金谷武洋「日本語が世界を平和にするこれだけの理由」780冊目

だいぶ前に届いてたのに、やっと1冊目を読みました。「一万円選書」。

この本はタイトルを見たとき日本礼賛のような気配を感じて、気のせいだといいなと思いながら読み始めましたが、読んでよかった。日本語教師になる勉強を始めて9か月、「国語」でならったことがいかにコジツケだったか気づき、日本語の文法は英語の文法では語れないことを知るにつれて、そのたびに目を開かれるような思いがしてきました、この本もそういうことを書いた本でした。

私は英語に興味があって小学生から勉強を始めて、日本語が完成しないうちに英文法が入ってきてしまったからか、どこか日本語で書くものが翻訳調になりがち…英語の文法を意識しながら日本語で話したり書いたりする変な癖がついていたかもしれない。もっと言うと、大学を出てから20年にわたって英米系の会社で働いたので、英語文化で仕事をやることが身についてしまって、それで日本の会社では浮いてしまったのかも(以下略)

この著者は大学を出てからずー--っとカナダで日本語教師をしてきたという筋金入りの現場の人で、現場で話される英語・フランス語・日本語を観察してきた経験にもとづく洞察が鋭くて面白い。日本語の中に見えるよき日本文化は誇れるものだ、というのに共感して、教えるときが来たらそういう風に教えようと思いました。

自分とは違うなと思った部分についても書いておこう。

・「きれいだ(例文では「キュートだ」)」は形容詞文じゃなくて名詞文とされてた。習ったばかりの日本語教育文法では「きれいだ」はナ形容詞なので、それとは違う立場を取っている。学び中の私にはどっちもまだしっかり理解できてないので、引き続き気を付けながら勉強しようと思う。

・「英米人は謝らない」と書かれてるけど、職場で私は謝るアメリカ人を何度も見たけど、謝る日本人はあまり記憶がない。日本では自分が悪くても無意識のうちに組織や上司や部下も含む「私たち」のせいにして「自分」が悪いと言わない、っていう特性がある気がする。アメリカ人は「主体」を重視するから、自分が悪かったとき、相手との友好関係を保ちたいと思ったら、きちんと時間をとって解決をはかる。うやむやにして逃避してしまう(問題を直視するのが怖い)日本人。愛だけじゃなくて失敗もみんなのものという感覚。

・日本は世界中の人々から好かれている、日本語を学びたい人は増えている、と書かれていて、とても嬉しいけど、コロナで留学生が入国できなかったり、難民として入国した人たちへの仕打ちが世界的に報道されたりして、日本の人の裏表の裏の部分が外の人たちにも知られるようになってきた、とも感じてる。外国にいる分には、自分自身が日本代表として恥じない行いに努めていれば保てるものが、国内で起こっていることで壊れることもある。なんの後ろ盾も経歴もない私は、日本は好かれてるから大丈夫!と慢心しないでひとつひとつ積み重ねていかなきゃな、と思います。

ところで、日本の姓は居住地(田中とか川上とか)が多く、英米の姓は職業(ミラーとかテイラーとか)が多いと書かれていたのが、会社に関する日本人と英米人の感覚にも当てはまると気づきました。日本人は会社名、自分のいる場所を中心に考えがちで、英米人は自分がそこで何をしているか、職種を中心に考えてその技能をもって転職する感覚を持ってる。

3日前に読んだ「14歳からの個人主義」では夏目漱石がイギリスで学んだ個人主義を日本の中学生に伝えようとしていて、そっちも説得力があった。日本の「私たち」の同調圧力はすごく強くて、それに押しつぶされている若い子も大人もたくさんいるから…。良い言語と悪い言語があるわけじゃなくて、それぞれの特性があるし、それぞれの文化がある。どちらかに寄りすぎてうまくいかないと思ったら、反対側へ向かうのがよい、ということだと思いました。

良い本を選んでくださってありがとうございました、岩田社長!