東田直樹「自閉症のうた」724冊目

この人の本を読むと、いつもパッと目が開かれたような気がする。

私が「理解した」と思っていたことは、「自分や誰かが設定した仮説に納得したつもりになること」でしかなく、東田氏がものごとを語るときは「理性と五感でわかるまで探って出た答」をつづっているように見える。大げさかもしれないけど、私には彼の言葉が賢者の言葉のように感じられる。人に突っ込まれないか、どう批判されるだろう、ってことばかり気にしながら思索をしている健常者より思索が深くなるのは、もしかしたら当然かもしれないけど。

彼の創作「自閉症のうた」と「旅」もよかったなぁ。一人暮らしで電話ひとつする相手もいない自分が、SNSをやめたらアウトプットも交流もゼロになる。健常者としての自由を持て余すほど味わってきた自分が、その状況になったらどうだろう。もちろんその程度の不自由は、もっと大きな檻のようなものにとらわれてきた人とは比較にもならないけど。でも、そうなったときに自分の想像力とか知力とかを保てるか、少しでも深まることはあるのか、と想像してみたい。

こんなにたくさん、ずっと書き続けてたんだな。好きな作家なので他のも読んでみよう。