温又柔「私のものではない国で」988冊目

リービ英雄のデビュー作も読んだ記憶があるし、最近では李琴峰にはまった。どんな文学者が書いた日本語の作品も、自分とは違う言語センスを楽しめるけど、母語じゃない人たちの、私が使っている日本語からの逸脱はもっと大きくて、意外で、美しく感じられる。

とか言うと誤解を招きそうだけど、この著者は幼児期から日本育ちなので、私が使う言語との違いには気づかなかった。気づいたのは、「人を線引きしようとすること」に対する鋭い感受性と。確固とした考え方。いろんな人が日本(語)文学の世界に入ってくるのは面白い、大歓迎だ。さまざまな違いをさまざまな程度持つ人たちがたくさんそこにいることで、一つの属性(たとえば国籍が違うことや、母語が違うこと)の生み出す意味は全部同じじゃない、一人ひとり違う、ということが、気づかれやすくなる。

この人の書いたフィクションも読んでみなければ。この本のなかで紹介されている李良枝やジュリー・オオツカも気になる。