本)ミステリー

恩田陸「puzzle」896冊目

この作家は、”しつらえ”を作るのがうまいなぁ。ワクワクしながら読み始めて、わずかずつ明かされる謎にドキドキする。この作品に関しては、何重にも重なる複雑な構造があるわけではないのと、映像化しやすいイメージが続くので、テレビのスペシャルドラマみ…

リサ・ガードナー「噤みの家」883冊目

映画ばかり見てると、本を一冊読み切るのってエネルギーとか知力が必要だなと感じる。この本も文庫本で500ページ超。 とても面白かったし、登場人物ひとりひとりに肩入れしたくなる深い造形も、不幸で不運だけど力強く歩いていく姿勢も、とても読み応えがあ…

シヴォーン・ダウド「ロンドン・アイの謎」873冊目

ロンドン・アイができたり、テムズ川岸が再開発されてオシャレな街になった後はほとんど見てない。「テート・モダン」しか知らない・・・。1992年にロンドンのアールズ・コート近くに滞在してたとき、あの駅のどっちを出れば展示場に出られるのか迷ったのを…

莫理斯「辮髪のシャーロック・ホームズ」853冊目

これは面白かった! ツカミが最高ですよね。シャーロック・ホームズものは最近かずかずのリメイクが行われていますが、辮髪は初めてです。 という引きが強くてさっそくページをめくってみると、「序」に昔の中国っぽい意味不明な漢語が並んでいます。くじけ…

セーアン・スヴァイストロフ「チェスナットマン」852冊目

面白かった。翻訳もいいんだろうけど、ぐいぐい読ませる、確かな筆力のある作家だなと思います。 でもね、わたしは猟奇殺人は好かんのですよ・・・この本も、のっけから不必要に残酷な殺人があり、それに根拠を与える積年の恨みつらみが徐々に提示される、と…

スチュアート・マクブライド「獣たちの葬列」838冊目

原題は「A Song for the Dying」、死にゆくものへの歌。一方の邦題はバイオレンスアクションって感じがするけど、内容は原題とも邦題とも違って、クライムサスペンスだった。ただ、警官が悪いヤツや乱暴なヤツばかりで、スコットランドではそうなんだろうか…

アリスン・モントクレア「王女に捧ぐ身辺調査」833冊目

前作につづいてこちらも読んでみました。 1作目は、二人の主役のバックグラウンドを読むのが楽しかったけど、2作目の前半は説明が必要以上に詳しく感じられてちょっと飛ばしたくなってしまった・・・でも、ストーリーがぐいぐい動き始めてからは引き込まれて…

堂場瞬一「ラスト・コード」832冊目

知り合いが読んでいたので、初めてこの作家の小説を読んでみる。 ミステリーというより警察小説かな? 手練れだなぁ。まったく無理のない、流れの良い文章、ストーリー運び。ここまで”引っ掛かり”のない小説も珍しいくらい、面白くするする読める。しかも書…

アンソニー・ホロヴィッツ「ヨルガオ殺人事件」上・下826~827冊目

今回も面白かった。 思うに、①「ミステリーinミステリー」という仕掛けを楽しむための作品だということと、②アラン・コンウェイ作ミステリーにはアナグラム等の言葉遊びが大量に隠されている前提であること がポイントの小説なので、純粋にその部分を楽しむ…

阿津川辰海「名探偵は嘘をつかない」823冊目

先にこの著者の「蒼海館の殺人」を読んだら、スムーズではないけどとっても面白かったので、評判のデビュー作をさかのぼって読んでみました。 これもすごく面白かった。過去の荒唐無稽ミステリーにリスペクトをささげつつ、さらにさらに無茶に無茶を重ねた設…

阿津川辰海「蒼海館の殺人」813冊目

予想外に面白かった。最近、できのいいミステリーを読んでも、トリックの矛盾のなさ(なさです、なさ)ばかりが気になってしまうことが多くて、素直に楽しく読めてなかった気がする。文章はどこか堅くてちょっと読みにくい。動機は謎だけど、犯人像はよく描…

アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」808冊目

「カササギ殺人事件」に続いて、この著者のミステリーを読むのは2回め。 面白かったけど、まぁ作為が多くて作りこんであって、頭が忙しかったです。著者と同じ名前・同じ設定の語り部(”ワトソン君”)が、変な思い込みをしたり間違った推理をしたりして、捜…

山口雅也「落語 魅捨理全集 坊主の愉しみ」800冊目

久々に山口雅也作品を読んでみました。江戸を舞台にした時代(倒錯)ものミステリーです。 ずっと読み続けてるわけじゃないので、小ネタにわからないものが多くて、笑えたり笑えなかったりですが、楽しい短編集でした。それにしてもこの人の作品は小ネタが多…

ジャナ・デリオン「生きるか死ぬかの町長選挙」796冊目

タイトルが気になって読んでみることにしました。原題は「Swamp Sniper」ですって。舞台はアメリカの沼地の小さな町なのでswamp、そこになぜかCIAのスパイがやってきたのでsniperか。日本の題名のほうが引きが強いし、最近の日本の”ちょっと目先を変えたエン…

アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件 上・下」786~787冊目

満足。お腹いっぱい。アガサ・クリスティを読み始めた頃みたいな気分。 「本格ミステリ」ってどういうものなのかよくわからないけど、トリックだけが完璧で動機に全然共感できない作品ほど、「本格ミステリ」って言葉にこだわってる気がする。クリスティの作…

森博嗣「歌の終わりは海」774冊目

ミステリーじゃないシリーズがあったのか…。何も知らずに読んでしまったら”解決編”がなかった。先日読んだ「冷たい密室と博士たち」は、冒頭に現場の見取り図が載ってるいわゆる”本格ミステリ”だったので、頭を働かせる覚悟で読んでしまって肩透かしになって…

ローレン・ウィルキンソン「アメリカン・スパイ」773冊目

オバマ元大統領の「夏の読書リスト」にあった一冊らしい。オバマさんもだしビル・ゲイツの同じようなリストもチェックはするけど、読みたい本が不思議となくて、これがその手のなかで初めてくらいじゃないかな。(いやクリントンの書いたミステリーはこの手…

アンソロジー「街を歩けば謎に当たる」768冊目

6篇の中編ミステリーからなるアンソロジー。 海野碧「向こう岸の家」 実家に戻ってきた女性に、小さいころの記憶がよみがえってくる…。ひきこまれる設定だけど、「小さいころに亡くなった彼女の兄」という設定が伏線だと思い込んで引きずってしまった。 両角…

アンソロジー「街は謎でいっぱい」767冊目

気軽に楽しく読めそうなミステリーのアンソロジーかなと思って借りてみました。ショートショートではなくて、ちゃんと読み応えのある中編5本で、本を5冊読んだくらいの読後感がありますね。 大石直紀「京都一乗寺 追憶の道」 ロマンチックなファンタジー的…

森博嗣「冷たい密室と博士たち」748冊目

森博嗣って比較的新しい作家さんだと思ってた(「すべてがFになる」を読んだのを覚えてる)けど、この2作目が書かれたのは1996年。だからまだ誰もケータイ持ってなくてUNIXでメールを使いこなせるのがサバイバルだったりします。データの運搬は今は亡きフロ…

「あなたも名探偵」739冊目

こういう本大好き。秋の夜長に、こたつみかんでも、コーヒーチョコレート猫でもいいから、最高にリラックスして夜更かしして、楽しみたい時間です。 市川憂人、米澤穂信、東川篤哉、麻耶雄嵩、法月綸太郎、白井智之+の6人が、ガッツリ”Whodunnit”(犯人は誰…

歌田年「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」738冊目

すごく面白かった。「紙鑑定士」「伝説のプロモデラー」という、マニア心をくすぐるプロフェッショナルたちのオタクトークに”ふむふむ、ニヤリ”、「えっ」というようなエピソードの連続。だけど、文章がこなれていて読みやすい。登場人物たちが、美形であっ…

アリスン・モントクレア「ロンドン謎解き結婚相談所」737冊目

新刊リストを眺めていたらこの本を見つけて、タイトルと表紙に惹かれて読んでみました。第二次大戦直後のロンドンの、廃墟の中に残ったビルの4階で”ロンドンで2つめの”結婚相談所を始めた若くて美しい二人の女性。一人は元スパイで、もう一人は夫を戦争で…

サイモン・シン(青木薫・訳)「フェルマーの最終定理」721冊目

あー面白かったー! 本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、…

早川書房編集部・編「早川書房創立70周年記念コミックアンソロジー★SF編/ミステリ編」630~631冊目

早川書房が創立70周年を記念して、過去の「SFマガジン」と「ミステリマガジン」に掲載された、古今東西の偉大なるまんが家の短編と、このために書き下ろしたものをまとめた作品集。手塚治虫に松本零士に石森章太郎に萩尾望都、吾妻ひでおにとりみき…もう、す…

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」615冊目

ミステリーであり、ひとりの女性の壮大なドラマであり、湿地の物語でもあります。 全体的にはファンタジーだと思ったほうが良さそう。親や兄姉に次々に去られて、学校にも行かずひとりだけで自活しながら美しく成長し、学者たちを驚愕させる自然誌のベストセ…

アーナルデュル・インドリダソン「厳寒の町」609冊目

この作家の、日本語翻訳の出てる作品、これで読破だ! 陰鬱な風景、暗くて覇気のない登場人物たち、根深い人間関係が根幹にある犯罪を特徴とするこのシリーズ。今回は移民の人種差別問題に焦点が当たります。 2019年夏にアイスランドで現地ツアーに参加した…

アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」608冊目

これが4冊目。前の3冊にも増して、さらに読み応えがありました。 想像したこともなかった冷戦時代の北欧。アイスランドについ最近までアメリカ軍が駐留していて、ソ連に対する重要な軍事拠点だったことも知らなかった。東ドイツのライプツィヒに、アイスラン…

アーナルデュル・インドリダソン「声」604冊目

この作家の日本語訳、3冊目。このシリーズは書き続けられてて、すでに日本語訳があと2冊出てるようですね。 これもまた、失意のうちに命を奪われた人の人生の物語でした。読んでる最中も、読み終わったあとも、残念な気持ちでいっぱいになるけど、なんという…

アーナルデュル・インドリダソン「緑衣の女」602冊目

これも「湿地」同様、陰鬱で愛と思いやりにあふれた人間たちのミステリー。とても力強い文章で、引きつけられてぐいぐい読みました。湿地のときは、犯人の時系列と操作の時系列を並列にした映画のほうが共感しやすいと書いたんだけど、この本は最初から並列…