神谷美恵子「生きがいについて」216

この本のことを知ってからもう四半世紀。母校の精神的な芯となって、先生方によって実践され、推薦され、受け継がれてきた神谷先生の著書のひとつです。

その間「生きがいについて」わたしもずいぶん思い悩んだり考察したりしてきたのに、なぜ一度もこの本を読もうとしなかったのか?たぶん若いころは、なにか教科書のような立派なことが書いてあるんじゃないかと思ってました。最近は、読んだら泣くような宗教的な本だろうと思ってました。いま読もうと思い立ったのは多分、転職して気分が変わったからでしょう。

もろもろの先入観はだいたい外れました。深い考察と冷静で客観的な分析がおこなわれている良書です。良書ってのは、まじめな人が本当に力の限り一生懸命書いた本のことだと思います。熱い気持ちを抑えて、宗教色を出しすぎないよう、誰もが読んで役立てられるよう、努力して書かれていることが伝わってきます。だから、単に精神医学書のつもりで読んだ人が鼻白らむこともないだろうし、人生に悩む少年が読んでも感情の波にのまれることもないでしょう。

わたしは2004年の「神谷美恵子コレクション」版で読んだので、執筆当時の著者の日記も巻末についています。これを読むと、いかに熱く興奮しながら執筆していたかがわかって、さらに興味深いです。最初の原稿は本人が言うには冗長で膨大すぎるものだったというので、「父上」や夫からのアドバイスによる修正もかなりあったのかもしれません。

生きがいを見失った人が救いを求めて本を読むんだったら、これじゃなくて聖書とか開いたほうがいいと思う。悩みながら、あるいは「自分はけっこう幸せだなぁ」と思いながら、「で、生きがいっていったい何なんだろう?」と思い始めたときに読むと参考になる本、という印象です。感情的にでなく理性的に迷いが生じてるときに、自分の行く道を決めなおす助けになるかもしれません。

「コレクション」5冊全部読もうと決意。とりあえず駅前の本屋に行ってきます。