中野晴行「マンガ産業論」296冊目

これは面白い。良書です。

MBA的ともいえる分析眼で、マンガという産業を細部にわたって、かつ歴史を振り返って、書きつづった本です。主軸をマンガに置くことで、メディアミックスと呼ばれる、マンガ/アニメ/映画/キャラクター商品等をひっくるめたコンテンツ業界全体のことを非常にしっかりと俯瞰しています。

「つまり、あれほどマンガが売れたのも、売れなくなったのも、同じ根っこから生じている、と思い至ったのだ。(p10)」という著者の言葉が言い当てている、“情報を消費する”消費者の存在。(私もそうかしら、とドキッとする)輸出だのなんだのと騒いでいるけれど、大切に作家や産業を育ててこなかった出版社のあり方。等々、マンガを愛する長い一読者が、マンガのことをもっとよく理解し、何か働きかけができないかとがんばった結果生まれた本という印象です。

日本のマンガの誕生、発展のなかでアニメやゲームにも言及しています。これは、コンテンツ産業で事業開発をやってる人なら一度は読んだ方がいいのでは。

続編的な「マンガ進化論」って本が出てるようなので、そっちを買おうと思います。

(この本は図書館で借りたので)