アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件 上・下」786~787冊目

満足。お腹いっぱい。アガサ・クリスティを読み始めた頃みたいな気分。

本格ミステリ」ってどういうものなのかよくわからないけど、トリックだけが完璧で動機に全然共感できない作品ほど、「本格ミステリ」って言葉にこだわってる気がする。クリスティの作品は、トリックも常に新しいけど、再現性が高いというより偶然が引き金になるケースも多い一方、動機に関しては何十年もの積年の思いが熟成されて底恐ろしいと感じるものが多い。

この作品はそのどっちとも違っていて、動機はあるけどクリスティのような積年のうらみつらみという感じとは違うし、トリックに凝った作品でもない。何が革新的かというと、小説そのものの建付けが斬新。実に楽しませてくれました。

上下巻と言ってしまうと、単なる続き物という感じだけど、これは1冊にまとめないで絶対2分冊で売り続けてほしいし、上巻を読み終えたところで一息つく必要がある。この構成がすばらしい。

正直、犯人や動機、トリックに納得感がすごくあるわけじゃないので、そこを期待した人は「あれっ」と思うかもしれない。でもこの「小説の建付けの再構築」というアイデア、工夫、努力には個人的に尊敬しかないです。だからあちこちで推薦されてるんだな~。

引き続き、他の作品も読んでみます!