藤田紘一郎「パラサイト式血液型診断」226

血液型でみる性格判断とか運勢って、いい加減で信用できない!と思う一方、「アメリカの先住民のほとんどがO型」なんていう統計上の事実があるところをみると、科学的に分析しうる分野なのかも?とずっと思ってました。

著者は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学を専門とする医学博士。だから話はその分野に限定的なんだけど、その範囲内では実験や経験に基づいた、それなりに確からしい自説が展開します。

そもそも血液型って何?というと、いわゆるABO分類というのは赤血球の表面の糖鎖の種類による分類で、その糖鎖ってのは実は人間以外の動植物にもよく見られるものらしい。そしてその糖鎖は、同様の糖鎖をもって人間の体内に入ってくる細菌や寄生虫によって影響を受けるものらしい。そこから著者は、「人間はもともとすべてO型だった。体内に入り込み、増殖した細菌によって、A型、B型、AB型ができた」と仮説をたてます。その立証までは行っていない、というか、過去のことなんで証明しようがないのかもしれません。

で、血液型によって性格にちがいがあるかどうかを検証する前に、血液型による感染症のかかりやすさを検証した記録をみると、これは有意な差が実際にあるらしいです。たとえばA型はさまざまな感染症にかかりやすいが、ペストとコレラはO型がかかりやすい。そのため大流行があった国々ではO型の比率が減っている、といいます。

そこまではいい。しかし、「A型は感染症に対する恐怖から、用心深い性格になった」というのはちょっと飛躍があります。感染症以外の病気の罹患率等々、MECEなかんじのデータがもっとあったら面白いんだけどなぁ。そこまでこの著者に求めるのは無理だと思うので、学際的な研究を誰かやってくれるよう望みます。

ところでB型ってインドで一番多くて40%もいるらしいです。日本や韓国は多いほうだけど、南北アメリカとオーストラリアではかなり少ないらしい。著者は血液型と民族移動の相関性を立証しようとして、しきれなかったそうです。それは人口比率は後天的に(前述の感染症とかで)変わるから、という事情もあるんでしょうね。

あまりその後進んでないようでもありますが、血液型の科学的な分析は、今後もWatchしようと思います。以上。