本)ミステリー

阿津川辰海「蒼海館の殺人」813冊目

予想外に面白かった。最近、できのいいミステリーを読んでも、トリックの矛盾のなさ(なさです、なさ)ばかりが気になってしまうことが多くて、素直に楽しく読めてなかった気がする。文章はどこか堅くてちょっと読みにくい。動機は謎だけど、犯人像はよく描…

アンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」808冊目

「カササギ殺人事件」に続いて、この著者のミステリーを読むのは2回め。 面白かったけど、まぁ作為が多くて作りこんであって、頭が忙しかったです。著者と同じ名前・同じ設定の語り部(”ワトソン君”)が、変な思い込みをしたり間違った推理をしたりして、捜…

山口雅也「落語 魅捨理全集 坊主の愉しみ」800冊目

久々に山口雅也作品を読んでみました。江戸を舞台にした時代(倒錯)ものミステリーです。 ずっと読み続けてるわけじゃないので、小ネタにわからないものが多くて、笑えたり笑えなかったりですが、楽しい短編集でした。それにしてもこの人の作品は小ネタが多…

ジャナ・デリオン「生きるか死ぬかの町長選挙」796冊目

タイトルが気になって読んでみることにしました。原題は「Swamp Sniper」ですって。舞台はアメリカの沼地の小さな町なのでswamp、そこになぜかCIAのスパイがやってきたのでsniperか。日本の題名のほうが引きが強いし、最近の日本の”ちょっと目先を変えたエン…

アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件 上・下」786~787冊目

満足。お腹いっぱい。アガサ・クリスティを読み始めた頃みたいな気分。 「本格ミステリ」ってどういうものなのかよくわからないけど、トリックだけが完璧で動機に全然共感できない作品ほど、「本格ミステリ」って言葉にこだわってる気がする。クリスティの作…

森博嗣「歌の終わりは海」774冊目

ミステリーじゃないシリーズがあったのか…。何も知らずに読んでしまったら”解決編”がなかった。先日読んだ「冷たい密室と博士たち」は、冒頭に現場の見取り図が載ってるいわゆる”本格ミステリ”だったので、頭を働かせる覚悟で読んでしまって肩透かしになって…

ローレン・ウィルキンソン「アメリカン・スパイ」773冊目

オバマ元大統領の「夏の読書リスト」にあった一冊らしい。オバマさんもだしビル・ゲイツの同じようなリストもチェックはするけど、読みたい本が不思議となくて、これがその手のなかで初めてくらいじゃないかな。(いやクリントンの書いたミステリーはこの手…

アンソロジー「街を歩けば謎に当たる」768冊目

6篇の中編ミステリーからなるアンソロジー。 海野碧「向こう岸の家」 実家に戻ってきた女性に、小さいころの記憶がよみがえってくる…。ひきこまれる設定だけど、「小さいころに亡くなった彼女の兄」という設定が伏線だと思い込んで引きずってしまった。 両角…

アンソロジー「街は謎でいっぱい」767冊目

気軽に楽しく読めそうなミステリーのアンソロジーかなと思って借りてみました。ショートショートではなくて、ちゃんと読み応えのある中編5本で、本を5冊読んだくらいの読後感がありますね。 大石直紀「京都一乗寺 追憶の道」 ロマンチックなファンタジー的…

森博嗣「冷たい密室と博士たち」748冊目

森博嗣って比較的新しい作家さんだと思ってた(「すべてがFになる」を読んだのを覚えてる)けど、この2作目が書かれたのは1996年。だからまだ誰もケータイ持ってなくてUNIXでメールを使いこなせるのがサバイバルだったりします。データの運搬は今は亡きフロ…

「あなたも名探偵」739冊目

こういう本大好き。秋の夜長に、こたつみかんでも、コーヒーチョコレート猫でもいいから、最高にリラックスして夜更かしして、楽しみたい時間です。 市川憂人、米澤穂信、東川篤哉、麻耶雄嵩、法月綸太郎、白井智之+の6人が、ガッツリ”Whodunnit”(犯人は誰…

歌田年「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」738冊目

すごく面白かった。「紙鑑定士」「伝説のプロモデラー」という、マニア心をくすぐるプロフェッショナルたちのオタクトークに”ふむふむ、ニヤリ”、「えっ」というようなエピソードの連続。だけど、文章がこなれていて読みやすい。登場人物たちが、美形であっ…

アリスン・モントクレア「ロンドン謎解き結婚相談所」737冊目

新刊リストを眺めていたらこの本を見つけて、タイトルと表紙に惹かれて読んでみました。第二次大戦直後のロンドンの、廃墟の中に残ったビルの4階で”ロンドンで2つめの”結婚相談所を始めた若くて美しい二人の女性。一人は元スパイで、もう一人は夫を戦争で…

サイモン・シン(青木薫・訳)「フェルマーの最終定理」721冊目

あー面白かったー! 本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、…

早川書房編集部・編「早川書房創立70周年記念コミックアンソロジー★SF編/ミステリ編」630~631冊目

早川書房が創立70周年を記念して、過去の「SFマガジン」と「ミステリマガジン」に掲載された、古今東西の偉大なるまんが家の短編と、このために書き下ろしたものをまとめた作品集。手塚治虫に松本零士に石森章太郎に萩尾望都、吾妻ひでおにとりみき…もう、す…

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」615冊目

ミステリーであり、ひとりの女性の壮大なドラマであり、湿地の物語でもあります。 全体的にはファンタジーだと思ったほうが良さそう。親や兄姉に次々に去られて、学校にも行かずひとりだけで自活しながら美しく成長し、学者たちを驚愕させる自然誌のベストセ…

アーナルデュル・インドリダソン「厳寒の町」609冊目

この作家の、日本語翻訳の出てる作品、これで読破だ! 陰鬱な風景、暗くて覇気のない登場人物たち、根深い人間関係が根幹にある犯罪を特徴とするこのシリーズ。今回は移民の人種差別問題に焦点が当たります。 2019年夏にアイスランドで現地ツアーに参加した…

アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」608冊目

これが4冊目。前の3冊にも増して、さらに読み応えがありました。 想像したこともなかった冷戦時代の北欧。アイスランドについ最近までアメリカ軍が駐留していて、ソ連に対する重要な軍事拠点だったことも知らなかった。東ドイツのライプツィヒに、アイスラン…

アーナルデュル・インドリダソン「声」604冊目

この作家の日本語訳、3冊目。このシリーズは書き続けられてて、すでに日本語訳があと2冊出てるようですね。 これもまた、失意のうちに命を奪われた人の人生の物語でした。読んでる最中も、読み終わったあとも、残念な気持ちでいっぱいになるけど、なんという…

アーナルデュル・インドリダソン「緑衣の女」602冊目

これも「湿地」同様、陰鬱で愛と思いやりにあふれた人間たちのミステリー。とても力強い文章で、引きつけられてぐいぐい読みました。湿地のときは、犯人の時系列と操作の時系列を並列にした映画のほうが共感しやすいと書いたんだけど、この本は最初から並列…

東野圭吾「マスカレード・イブ」601冊目

たまたま手に入ったので読んでみました。キャラクター設定が「いかにも」なところはあるけど、面白い。トリックも珍しくはないけど、いろんな部分をキャラクターの魅力で補ってます。 これ、キムタクと長澤まさみで映画化されたんですよね。キャラクターは合…

アーナルデュル・インドリダソン「湿地」600冊目

寡聞にも知らなかった、北欧ホラー台頭のなかにアイスランドの作家もいることを。さらに、その代表的な作家の作品が映画化されてたことも。友人から聞いてさっそくこの映画を見てみたんだけど、映画の感想のなかに「小説のほうが良かった」という人が多かっ…

ビル・クリントン&ジェイムズ・パターソン「大統領失踪 上・下」527-528冊目

センセーショナルなタイトルですよね。みんながよく知ってるビル・クリントン元大統領が「書いた」小説ってことで。 実際読んでみたら、すごく読みやすく楽しめる、大衆サスペンス小説という感じで、これは明らかにジェイムズ・パターソンというベストセラー…

森晶麿「ホテル・モーリス」520冊

1時間半くらいのドラマくらいの重さ、かな。面白く読めたけどノリが、私はちょっと年を取りすぎてるかも・・・。 ホテルが舞台と聞くだけで、ちょっとわくわくします。非日常のときめき、初めて会う人たちにちょっと緊張しつつ、ちょっと背伸びして接する感…

芦沢央「火のないところに煙は」510冊目

どこかで書評を見て、面白そう〜、怖そう〜、と思って借りた。 面白かったし怖かったけど、ちょっと脈絡をつけようとしすぎてる気がしました。「リング」「らせん」・・・一連のあのシリーズみたいに、どんどんルール変更が行われていく中で、あとの方の巻で…

柚木麻子「BUTTER」506冊目

(ネタバレあり) わりと変わった小説だなぁ。 冒頭から最後まで、なにかとバターに寄せた話の展開になっていて、もうエシレバターを固まりで買ってきてバクバク食べたくてたまらなくなります。 乳製品会社のパンフレットに連載された小説(バター販促品)と…

恩田陸「夜の底は柔らかな幻」上・下478−479冊目

面白かったけど、ダークファンタジーを読みたかったわけじゃないので、微妙。「イロ」が超能力の一種で、「途鎖」が土佐の同音異義国の異境だということはすぐわかったけど、「ソク」って何だったんだろう。何も説明しないで放置、ってのが恩田式なのかな。…

恩田陸「ユージニア」477冊目

これも重層的な、いろいろな人たちの言い分が出てくる小説なんだけど、ちょっとオカルトっぽい方向に行き過ぎてる気がします。いやでもそれが神秘的で惹かれるんだけど。ミステリーというには美少女ロマンが強すぎるかな、と。 ディストピアじゃないの。暗い…

恩田陸「中庭の出来事」476冊目

面白かった。立体的な織物みたいに、重層的に進んでいく物語。あっちのお話とこっちのお話が関係していたり、あの人の話とこの人の話が違っていたり、ということが作者はとっても好きなんだな。普通に聞いている話が途中から化けていく「・・・え?」という…

一色さゆり「神の値段」464冊目

書評かなにかで見て、図書館で借りられたらいいな〜と思って調べたら、たまたますぐ借りられてよかった。ギャラリーで働く若い女性が主人公で、幻の(生きているかどうかもわからない)アーティストと、ギャラリーを取り巻く不思議な人たちの世界を見事に描…