本)文学、文芸全般

浅生鴨「猫たちの色メガネ」570冊目

今まで読んだこの著者の本のなかで一番、「遠くに連れて行ってくれる」ような文学の楽しみがありました。それでも、なんとなく説明的で親切すぎて、もっとほったらかしにしてほしいような気がする。これはやっぱり、著者が長年関わってきたのがテレビってい…

川越宗一「熱源」564冊目

面白かった。すごい力作。アイヌの人たちが主役で時代は明治なんて、設定が斬新!と思いながら、三分の二くらいまで、まるきりフィクションだと思って読んでたのに、事実にもとづく小説だったなんて!という驚きも大きい。これ、「坂の上の雲」みたいに何回…

小林エリカ「マダム・キュリーと朝食を」562冊目

ふむ、興味深い小説です。 理屈と史実とファンタジーを、猫と少女が別々に、軽やかに、飛び回る。重層的で、感覚的に理解しづらい人もいると思うけど、私はするっと入れました。 この間テレビで加藤登紀子とこの著者との脱・原発対談(「SWITH×Interview」)…

Min Jin Lee「Pachinko」521冊目

今まで洋書は何冊買っても積みあがるだけだったんだけど、これは一気に読み通しました。韓国系アメリカ人の女性が、朝鮮半島から日本に渡ってきて暮らしている家族4代について書いた小説なのですが、アメリカではベストセラーになったそうです。 アイスラン…

朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」504冊目

朝井リョウってすごく「うまい」作家だと思うけど、この小説では文章より、着眼点やギミックの巧者という印象がありました。 どの短編も視点がちょっとイジワルで、しかも最後の最後に”脇役バトルロワイヤル”という趣向を持ってくるというひねくれっぷり。こ…

パブロ・ネルーダ「2000年」「大いなる歌」502、503冊目

「イル・ポスティーノ」という映画を見ました。イタリアの小さな島に、南米チリを政治亡命した詩人がやって来て、彼の家に毎日郵便物を届けるだけの仕事をしている地元の青年と交流する、という映画。その詩人が実名でパブロ・ネルーダなのです。彼がそうい…

川村元気「億男」501冊目

ヒットメーカーの小説、さすがの面白さ。 ただ、人気漫画のあらすじを読んだような気持ちで、理解できるし面白いけど、きれいにまとまりすぎていて心に引っかかるものがなかったです。「シェルタリング・スカイ」?と思われる北アフリカが舞台の映画が出てく…

朝井リョウ「何様」500冊目

面白かった。実に面白かったです。 「桐島」は”スクールカースト”という、存在するのかもしれないけど私が一番無視したいものについて語られることが多すぎて、この作家を評価できないままになっていたんだけど、この本を読んで、朝井リョウという人の観察力…

村田喜代子「焼野まで」493冊目

ほぼ、ガンになった村田喜代子自身の闘病記なのかな?八幡ものではガンが見つかってからあまり長く生きられなかった「ミツ江」はこの本では長生きして、自分自身のほうが闘病しています。モデルになったオンコロジーセンターを調べまくってしまったくらい、…

村田喜代子「八幡炎炎記」「火環」491-492冊目

敬愛するレジェンド村田喜代子の新作。自伝とまでは言わないけど、鉄鋼の町での自分の生い立ちをモチーフにした小説です。ヒナ子は「ツクシみたいな女の子」。優しいけど子どもの気持ちはあんまりわからないおじいちゃん・おばあちゃんに娘として可愛がられ…

原田マハ「リーチ先生」486冊目

全くのフィクションなんですね。朝ドラみたいなものかな。バーナード・リーチ、濱田庄司、柳宗悦、富本憲吉、高村光太郎・・・など実在の人物の中に、亀ちゃん、その息子、といったこの物語の中だけの人物が登場して、狂言回しのように彼らの努力を支えます…

島田雅彦「カタストロフ・マニア」480冊目

図書館で予約してたのがやっと届いた。SF的な小説で、主人公は20代のオタクな青年。「カタストロフ・マニア」というのは彼が夢中になっているゲームのタイトルで、臨床治験で病院に閉じ込められてる間もずっとやってる。ある日病院で目が覚めたら、誰もいな…

恩田陸「終わりなき夜に生まれつく」474冊目

ファンタジー小説というべきかな?「在色者」、”色”という特殊能力をもつ若い青年たちのエピソードを集めた短編集。恩田陸の作品は、純文学に近いものしか読んだことがなかったので、こういうファンタジー的なものはちょっと意外だけど、前のめりで登場人物…

島田雅彦「深読み日本文学」473冊目

先日NHK文化センターで講義を受けて感動した島田雅彦が、日本文学を存分に語った1冊。200+ページの新書なのですぐに読めます。語り口が目の前で話してるようで読みやすい。そして偏っている。講義と同じだ。偏愛日本文学。文学もだけど政治に関しては一…

松尾スズキ「同姓同名小説」472冊目

2002年の小説。16年前だ。みのもんた、川島なお美、田代まさし、小泉孝太郎といった実在の人々(と同姓同名の誰か)を主人公とした短編集ですが、今やお亡くなりになった人もいれば、話題に上らなくなった人もいて、こういう本を16年後に読むのってもし…

恩田陸「蜜蜂と遠雷」469-470冊目

蜜蜂と遠雷 面白かったー!恩田陸の本はいつもだけど、感受性が鋭敏かつ強靭で、それを文章にする力が高いですよね。そして、音楽と音楽家に対する愛情に嘘がない。本当にすごい作家だなぁ。なんかバカみたいにベタ褒めだけど。 登場人物がそれぞれ痛みも喜…

中上健次「千年の愉楽」468冊目

面白かった。実際、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」に似てるところがたくさんあるし、独特の、私が思っている典型的な日本の風景とは違う風景を見せてもらえてすごく面白かった。高貴で濁った血が流れる中本の美しい若者たちって、どうイメージすればい…

ミシェル・ウェルベック「服従」467冊目

フランスにイスラム政権が発足する、という小説。「え!?』極右政党が一般人を攻撃するようになり、穏健派で常識派のイスラム党の党首に一気に人気が流れて、まさかの選挙結果により左派とイスラム党による連合政権が発足するんだけど、党首の実力で彼が大…

ミハイル・ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」465冊目

ものすごく面白い小説だった。荒唐無稽、抱腹絶倒、でも愛あり涙あり(あったっけ?)、しかし破綻なく、信じられないくらい新しかった。 読み進めるにつれて感じたことを時系列的に書くと・・・最初は悪魔らしき人物が登場してショッキングな事件を予告する…

村上春樹「騎士団長殺し」460-462冊目

一応たしなみとして、村上春樹の長編は読むことにしてる。買うかどうするか毎回迷うんだけど、今回は発売半年後、十分価格が下がったところで古本を購入。図書館の待ち人数は400人台です。 以下ネタバレ。構成上のことをいうと、この本は珍しくパラレル構…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」(亀山郁夫訳)455〜459冊目

読んだ〜〜。重かった。おもしろかった。ドストエフスキーって蠍座だよね。まさに蠍座的な作品だった。敬虔でありながら放蕩で、情愛深くかつ冷徹で、誰にも興味を持たず自分の不運を嘆きあげる人たち。特定の人だけにそういう特質があるわけじゃない。人の…

佐藤正午「小説家の四季」454冊目

このエッセイも、出てたことを最近知ったので早速買って読みました。「書くインタビュー」では書ききれない著者の日常のことや、そこはかとないユーモアが、このくらいのボリュームの文章だと自由に広がりますね。インタビューの方は精神的にあまりいい状態…

伊坂幸太郎「残り全部バケーション」450冊目

この人もうまいな。佐藤正午(今や直木賞作家)がべた褒めするくらいで。しかし、この人の面白さは、やっぱり「ありそうにないことを組み合わせる」部分で、結末にもつれ込む上で、私としては特に含めてくれなくてもいいなと思うエピソードもたくさん、たく…

夏目漱石「こころ」449冊目

もう7月なかば。そろそろ、この先の生き方を考えてみなきゃと思って、こわごわ再読。実家にあった文学全集を何冊か持ってきてるので、常にこの本は書棚の奥にありました。(昭和44年発行) あらすじはおぼえてるつもりだったけど、主人公を「先生」と呼ぶ書…

早見 和真「イノセント・デイズ」448冊目

ビヨークが主演したラース・フォン・トリアーの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に匹敵する、アンチクライマックス。もう最近は、こういう小説を読んでも映画を見ても、ハッピーエンドなんて期待しなくなってる。多分私だけじゃなくて、たくさんの人が。 読み…

鏑木蓮「京都西陣シェアハウス」446冊目

小説だったー。この3日間でシェアハウスに関する本を6冊も読んだんだけど、キーワード検索だけで借りたら小説も何冊か混じってたwでもこれが実に面白く深かった。読んでる間はちょっとギスギスした感じなのに、読み終わると清々しい。とても不思議な小説で…

宮本輝「草花たちの静かな誓い」445本目

「泥の河」くらいしか読んだことはないのですが、地を這うような生活をしている人たちに温かく寄り添う作家さんだと思っていたので、この作品のどこか軽く、明るい印象がちょっと意外でした。テーマは決して軽くないのに、カラッとした晴天の多いカリフォル…

佐藤正午「月の満ち欠け」444冊目

一番好きな作家の"20年ぶりの書き下ろし長編小説”ということで、4月発売だしそれなら大きい書店の店頭にあるかなと思ったら、1軒目にはなく、2軒目でやっと買えました。こんな新作があるなら、ゴールデンウィークは旅行しないで家でまったり読書でもすれ…

佐藤正午「ダンスホール」443冊目

また本を読まなくなった私ですが、久々に読み終えたのは、だいぶ前に買って読みかけてたこの短編集。この人の小説を読んでると神経が落ち着いてきます。東京とは違う時間の流れが、この人が舞台とする長崎なり福岡なりの九州の小都市にはあるし。バリバリ会…

山下澄人「しんせかい」438冊目

写真を先に見たからか、ずいぶん無骨なごっついオッサンだな、文章もおっさんっぽいなと思いながら読んでたのに、ある時点で不器用な少年が書いた文章にしか見えなくなった。 このおっさんのことだから、19歳のときも”紅顔の美少年”じゃなくておっさんっぽ…