田中正道「ボイス-ソーシャルの力で会社を変える」269冊目
ボイス=voice、声ですが、この本ではユーザーボイスつまり「お客様の意見」のこと。
キヤノン、ソニー、マイクロソフトを経て独立した著者が現在手掛けているのは、企業が顧客から寄せられた意見を最大限に自社ビジネスに生かすためのコンサルティングだそうです。そしてこの本は、そのコンサルティングビジネスを立ち上げるに至った背景、目的、ターゲット企業にとってのユーザーボイスの重要性、ゴールなどをまとめたもの。ターゲット企業に対して、自社サービスの詳細以外に伝えたいことを1冊にしたという感じでしょうか。タイトルだけ見てクリス・アンダーソン「フリー」みたいに、1つのキーワードのアイデアについてつきつめた本かと思ったら、ちょっと違っていて、ソーシャルメディアやコミュニティを介したユーザーボイスの収集・分析(これが中心)+企業どうしの協創によるイノベーションなどを、ビジネス本を読み慣れない人にもわかるように解説しています。
ユーザーボイスを企業が本当に生かすのは、きわめて難しいんだろうなと思います。たとえば「こうしてほしい」という意見を集めて、多い順に実現しても、ユーザーは欲しいと言ったものを全部買うわけでもないのでまず成功しない。…ということは経営の勉強をする人にはもはや常識です。企業や研究者は、ペルソナを作ってみたり、密着調査をしてみたり、ユーザーが「買ってくれるもの」を求めていろいろな手法を編み出してきました。著者が着目したのは、雑多なユーザーボイスの生かし方なのですが、その中でも特に重要視しているのは、ボイスをツールで解析し、その結果を人間が分析し、各部署が協力して生かしていくための「システム作り」です。ソフトウェアにできることは最大限にさせておくけれど、結果の分析には熟練が必要であることを認め、その上で外部の専門家だけに任せずに組織が一団となって努力することが何より重要だといいます。
会社全体で成果を最大限にするための仕組みづくりって、簡単じゃないです。お客様の声を生かすと決めても、全員で片っ端から意見を全部読んで会議をするというような方向にいきがちじゃないでしょうか。コンサルティング費用がゼロでも、休日出勤のコストがかかったり、結局成果を出せなかったりしているかもしれない。データってのは取り方、分析の仕方、読み方によって価値がまったく違ってくる…ということは私も前の会社で学びました。スキルを身につけていくものなんですよね。だから最初だけは外部の知恵を借りるのが有効なこともあるのでしょう。
あらゆる業界に同じ手法が有効なわけではないと思うけど…うーん…またデータ分析やってみたいなぁ(←意外と好きだったらしい)
今日はそんなところで。。。