本)文学、文芸全般

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」730冊目

<映画とこの作品終盤の筋に触れています> 映画「ドライブ・マイ・カー」を見た→原作の短編集「女のいない男たち」を読んだ→なにかまだ抜けている気がして、新しめの長編を読み返してみたくなりました。結果、読んでよかった。「ドライブ・マイ・カー」の原…

アントン・チェーホフ「かもめ・ワーニャ伯父さん」728冊目

映画「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹の短編がベースだけど、映画オリジナルのお芝居の練習場面もあって、演じられているのがこの「ワーニャ伯父さん」です。映像化されたもののソフトが見つからなかったので、戯曲を読んでみました。 最後に、”不器量だ…

村上春樹「女のいない男たち」727冊目

<この本および映画化作品の内容にふれています> 「ドライブ・マイ・カー」を見たので再読してみました。 映画の原作になっているのは「ドライブ・マイ・カー」のほか「シェエラザード」もだけど、「木野」の中の妻の浮気を発見する場面も使われてました。…

小松左京「闇の中の子供」725冊目

岸政彦「給水塔」の中で、筆者が大好きな小説として語る「少女を憎む」が読みたくて借りてきました。 美しい思い出と陰惨な結末で構成される小説が好きというのは奇妙な気もするけど、なんとなく納得。「ラブリーボーン」っていう映画を思い出しました。まだ…

岸政彦「図書室」723冊目

この人の小説は好きすぎる。 「図書室」の「私」は私だ。大した思い出はないけど、好きじゃない人と結婚したりしないで、50歳になっても自活できてる。新しく何も起こらないから、昔のことをよく思い出す。思い出すことは、どれもまぶしいように思われて、な…

李琴峰「五つ数えれば三日月が」722冊目

「彼岸花が咲く島」が面白かったので、過去の作品も読んでみます。 この本に収録された2編は、台湾から日本に留学してきた女性が日本の女性に恋をする、親密で繊細な作品。著者が自分の生活のなかで経験したり想像したことを膨らませたのかな、と感じる、若…

山田詠美「血も涙もある」719冊目

新刊を見かけたので、久しぶりに読んでみました。ドロドロの女の愛を絶妙な筆致で巧みに描いたものを期待して。 感想をいうと、全然ドロドロしてなかった。結婚している男女とその周辺の女と男の愛欲はあるんだけど、ぜんぜん迫ってこないくらい乾いてた。書…

岸政彦「ビニール傘」714冊目

私の好きな本がこんなところにあった。 人はそれなりにがんばっていても、何かのきっかけでずるっと社会から滑り落ちてしまう。他の人たちをはねのけて、しがみつく人もいるけど、身体や心が弱くなってしまうとがんばることもできなくなって、漂いつづける人…

村上春樹「一人称単数」711冊目

<ネタバレあります> 英語(いや他のヨーロッパ言語でもいいか)の翻訳をする人しか思いつかなさそうなタイトルだな。 この短編集のなかでは「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」が好きだったな。「謝肉祭」でも音楽愛が書かれているけど、最初…

村田喜代子「縦横無尽の文章レッスン」708冊目

この本のパート1ともいえる「名文を書かない文章講座」はだいぶ前に買って持っている。村田喜代子は文章の達人のなかでも、子どものように感じて大人のように考える、感性と技術の両方がすごい人だと私は思っているので、この人の文章講座は読む価値が高い!…

柴田元幸・高橋源一郎「小説の読み方、書き方、訳し方」707冊目

何でも読んで何でも書く高橋源一郎と、何でも読んで訳す柴田元幸が、表題について自由に語り合った本。私の読んだことのない本や、聞いたこともない作家の話が多くて、いいとも悪いともなんとも言えないのですが、高橋氏が絶賛する柴田氏の訳書、ブコウスキ…

西條奈加「心淋し川」704冊目

こころさびしがわ、じゃなくて、うらさびしがわ、って読むの?(表紙を見ながら) 江戸のうらぶれた下町の片隅に、貧しくつつましく暮らす人たちの群像劇です。なんとなく、目新しさはなくて、前に他の人の書いた似た小説を呼んだような気もするけど、落ち着…

カズオ・イシグロ「クララとお日さま」695冊目

カズオ・イシグロ買って読んだの初めてかも。映画があれば先に見ちゃうし…。今までに本で読んだのは「遠い山なみの光」と「忘れられた巨人」だけ。映画で「わたしを離さないで」「日の名残り」「上海の伯爵夫人」。じつに丁寧に作られたすばらしい映画で、言…

宇佐美りん「推し、燃ゆ」690冊目

直近の芥川賞受賞作品。図書館で500人待ちの末やっと手元に届きました。 まず、この本は抜群に面白かった。アイドルって言葉は今はもう使われないのね。「推し」のことを名前で呼ぶことも少なくて、ファン本人も「推し」と呼び合っている。自分の「推し」に…

村田喜代子「人の樹」688冊目

敬愛する村田喜代子の本、しばらく追っかけていなかったうちにたくさん出版されてました。順次、読んでいきます。 この本は、かなり異色。タイトル通りともいえるのですが、1つ1つの短編で、樹木を人格のあるもののように描いています。たとえば「あたしは…

モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」687冊目

高野秀行の本をたくさん読んでたら、この人のことが出てきて、興味がわいたので読んでみました。スーダンの視覚障碍者で、日本の鍼灸学校に留学してきた後、コンピューターや政治を学んで、東京外大の助教になったらしい。長年学生でい続けたことのうしろめ…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」681冊目

ベルトリッチ監督「暗殺のオペラ」を見たんですよ。で、原作も読んでみたくなって借りてみたわけ。この本でボルヘスは、書かれなかった本のあらすじだけを語るっていう体裁で、いろんな物語を語ります。その手法は、ズルいくらい読みたい心をそそる、読む人…

工藤吉生「世界で一番すばらしい俺」678冊目

Twitterでどこかからこの著者の言葉が流れてきてちょっと驚愕&ドン引きして、気になってフォローして、歌集を読んでみなければと思って借りてきました。 著者の想像どおり「あとがき」から読む。どういう人なのか知りたい(下世話な好奇心)。 読むのがちょ…

西日本新聞「九州の100冊」676冊目

私が好きな作家として挙げる村田喜代子、佐藤正午、松下竜一という3人は全員九州の人だ。なかでも松下竜一は西日本新聞の短歌の投稿欄で頭角を現した人なので、きっと彼のことが書いてあるに違いないと思って借りてみたら、案の定取り上げられていました、3…

J.T.リロイ「サラ、いつわりの祈り」668冊目

これが「J.T.リロイ」名義での2冊目。時系列的にはこっちがずっと先で、4歳のジェレマイアが里親から娼婦の実母サラのところに戻され、福祉の人が聞いたらただでは済まないような逆境の中でゆがみながら育っていく様子がつづられています。 これってちょっと…

J.T.リロイ「サラ、神に背いた少年」667冊目

VODで「作家、本当のJ.T.リロイ」を見たら読みたくなってしまった。これを書いて、JTリロイのマネージャーとして世に出たローラ・アルバートという女性は、虚言癖なのか多重人格なのかわからないけど、人を騙して儲けようという意図でやったのではなさそうだ…

チャールズ・ブコウスキー「パルプ」661冊目

なんてデタラメで痛快で面白いんでしょう。彼の作品の擁護者と批判者は、はっきり二分されるんだそうですが、擁護者のなかに「千年の愉楽」の中上健次がいて「なるほど」と思ってしまいました。 私はマジメで几帳面なところのある人間だけど、彼らの魅力が理…

松下竜一「底ぬけビンボー暮らし」660冊目

敬愛する松下竜一の本、「ルイズ」とか「砦に拠る」以降読んでなかったので読み直し始めています。比較的新しいものも読んでみよう、かつ、会社を辞めて収入が激減したので「ビンボー」に敏感に反応した、というのもあります。(というか、今わたしは大節約…

松下竜一「豆腐屋の四季」656冊目

「いつか読書する日」という映画を最近見ました。田中裕子演じる独身の50歳の女性は、一人暮らしで牛乳配達とスーパーのレジ打ち、2つの仕事をかけもちして暮らしています。夜明け前に自転車で街を回って牛乳を配達していくその人の姿が、けなげで真っすぐで…

森瑤子「アイランド」654冊目

与論島に行ったときのことを思い出して読んでみる。この本はガイドブックで紹介されてたし、森瑤子は与論に別荘をもち、地元の人とも親しくしていて、今はエーゲ海ふうのタイル貼りの素敵なお墓となって与論にいつづけています。 私は同時代としては、彼女の…

三島由紀夫「美しい星」651冊目

珍しくSFめいた作品。星新一の本の題名にありそうな。 しかし登場人物は、何かの強迫観念的イデオロギーを抱いてしまった潔癖症の人々という意味では、三島由紀夫のあらゆる小説と共通しています。 自分の本質が金星や木星から来た宇宙人で、地球人の身体を…

三島由紀夫「天人五衰(豊饒の海4)」649冊目

<ネタバレあり> 私が望んだ結末は、良しあしとか価値評価はさておき、輪廻転生が終わったのかどうかは明確にしたかった。ジン・ジャンに双子の姉妹がいたなんて一言も誰も言ってなかったんだから、慶子が再会したのが輪廻を終えた後生き延びた彼女自身だっ…

三島由紀夫「暁の寺(豊饒の海3)」648冊目

4部作のうち一番長い「奔馬」を克服した後は、だいぶ気が楽。「奔馬」は長さだけでなく神風的な”純粋”、”正義”の重厚さで読んでる者がエネルギーを吸い取られるんじゃないかという迫力があったけど、タイやインドを漫遊する「暁の寺」は少しは楽に読めます。…

三島由紀夫「奔馬(豊饒の海2)」647冊目

すごいなぁ、すごすぎる。「豊饒の海」1もすごかったけど、こっちも大変な大名作だった(語彙まずしいなぁ私)。命がけの天才ってこれほどのものなのか。壮大な構想、四部作の少なくとも前半2作の設定の時代性と普遍性、緻密に設定された人物像たち、微に入…

三島由紀夫「春の雪(豊饒の海1)」645冊目

「アンナ・カレーニナ」みたいなお、人間の深い業のお話だった。虚飾と愛欲といろんなドロドロなものが渦巻いてるいやな世界。でも、ああ、そうか、歴史小説を読むのも嫌いだし、周囲の人たちのゴシップを言うのも聞くのも私は昔から嫌いで、そのために同性…