アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」608冊目

これが4冊目。前の3冊にも増して、さらに読み応えがありました。

想像したこともなかった冷戦時代の北欧。アイスランドについ最近までアメリカ軍が駐留していて、ソ連に対する重要な軍事拠点だったことも知らなかった。東ドイツライプツィヒに、アイスランドの若い社会主義者たちが送られて学んでいたことも、多分事実なんだろうな。この本の中で登場人物が「東ドイツナチスが形を変えて続いていたものだ」というようなことを言うのですが、留学生の中に政府のスパイが紛れ込んでいて、密告者が報償されるのが常態になっているというのは確かにかなりおかしい。反抗的とみなされた学生は、アイスランドに送り返されるだけではありますが…。

アイスランドからライプツィヒへ意気揚々と留学した、若き理想家トーマスが、ハンガリーから来た女性と恋をして、誰か身近な人の裏切りにあい、その後の人生を失意のうちに過ごす…という人々の人生がこの犯罪の中心にあるので、この作品は特に共感しやすいのかもしれないですね。

繊細で切れ者だけど優柔不断でネガティブな、エーレンデュル刑事の疑い深くしつこい操作が今回も功を奏します。怪しい人がたくさんいすぎて、誰が犯人だか最後近くになるまでわかりません。

面白さがだんだん増していくのは、最初は超難しいと感じたアイスランド人の名前にも慣れてきたからかも…。日本語訳はあと1冊しか出てないけど、このシリーズほんと面白いので、全部訳してくれないかな~。(原語では絶対読めないから)