2010-01-01から1年間の記事一覧

佐藤正午「豚を盗む」235

うん。楽しく軽く読めた。 エッセイを読むと、人となりがわかりますね。この人根がまじめだけど、一日中家の中の同じ机について1平方メートル内で暮らしてるかんじの、アソビの少ない人なんじゃないかなと、改めて感じます。 この3冊目のエッセイ集(短編小…

佐藤正午「幼なじみ」234

岩波書店の「Coffee Books」というシリーズの1冊として出版された、わずか68ページで挿絵のたくさん入った、大人の絵本って感じの書き下ろしです。 幼なじみの女性のニュースを見たことをきっかけに、時間をさかのぼって彼女との思い出を徐々にたどっていく…

金津佳子/宮永博史「全員が一流をめざす経営」233

川越胃腸病院の経営について1冊みっちり書かれた本。 綿密な取材や大学院のゼミでの研鑽のおかげで、この病院の強みの本質にかなり近づけたのではないかと思います。その真摯な姿勢と努力に敬意を表します。 ただ、この本にこれほどのページ数は本当に必要だ…

山田正紀「渋谷一夜物語」232

なんとなく図書館に寄って、タイトル借りしました。 ちょっと後悔。 わりと面白かったけど、血が出たり内臓が引きちぎれたり、いちいち露悪的な表現が多いのがちょっと・・・。ただし、どす暗いんじゃなくて、好きな女の子を驚かせようとしてつい表現がエス…

林芙美子「浮雲」231

戦時中に仏印(いまのベトナムあたり)に農林省の官吏として駐在していた男 富岡と、タイピストとして赴任した女 ゆき子の、主に敗戦後日本に戻って来てからの凋落を描いた小説です。仏印での生活は、鮮やかな出会いを少々つづっただけで、あとはたまに思い…

林芙美子「放浪記」230

旅行には旅行記を持っていくことにしてます。今回はこの本。昭和44年発行の、河出書房新社版「日本文学全集」の第31巻です。親が買って期待したのに誰も読まないまま放置されていたもので、40年たった今でも手を切るほど新しい。そんなものを海外まで持って…

マイク・ミュレイン「ライディング・ロケット」上・下229

久々の大ヒット。 上下で合計650ページもあるのに、面白くてどんどん読んでしまいました。翻訳もきわめて自然で、自分の友達のことのように親しみをもって読めます。 何の本かというと、スペースシャトルに3回乗って引退した宇宙飛行士が、その引退までの自…

「齋藤孝のざっくり!日本史」228

日本史が苦手だった人や、日本史は暗記科目だと思っている人に向けて、歴史のなかで現代人が特に見直したい重要ポイントを数点選んで、じっくり解説する本です。 そのポイントとは。 ・「廃藩置県」と明治維新 ・「万葉仮名」と日本語 ・「大化の改新」と藤…

アンジェラ・カーター「ブラック・ヴィーナス」227

1991年のロンドンの書店の店頭は、この人の最新作「Wise Children」の素敵なポスターで埋まってました。”ジャケ買い”してから表現が豊かすぎて読み進むのに苦労したけど、geriatric charlestonなんて風に医学用語が面白い使われ方をしてたりして、最後まで夢…

藤田紘一郎「パラサイト式血液型診断」226

血液型でみる性格判断とか運勢って、いい加減で信用できない!と思う一方、「アメリカの先住民のほとんどがO型」なんていう統計上の事実があるところをみると、科学的に分析しうる分野なのかも?とずっと思ってました。 著者は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫…

ジョージ・ソウンダース「パストラリア」225

だいぶ前に書評で読んでから、いつか図書館で借りて読もうと思ってました。やっと行けたので借りてきた。 感想: 入り込むのに時間がかかった。文体は伝統的なアメリカ文学スタイルなので、これから読まされるのがポーみたいにペシミスティックなのか、Good …

石井裕之「ダメな自分を救う本」224

人からもらって、帰りの電車で読んだ。 セラピストの著者が、目の前の誰かに向かって話しかけるようなトーンで、自分や自分がセラピーをした相手がどのように自分を好きになり、大きな心を持てるようになったか、語る本です。 著者の思いやりが伝わってくる…

鹿毛丈司「最新音楽著作権ビジネス」223

一口に著作権と言っても、モノが違えば法律も違う。 テキストデータやコンピュータープログラムなんて、単純なほうだったのです。 原盤権って何よ?なんで著作者以外のレコード会社や放送局が、著作権法で特別に定められた権利を持ってるのよ?もうその辺、…

村上憲郎「村上式シンプル英語勉強法」222

いま、社会人の英語学習法に興味を持ってるので、参考に買ってみました。 思い返せば私自身、小さいころは自転車にも乗れないし雷が怖いし、泣き虫で人見知りで大変な臆病者でした。大きくなってからも飛行機苦手で外人大嫌い、仕事で外国行くなんて冗談じゃ…

桂歌丸「極上 歌丸ばなし」221

この本は渋いよ。新宿末広亭で入手したサイン入り本を人にいただいたものです。発行元は「うなぎ書房」(笑)。私は特別な落語ファンでもないし、ちゃんとした噺を聞いた経験は数えるほどしかないけど、歌丸さんは私の一番好きな落語家です。(その前は桂枝雀…

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」220

「トップランナー」にこの著者が出てるのを見て、こういう人が書くのはどんな小説なんだろうと思って読んでみました。 感想: なるほど。辻褄が合っている。と思う。人間の心の弱さ、いまの世の中の生きにくさ・・・人間の身勝手さ、流されやすさ・・・。切…

林信行「iPadショック」219

iPadの発売に合わせて書かれた本、つまり、日本で発売される前に書かれた本なので、”日本でどのように使われているか”は書いてありません。また、感動とかすごいとか未来とか、割り引いて読むべき表現も多いです。でも知らなかった情報がたくさん得られたの…

湊かなえ「告白」218

ああ、読後感最悪。 なんだか悪意だけが人を支配してしまうパラレルワールドみたいでした。文庫版は巻末に映画化した際の監督のインタビューが載ってて「それだからこそ人は愛しい」のようなことを言ってるんだけど、そういう読後感がふつうに得られる作品だ…

押井守「凡人として生きるということ」217

1週間くらい前に読み終わってたんだけど、こっちも感想を書いておこう。 いま、映像ってものを理解したくて、有名なアニメ・映画監督の押井守の映像作品を集中的に見たり本を読んだりしています。これは、彼が持論をぶった一冊。今回手配したビデオや絵コン…

神谷美恵子「生きがいについて」216

この本のことを知ってからもう四半世紀。母校の精神的な芯となって、先生方によって実践され、推薦され、受け継がれてきた神谷先生の著書のひとつです。 その間「生きがいについて」わたしもずいぶん思い悩んだり考察したりしてきたのに、なぜ一度もこの本を…

志水辰夫「情事」215

同じ作家の本がもう1冊あったので、読んでみました。こっちも、なかなかよく書けていました。(←何様目線?) 中年男性の気持ちや、周囲の人たちのようすをとても丁寧に書いてあるので、無理がない。ああ、そうなんだろうなぁ、という気持ちで読み進められま…

志水辰夫「行きずりの街」214

「余暇に軽く読めるミステリー」のつもりで読んだら面白かった。よく書けている。 とはいっても、うだつのあがらない中年男+超いい女との純愛+唐突に巻き込まれた凶悪事件+唐突なのにふつうの人なのに大活躍、という定石を踏んでいるのは事実。 土曜ワイ…

桐野夏生「残虐記」213

週末、気分転換に軽いミステリーでも・・・って読むもんじゃないですね、この人の本は。 タイトルからしてキッツイけど、実際のところ、「柔らかい頬」より「グロテスク」より、私の読後感はまだ軽かったのですが。 25歳の工員が10歳の少女を誘拐、監禁して…

「ビデオ技術マニュアル」212

ビデオαという雑誌を読んでみたら、わりあいわかりやすかったので、同じ「写真工業出版社」が出しているビデオ撮影入門用のこの本を買ってみました。 ビデオ技術マニュアルというタイトルを見ると、ビデオカメラを買ってきた人が上手に運動会を撮影するのに…

板屋緑+篠原規行 監修「映像表現のプロセス」211

たぶん大学の教科書として書かれた本だと思います(ふつうにAmazon等でも買えます)。 武蔵野美術大学の映像学科の学生が、卒業制作等で作った映像作品について、作者自身のことばでメイキングの経緯を記述してあるのが本の前半。後半は動画の歴史と基本を先…

村松秀「論文捏造」210

NHKのBSドキュメンタリーとして2004年~2005年に放送された「史上空前の論文捏造」という番組のディレクターが、番組を本にしたもの。元がターゲットの広いTVというメディアだからか、中学生くらいでも理解できそうな、平易な言葉でわかりやすく書かれていま…

佐藤正午「身の上話」209

へー。面白かった。やな話だけどね。(←読直後感) ミステリーとしての評価がかなり高いらしい。 著者の定番になったかんじの「ある日突然、さして理由もなくふっと失踪する」ストーリーの最新版なのですが、出かけちゃう理由の自然さがアップしてます。 地方…

福井健策「著作権の世紀」208

新書で200ページ強。カバンに入れておいて、移動時間や待ち時間にとぎれとぎれに読んでもOK。専門用語をほとんど使わず、きわめて平易な文章で、法律論をさけて今世界で起こっているさまざまな事象を紹介し、それらの置かれた状況を解説した本です。 著者は…

クリス・アンダーソン「フリー<無料>からお金を生み出す新戦略」207

必読かな、と思って読みました。 「1つ買うともう1つ無料」から始まるフリーの歴史やムーアの法則の詳細など、この本を買うような人はすでに読んでそうなことをかなり長く書いてあります。飛ばし飛ばし読んだけど、ページ数とか翻訳の手間がちょっともった…

村田喜代子「ドンナ・マサヨの悪魔」206

娘がイタリアに留学して妊娠した。青い目の夫を連れて帰った娘のふくらんでいく腹から、「おれは長い旅をしてきた・・・・」と声がする。自分にしか聞こえないその声は、地球に生命が誕生してから生物がたどってきた進化の歴史、何度も何度も食われて死んだ…