不思議なことに、表紙にも目次にも作品解説にも、シェフチェンコのファーストネームが出てこなくて、年譜のページにやっと登場する。それくらい、シェフチェンコといえばこの人なんだろうな。ウクライナの偉人として広く尊敬されているらしい、画家で詩人のタラス・シェフチェンコ。19世紀の人です。この人のことを、ウクライナの人から教えてもらって読んでみました。
詩集と言っていいんだろうか?と迷うくらい率直で情熱的で、修飾や比喩が少ない。日記につづった、魂の叫びです。
愛しい女性への思いも、自分の身にふりかかった災難についても、血や汗を感じさせないどこか清潔な表現で嘆き、哀れみ、祈る。不思議な作品集だ。不運や不幸を、美しい言葉をつむぐことへと昇華しつづけた生涯・・・。切ないなぁ。彼が国民的偉人というのは、国民の多くが彼に共感するということだろう。日本人の多くが宮沢賢治を愛する情緒に近いんだろうか。
ウクライナという国は、旧ソ連の中では西ヨーロッパに近く、アメリカに文化的に近いのかなと思っていたけど、GDPの低い農業国で、西ヨーロッパに近いといってもドイツやスイスとは接しておらず、むしろ中央ヨーロッパの一部のようだ。
どんな風にみんな暮らしてるんだろう。いつか、5年後でも10年後でも、訪ねてみよう。