本)文学、文芸全般

村田喜代子・酒井駒子ほか「暗黒グリム童話集」836冊目

素晴らしく美しい本でした。 小説家6人×画家6人の組み合わせで、グリム童話をベースにした新作の怖い童話を作り上げています。文字数も絵の数もたっぷりとってあるので、美しいだけじゃなくてストーリーも深くてすごく読み応えがあります。 村田喜代子はそも…

原田マハ「楽園のカンヴァス」810冊目

面白かった。先を急いで読み切った。あまりにも、うまいこと偶然や運命が重なったり、関係者の情熱がすごすぎたりするし、やけにロマンチックすぎたりするところは、面白い少女マンガみたいな感じです。世の中には、本当らしさを追求して、読む人に心の痛み…

上間陽子「海をあげる」788冊目

うん、私が読みたかったのはこういう本だ。「500ヘルツのクジラたち」じゃなくて。ただ、読みながら自分がこの本を沖縄に対する加害者としての本土の人間として読むべきなのか、誰にも話したことのない数々の傷を負った同じ被害者の女性として読むべきなのか…

恩田陸「薔薇のなかの蛇」785冊目

長年少しずつ書き溜めてきたものが、まとまって本になった形のようです。この作家の作品は数冊しか読んでないけど、初期のちょっとまがまがしくて美しい、名作少女マンガみたいな世界、という感じがします。 けっこう厚みがあるけど、スルスルと楽しく一気に…

恩田陸「灰の劇場」777冊目

恩田陸は「蜜蜂と遠雷」で好きになって何冊か読んだ。これは「蜜蜂」後の毛色の違う新作ですね。 「蜜蜂」は音楽の天国のような物語で、この小説はその対極をいくような、何も手に入れなかった、あるいは喪失した人々の物語。というより、希望に燃える若い時…

町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」776冊目

なるほど。こういう物語なのね。私が「これもひとつのファンタジー」と呼ぶやつだ。細かい部分にリアリティがなくて、なんとなくもわっとした違和感を持ちながら読むんだけど、ふわふわとして不思議な高揚感がある。でも私は泣けないんだな。本物の感情が湧…

おいしい文藝シリーズ「こぽこぽ、珈琲」766冊目

河出書房新社が2017年に出した”おいしい文藝”シリーズの中の一冊。 ほかにも「ぷくぷく、お肉」「まるまる、フルーツ」等々10種類も出てるそうです。なんて楽しい企画。 古今東西31人の著名な作家の短いエッセイ集ですが、書下ろしは1つもなさそう。よく探…

村上春樹「図書館奇譚」765冊目

さっき読んだ「猫を棄てる」もだけど、短い作品に素晴らしいイラストをたっぷり加えて薄い本にしてくれるのって嬉しい。映画化ともアニメ化とも漫画化とも違って、中心にあるのは文字なんだけど、ときどき見る刺激的で美しいイラストがピリッとイマジネーシ…

村上春樹「猫を棄てる」764冊目

村上春樹のまだ読んでない本がけっこうあると気づいたので、順次読み進めてみる。 猫と暮らしてる私にはショッキングなタイトルだけど、どきどきしながら読んだら棄てた猫は自分たちより先に帰宅して待ってた、というオチがあって安心しました。というか猫を…

李琴峰「生を祝う」763冊目

「彼岸花が咲く島」を読んだあと、さかのぼって他の単行本も全部読んだ後、満を持して受賞後第一作を読了。 改めて、この人は現代日本随一の言語能力を持つ人だなと思う。昔の本を読めば、文豪と呼ばれる人も、希代の評論家も、まずその言語に驚くことがある…

綿矢りさ「ひらいて」761冊目

この間見た映画「勝手にふるえてろ」がとても面白かったので、映画「ひらいて」も見ようと思ってるけど、図書館で見かけたので今度は原作を先に読んでみました。 重い…衝撃波が…破壊力が…。相変わらずすごいわ、この作家。シチュエーションは、黒いけど現実…

村田喜代子「偏愛ムラタ美術館【展開編】」759冊目

未読の村田喜代子の本が溜まってきたので読んでる。 このシリーズは最初のを読んだ気がしてるけど、ブログは書いてなかった。2番目を飛ばして3番目のこれを読んだみたいだ。 で、これが捧腹絶倒の面白さだった。私は芸術作品を自分勝手に楽しむのが好きだし…

オムニバス短編集「猫はわかっている」752冊目

タイトル借りしました。うちの三毛は背中を向けてソファの上でごろんと寝てる。 村山由佳「世界を取り戻す」で、猫は生涯に一度だけ人間の言葉を話すと書いています。「じゃあ、そろそろいくワ」といって旅立った灰色のおじいさん猫。うちの子はときどき「ご…

尾崎世界観「母影」749冊目

著者がやっているクリープハイプというバンドのことは、聞いたことあるかも?くらいしか知らない。インタビュー番組で見た彼が面白くて、先に本を読んでみることにしました。彼がむかし働いていた製本所で作られたきれいな本。 感想は、とても面白かった。起…

加藤シゲアキ「オルタネート」746冊目

最初に結論を言っておきますと、人間描写の行き届いた、愛のあるよい作品で、とても面白かったです。 冒頭にある「主要登場人物」リストを見たとき、「蓉」と書いて「いるる」、「凪津」と書いて「なづ」、「深羽」と書いて「みう」といった名前が並んでいて…

森達也「チャンキ」743冊目

この人の監督したドキュメンタリーはたくさん見てるしノンフィクションの本も読んでるけど、小説を書いてるとは知らなかった。厚い! 冒険RPGのような小説で、つまり村上春樹作品のようでもある。その章に出てくるフレーズを章タイトルにしているところなん…

安部公房「デンドロカカリヤ」742冊目

この本を読むことにしたきっかけは、日本語の「音声学」の授業で”「デンドロカカリヤ」はどんなアクセントで読むか?”という話があったこと。日本語の高低アクセントには法則性があるので、初めて聞く意味の分からない言葉でも、その法則に従って読むことが…

李琴峰「独り舞」740冊目

これがデビュー作なのか。この中で描かれていることは、著者の”私小説”では決してないと思う。でも何らかの痛みにさいなまれて、小説のなかで”一度死ぬ(※結末を書いてるわけじゃないです)”ことによる生きなおしが必要だったのかな、と、しんみりする。 こ…

ジェシカ・ブルーダー「ノマド 漂流する高齢労働者たち」731冊目

やっと読めました。映画を見てからずっと読みたかったやつ。映画では、フランシス・マクド―マンド演じる「ファーン」とデヴィッド・ストラザーン演じる「デイヴ」以外はリアルなノマドの人たちが素で出てるように見えたけど、役に近い素人が完全に”演じる”形…

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」730冊目

<映画とこの作品終盤の筋に触れています> 映画「ドライブ・マイ・カー」を見た→原作の短編集「女のいない男たち」を読んだ→なにかまだ抜けている気がして、新しめの長編を読み返してみたくなりました。結果、読んでよかった。「ドライブ・マイ・カー」の原…

アントン・チェーホフ「かもめ・ワーニャ伯父さん」728冊目

映画「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹の短編がベースだけど、映画オリジナルのお芝居の練習場面もあって、演じられているのがこの「ワーニャ伯父さん」です。映像化されたもののソフトが見つからなかったので、戯曲を読んでみました。 最後に、”不器量だ…

村上春樹「女のいない男たち」727冊目

<この本および映画化作品の内容にふれています> 「ドライブ・マイ・カー」を見たので再読してみました。 映画の原作になっているのは「ドライブ・マイ・カー」のほか「シェエラザード」もだけど、「木野」の中の妻の浮気を発見する場面も使われてました。…

小松左京「闇の中の子供」725冊目

岸政彦「給水塔」の中で、筆者が大好きな小説として語る「少女を憎む」が読みたくて借りてきました。 美しい思い出と陰惨な結末で構成される小説が好きというのは奇妙な気もするけど、なんとなく納得。「ラブリーボーン」っていう映画を思い出しました。まだ…

岸政彦「図書室」723冊目

この人の小説は好きすぎる。 「図書室」の「私」は私だ。大した思い出はないけど、好きじゃない人と結婚したりしないで、50歳になっても自活できてる。新しく何も起こらないから、昔のことをよく思い出す。思い出すことは、どれもまぶしいように思われて、な…

李琴峰「五つ数えれば三日月が」722冊目

「彼岸花が咲く島」が面白かったので、過去の作品も読んでみます。 この本に収録された2編は、台湾から日本に留学してきた女性が日本の女性に恋をする、親密で繊細な作品。著者が自分の生活のなかで経験したり想像したことを膨らませたのかな、と感じる、若…

山田詠美「血も涙もある」719冊目

新刊を見かけたので、久しぶりに読んでみました。ドロドロの女の愛を絶妙な筆致で巧みに描いたものを期待して。 感想をいうと、全然ドロドロしてなかった。結婚している男女とその周辺の女と男の愛欲はあるんだけど、ぜんぜん迫ってこないくらい乾いてた。書…

岸政彦「ビニール傘」714冊目

私の好きな本がこんなところにあった。 人はそれなりにがんばっていても、何かのきっかけでずるっと社会から滑り落ちてしまう。他の人たちをはねのけて、しがみつく人もいるけど、身体や心が弱くなってしまうとがんばることもできなくなって、漂いつづける人…

村上春樹「一人称単数」711冊目

<ネタバレあります> 英語(いや他のヨーロッパ言語でもいいか)の翻訳をする人しか思いつかなさそうなタイトルだな。 この短編集のなかでは「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」が好きだったな。「謝肉祭」でも音楽愛が書かれているけど、最初…

村田喜代子「縦横無尽の文章レッスン」708冊目

この本のパート1ともいえる「名文を書かない文章講座」はだいぶ前に買って持っている。村田喜代子は文章の達人のなかでも、子どものように感じて大人のように考える、感性と技術の両方がすごい人だと私は思っているので、この人の文章講座は読む価値が高い!…

柴田元幸・高橋源一郎「小説の読み方、書き方、訳し方」707冊目

何でも読んで何でも書く高橋源一郎と、何でも読んで訳す柴田元幸が、表題について自由に語り合った本。私の読んだことのない本や、聞いたこともない作家の話が多くて、いいとも悪いともなんとも言えないのですが、高橋氏が絶賛する柴田氏の訳書、ブコウスキ…