ジョージ・ソウンダース「パストラリア」225

だいぶ前に書評で読んでから、いつか図書館で借りて読もうと思ってました。やっと行けたので借りてきた。

感想:

入り込むのに時間がかかった。文体は伝統的なアメリカ文学スタイルなので、これから読まされるのがポーみたいにペシミスティックなのか、Good old America風なのか、つまり覚悟して読むべきか安心して読んでいいのかがわからなくて。

登場人物はみんな伏字寸前の悪態をついてばっかり。文体は端正なのに登場人物は下町っぽい。それが不自然に感じられないのが不思議。あとがきによると、作者は労働者階級のコミュニティで育ったらしいというので、ちょっと納得。

40過ぎても親と暮らしている風采の上がらない独身の中年で、貧しくて生活に追われていて、人をうらやんだり恨んだり。・・・というのが典型的な主役像。彼らは悪態をつきながら、かわいいけど大きすぎる女の子を好きになったり、そんな自分や彼女にまた悪態をついたりしながら、それでも心のなかに温かいものをちゃんと抱えて生きている。”そんな彼らを見つめる作者の目は、かぎりなく温かい”。・・・あれ、どこかで聞いたようなことば。これは日本の時代小説の帯に書いてあったことばかしら。

登場人物は、逆玉の輿に乗ったり、心を入れ替えて聖人君子になるわけでもなく、仲間に囲まれていままでどおりの暮らしを暮していく。照れながら恋をしたり、失ったやさしい叔母を思ってみんなで泣いたり。。つられてちょっと涙ぐんだりする。舞台がまったくちがうけど、視点が山本一力とかに近い気がする。これが現代アメリカ文学の注目株なんだねぇ。いまの日本の新進気鋭の作家はみんな、おそろしく虚無的で無機質だけどね。(アメリカ文学もそういう時期あったと思うので、日本文学もそのうち流れが変わるのかな。

あまり刺激はなかったけど、よい短編集だし、国と文化を知るのにも良い本でした。