。広く浅く、これだけでは「ちゃんと理解すること」はむずかしそうですが、”もやもやとし…

嶌信彦「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」387冊目

近々ウズベキスタンに旅行しようというプランがあって、同行する友人から読めと渡されたのが、まずこの本。旧ソ連から独立したウズベキスタンの首都タシケントで、日本人捕虜が今も名所とされるオペラハウスを建てた話。日本兵の多くが、捕虜というのは辱め…

大江健三郎「日常生活の冒険」386冊目

大江健三郎、はじめて読んだ。なんか恥ずかしい。何十年も前にノーベル文学賞をとってるのに、私はそこそこ本を読むほうなのに、今まで読まなかったとは。 でこの本ですが、読みやすいのになかなか読み進めず、延長に延長を重ねて5週間もかけて読んでしまい…

三島由紀夫「獣の戯れ」385冊目

シリアス純文学の小品。夫婦+若い青年の3角関係の物語ですが、純文学だと登場人物はもったいぶったインテリが無垢な若い誰かをもてあそぶ、こういう作品が多いんじゃないか・・・。ちょっと不思議な耽美にはしっているようで、あまり入り込めなかったです。

ガブリエル・ガルシア=マルケス「誘拐」384冊目

面白かった!手に汗握った!これ実話なんですよ。コロンビアの大規模コカイン密輸業者のドンが、ジャーナリストを多数誘拐して、自分が逮捕されても家族や自分の安全を保証させるための司法取引を政府にもちかけます。実際に誘拐された人たちや家族、関係者…