クリス・アンダーソン「フリー<無料>からお金を生み出す新戦略」207

必読かな、と思って読みました。

「1つ買うともう1つ無料」から始まるフリーの歴史やムーアの法則の詳細など、この本を買うような人はすでに読んでそうなことをかなり長く書いてあります。飛ばし飛ばし読んだけど、ページ数とか翻訳の手間がちょっともったいない気がします。

ネットに詳しい人や、経済雑誌のこの本の特集を読んだ人なら、みっちり全部読まなくていいかも・・・。フリーにもいろいろな形態があって、特にこの著者が注目しているのは5%や10%の人だけがお金を払い、残りの人は完全フリーというモデル。アトム(有体物)の世界では、複製物をたくさん作れば作るほどお金がかかるけど、ビット(デジタルデータ)は複製しても無料でしかも劣化しないから、このモデルが成り立つ。みんなこのモデルへ行けー!って感じです。

でもどうしても気になることが2つあります。

1.ネットの世界も無料じゃない。

ユーザーがプロバイダーに接続料をちゃんと払ってるよ、っていう話(著者がこの本の中でバカにしてる)じゃなくて、コンテンツ提供者側のコストも大変なもんだよ、という話。猫も杓子もアイデアだけで無料会員+有料会員のネットサービスに参入するけど、いくら安くなったって言っても、サーバーは無料じゃないし帯域幅は有限。本当にペイするほどの人気サイトはみんな、回線そのものやそのメンテにかなりの支払いを行っているはず。

2.そこそこ気の利いたネットサービスを始めても、無料95%+有料5%でやっていけるほどの人気サービスプロバイダーになれるのはGoogleとかSkypeのレベルの勝者だけなんじゃないか?

たとえ無料でも、いきなりユーザーを100万人も集めることは普通できない。10万人も1万人も難しい。1冊の本を無償ダウンロードで提供して当たっても、講演会で食べていけるのはよくて数年でしょう。

ふつうの人は、大儲けできなくても、コツコツと何か作って相応の利益を得つづけるほうを選ぶんだよね。

そういうフリービジネスもあるね、というのを記憶に刻みつけるのにはいいかもしれないけど、「で、自分はどうする?」ってことまで考えられないと、振り回されて終わっちゃうよ。と思った。